2025年01月29日

追悼! 森卓さん

 経済アナリスト森卓さんこと森永卓郎さんの訃報が流れている。67歳だった。
 謹んでご冥福を祈ってはいても、残念でならない。また一人、市民の味方が退場してしまった。

 森永さんは、2023年末にがんが判明。その後、闘病生活を続けるなかでも、経済アナリストとして発信を行っていた。精力的にラジオにも出演し、亡くなる前日の27日に放送された『大竹まこと ゴールデンラジオ!』にも出演していた。
 森永さんは、2023年12月「11月に人間ドックを受け、すい臓がんのステージ4だ」と公表していたが、その原発不明だと伝えられている。


 経済アナリストとか経済評論家とされている人たちの立場を積極財政派、消極財政派というように分ける見方がある。
 政府の財政の支出を決めているのは昔大蔵省、今は財務省である。
 財務省の役人は市民から税金を搾り取ることは考えても、一握りの富裕層への課税を強化することは全く考えていない。
 何かと言えば、財政健全化だと言いながら、市民から税金を搾り取ることばかり考えている。
 ついでに言えば、国のお役人は税金で米国に留学し、国のことなどより、自分たちの天下り先のことばかり考えている。
 
 市民の敵のような立場の財務省のことをわれらの森卓さんは、「ザイム真理教」と名付けて批判を繰り返してきた正義の味方ならぬ市民の味方だった。

 政治の世界に目を転じれば、れいわ新選組の山本太郎代表が積極財政派として知られているが、同じ野党でも立憲民主などは財務省に洗脳され、民主党時代有権者を騙し、消費税率をアップしたし、現在もその残党というかそのメンバーが党を動かしている。

 市民が物価高にあえいでいるなら、市民にカネを配るという積極財政の考え方を自分は支持する。
 ついでに言うなら、ガソリンが高いということで、元売りに補助金を出すのではなく、消費者にカネを配るというのが景気対策の第一歩である。
 元売りに補助金を渡し、税金の還流を目論むことを許してはならない。

 次いで、森卓さんの実績として、高く評価できるのが日航機123便墜落事故が自衛隊によってなされたことを明らかにしたことである。
 この件については、元日航の客室乗務員だった青山透子さんが書籍を出版していたが、失礼ながら、森卓さんとでは知名度が違うので、青山さんのなされことは立派であるが、影響力が違う。

 卓さんはNHKラジオにも出演されていたし、TVにも出られていたが、不都合な真実を喋るとオールドメディアといわれて久しいTVや新聞などでは敬遠されてしまうことを明言されていた。

 メディアの役割として真実の追求ということが挙げられるが、著名なプロダクションの創始者の性加害を報じなかったオールドメディアが、英国のBBCによって放送せざるを得なかったように、フジテレビの女子アナがタレントへの性接待をさせられたこともまた、フジテレビの海外の株主の力で報道せざるを得なかったように真実を報道しようとしない姿勢は厳しく糾弾されるべきである。

 日航機墜落事故の真実を知ったのは、YOUTUBEにアップされた森卓さんの話である。
 YOUTUBEの話をすぐに真に受けたりしないが、信用、信頼している森卓さんならではのことだから、当然信じている。

 最後に、森卓さんは所沢にお住まいで、元気だった頃から、有機無農薬での野菜作りをしていると耳にしたことがある。
 この点も自分と同じだから高く評価する。

 惜しい人が退場してしまった。

2025年01月25日

少子化なのに 生まれた赤ちゃんが捨てられる

 NHK首都圏情報ネタどり1月24日放送、「相次ぐ赤ちゃん遺棄事件 どうしたら命を守れるか」を視聴し思うことがあるので書いておく。
 
 「生まれたばかりの赤ちゃんが遺棄される事件が後を絶たない。最新の統計ではおととし9人、この20年で185人の赤ちゃんが生後0日で亡くなった。背景に何があるのか。事件に関与した母親へのインタビュー、首都圏で起きた事件の裁判記録、女性支援団体の実情を取材。出産する女性の社会からの孤立、男性パートナーの無関心など課題が見えてきた。小さな命を守るために社会に何が必要なのか考える。」と㏋にある。

 予期せぬ妊娠 相談窓口
▼特定非営利活動法人BONDプロジェクト
▼公益社団法人小さないのちのドア
▼全国のにんしんSOS相談窓口


 1981年から1984年にかけて、NHKドラマ人間模様『夢千代日記』を視聴して激しく心を揺さぶられ、早坂暁の脚本が書籍化されていたので買い求めてしまった。
 ついでに書くなら、影響されて、青山のシナリオ学校に通い、自分にも脚本が書けるかもしれないと思ったのは浅はかだったことにすぐに気づいた。続かなかったのである。
 山陰地方の温泉町で置屋の女将かつ芸妓で、胎内被爆者でもある夢千代の日記に綴られた物語だった。
 ヒロインは吉永小百合で、親切な医者をケーシー高峰が演じていたが、この医者が赤ちゃんのあっせんをしていた。
 前置きが長くなってしまった。
 1970年代に菊田昇産婦人科医師が赤ちゃんあっせん事件を起こした。「実子特例法」を提唱、現在の特別養子縁組制度の制定に大きな影響を与えた。
 産婦人科医として中絶手術をする中で、たとえ望まない妊娠や経済的に困難な状況を抱えた中絶であったとしても赤ちゃんにも生きる権利があるのではないかと考え、赤ちゃんあっせんという当時は違法なことだったが、救われた命にとっては救世主ともいうべき立派な人物だった。

 菊田昇医師のことはすでに書いているし、熊本の慈恵病院の赤ちゃんポストのことも何回となく書いているのは、語り継ぐ戦争、戦没者慰霊のための行脚で訪れた福岡二日市の母子地蔵のことを知っているからだ。
 1945年8月9日未明、満州(現中国東北部)に侵攻してきたソ連軍は逃げ惑う満蒙開拓団などの女性に激しく襲いかかり性的暴行を繰り返した。
 ために、妊娠したり、性感染症の梅毒に罹患した女性が博多や佐世保に引き揚げてきたとき、妊娠中絶手術が行われた。その跡地の祠に母子地蔵が祀られているのだ。
 この事実を知った自分は、赤ちゃんあっせんのための養子縁組や赤ちゃんポストのことを発信するようになったというわけである。

 自分とおつき合いがあった女性。亭主がありながら、たった一度の見知らぬ男との関係で妊娠してしまい、亭主から捨てられるも、シングルで子育てしている女性のことを以前書いたときにも、赤ちゃんが育てられなければ社会が育てればいいだけのことだ発信したことがあった。

 少子化ということよりも、せっかく授かったいのちを親の都合で奪っていいわけがない。
 番組では、赤ちゃんポストが遠くて交通費がなかった。親に虐待されて育った家庭環境から親に知られたくなったというような理由で罰当たりにも赤ちゃんを遺棄している。
 「ごめんね」じゃないだろう。
 なぜ、赤ちゃんを助けようとしなかったのだ。
 子どもは親なんかいなくとも育つ。
 子どもを殺してはならん。
 死んだ子どもの年を数えるというではないか。
 後悔するに決まっている。

 妊娠させ逃げる男は卑怯者で、こんな男のことは忘れて、生活保護を受けてでも育てるか、施設に預けるかすればいい。
 各地の寺を周っていると水子地蔵をよくみかける。
 中絶もやった人は後悔しているかもしれないが、生まれてきた命を殺めたら、幸せな人生なんか望めない。

2025年01月23日

「ジンゴイズム」の米国にどう抗するか

 1月9日、ワシントンの大聖堂で行われたカーター元大統領の国葬。厳かな式の後半、ギターが静かに奏で始めたのがジョン・レノンとオノ・ヨーコの「イマジン」だった。
 「人権外交」に力を入れたカーター氏は、この曲を愛していたという。2007年のインタビューではこう語った。
 「歌詞をよく聞けば、宗教、国境、ナショナリズム、ジンゴイズムに反対していることがわかる。人々に与える影響は深大だ」と警鐘をならしていたジンゴイズムをテーマに1月19日の読売(飯塚恵子編集委員)が「広角 多角」というタイトルでジンゴイズムの権化ともいうべきトランプ次期大統領への懸念について伝えている。

 飯塚さんが調べたところによれば、ジンゴイズムとは、極端な排外主義、特に、好戦的な対外政策を特徴とするナショナリズム」とある。自国の安全保障や経済利益を最優先し、他国との対立を正当化し、高圧的な態度を取るのが特徴だという。
 誰のことかすぐにわかるだろう。まさに、トランプ次期米国大統領の政治姿勢に重なるのではないか。

 民主主義を実現するには、夢見て努力していかなければ社会は自己中心的な欲に支配されてしまう。
 夢想をやめてはいけない。でなければ、米国は偉大な国から遠のき、世界も衰退する。
 以上が概要である。


 いつの頃からか、気がついたら世界中で貧富の格差が拡大し、その筆頭国である米国ではもはや革命が起きなければ是正不可能なくらい格差が拡大してしまった。
 米国ではバイデン民主党政権が貧富の格差を縮小しようと努力して道半ばに終わったが、飽き足りない貧しき人々は変革を求めてトランプ大統領を支持したとされている。
 しかし、米国の貧富の格差を少しでも是正できるのは正確に言うなら、かつて、民主党の大統領候補だったバーニー・サンダースさんで、仮に彼が大統領に選ばれていれば、もっと、貧富の格差は縮小したはずである。
 トランプ大統領に貧富の格差を是正するようなことをするつもりがないことは明白である。

 トランプ大統領はジンゴイズムをまとった功利主義者で、地球温暖化を防止するため、二酸化炭素(CO₂)の排出を抑制することに懐疑的で、化石燃料をどんどん使えなどと言っている。
 地球温暖化を防止するためなら、快適さを少しばかり我慢するというようなことに反対なのだ。

 日米安保で米国の保護領みたいな立場の日本も米国の影響を受け、貧富の格差が大きな社会問題となっている。
 貧富の格差は財界のため、富裕層のための政治をやってきた自民党政権が公明、維新、国民などの補完勢力の協力がなければ、何も決められなくなっていくことを予測させる。
 つまり、日本でも選挙に行かなかった有権者で、政治に不満を抱く人たちが、自分たちの味方であるれいわ新選組のような政党を応援して伸ばしていけば、日本の政治も変わることを意味する。

 ジンゴイズムに抗することと貧富の格差の是正こそが政治のキーワードとなっていくのではないか。
 「今だけ、金だけ、自分だけ」というのはあまりにも有名だが、ジンゴイズムというのは市場原理に委ねるという一見耳障りの良い言葉で貧富の格差を拡大してきた新自由主義に通じる。

 「人間一人では生きていかれない」。米国だけよければいいという考えではたくさんの人が幸せになることはできない。

2025年01月02日

正月に家族について考える

 正月二日は若い頃から箱根駅伝の追っかけ応援をしていたが、コロナ禍と加齢で行かれなくなってしまった。
 何しろ50回大会から2019年の95回大会まで45年続いていたのだから、よく続いたものである。

 さて、NHKドキュメント72時間の2024年放送のセレクトからベストテンの3位以下から、昨日、「命」について書いたので、書いていなかったベストテン1位について書いておきたい。
 
 順位などどうでもいいことだが、視聴者としての自分の心を激しく揺さぶられたことは確かである。
 4号国道は福島の二本松にある眠らないドライブインを舞台に、ここに集う人々の人生模様が伝えられた。

 駅伝大好きだった自分が子どもの頃から応援してきた青森、東京間、通称青東駅伝のコースだったのが4号国道である。

 「顔を写さないで」という訳ありの女性が二人。
 若い頃、子どもと二人で食べに来た時、カネがなくて一人分だけしか注文できず、店の女将の気配りで二人分の器を用意してくれたこと。ごはんはお替り自由だったことに救われた。今は娘と来て、二人分の注文ができるようになったので、これからもあのときの感謝の気持ちを忘れずに店に通いたいという。

 もう一人、猫の写真をスマホで見せてくれた青年。
 ペットショップの店員をしているが、将来、自分の店を持つ夢があるのだという。
 小学校1年の時、「大きくなったら会おうね」と別れた母親とまだ一度も会えない。「経営者になって、少しでも名が知られるようになれば、母親と会えるかもしれない」というのだ。

 連れ合いと子ども3人で来ていた男性は父親がトラック運転手で、子どもの頃、店に連れてきてもらったことを懐かしみ、自身もトラック運転手になり、親になって子どもを連れて店を訪れたとのこと。
 父親がトラックの運転席で亡くなったことも明かし、家族のために頑張ってくれた父親への感謝の気持ちを抱いていることが伝わってきた。


 ドライブインに集う人々の人生を垣間見るような72時間。
 印象に残ったのは、シングルで娘を育てた女性の窮状と店の女将の気配り。女性の女将に対する感謝の気持ち。
 小学校1年生で母親に捨てられた息子が、社会人になって母親に会いたいとペットの猫に癒されながらも、ペットショップの店員から経営者になる夢を語る光景。

 トラックドライバーだった父親が連れてきてくれた店に、家族を連れてきたトラックドライバー。運転席で亡くなったという父親に育ててくれた感謝の気持ちを語りながらも、自身も家族のために懸命に頑張る姿をみせてくれる。

 共通にあるのは「家族」ということになる。
 シングルで娘を育てる女性、店では一人分しか注文することができず、取り皿が欲しい時、女将が察してくれて何も言わずに渡してくれるのだ。店ではごはんのお替りが自由というサービスもしてくれていた。
 娘を育て、今は二人でやってきて、二人分注文できるようになったが、あの時の女将の思いやりを忘れずに感謝している姿に顔出しはできなくともエールをおくりたくなった。

 小学校1年生で母親に捨てられた青年が、ただ母親に会いたいと、少しでも自分の名前が世間に知られるようになれば、母親に会えるかもしれないと店員から経営者になりたいという夢が実現するように応援したくなるではないか。

 トラックドライバーが店に家族でやってきて、トラックドライバーとして家族のために頑張ってくれた父親が運転席で亡くなったことを明かすのだ。
 家族のために頑張ってくれた父親をお手本に自分も家族のために頑張っている姿を伝えてくれた。

 ドライブインは80代の母親と二人の娘という家族で営んでいた。
 建物も古くなったので、閉業も考えなくはないけれどという母親。

 2025年は昭和100年、語り継ぐ戦争ではあれから80年ということになる。
 昭和は遠くなり、家族の形もどんどん変わっていく。

 それでも、人の気持ちはそれほど変わるものではない。
 箱根駅伝をラジオで聴きながら、家族について考えをめぐらした。

2025年01月01日

年の初めに「命」を考える

 加齢による急激な心身の衰えでピンチだった2024年が行き、明けて2025年を迎えることができた。
 正月元旦に生きていることを実感するなんて、記憶にないが、有り難いことだとご先祖に感謝している。

 年の瀬にNHKの「ドキュメント72時間」のセレクト2024年放送のベストテンというのか、印象に残っている作品が放送されたのでベスト3まで視聴した。

 順位などどうでもいいことだが、別府温泉で貸間を湯治場よろしく長逗留する99歳の男性がいた。
 一方で、連れ合いがガンで顔色が土気色というご夫婦がこの貸間にやってくる。
 放送後、連れ合いが亡くなったと知らせる夫からの手紙を読む女性タレントが涙を流す。すると自身原発不明ガンで闘病中だと言う山田五郎も身につまされたかして涙ぐむ。
 件の99歳の男性はめでたく100歳を迎えたという。
 明らかに若い方が先に逝き、めでたく長寿の人は100歳を数えることができたのだ。

 さらに、中国のガン病棟のある病院には、家族が患者のために調理するキッチンがあり、そこでも、ドラマが患者の数だけあった。
 連れ合いをガンで亡くした男性が生きる支えを失った様子は気の毒で掛ける言葉もみつからない。

 鳥取にある墓地で盂蘭盆会に松明をかざして、死者を迎える家族の様子で死者のことを忘れてはいけないということをドキュメントしてくれたのも忘れ難い光景だった。

 2024年は正月元旦早々、能登半島を襲った地震で多くの大事な命が奪われた。
 世界に目を転じれば、ウクライナに侵略したロシアが北朝鮮の援軍を得て、攻勢に転じ、ウクライナの苦戦とさらなる犠牲者増が伝えられている。
 中東のパレスチナでは、イスラエルがハマスへの攻撃を続け、ガザ地区の犠牲者は増えるばかりだ。

 正月を無事に迎えたはずでも、10代に富士五湖の本栖湖にキャンプに行った仲間が2024年の夏に亡くなった。
 一緒だったもう一人は、3月から人工透析を始めたという。

 それでも、2025年が明けて、この1年家族や近しい人たちだけでなく、大事な命が災害、戦争や犯罪、事故、そして、病気などで失われることが少なくなるように願っている。

2024年12月30日

年の瀬に行く年を振り返る 痛み

 「自由のために」発信し続けてきた2024年も晦日になってしまった。
 この時期は行く年の来し方を思うのが恒例となっていて、来る年への希望というか展望も併せて考えたりする。
 行く年を漢字で表すなら、「痛み」ということに尽きる。
 後期高齢者になる前から、歯と歯茎がダメになり、目は白内障、耳鳴りに難聴、人物などの名前がすぐに出てこないという症状が始まり、後期高齢者になったら、歯茎の痛みがひどくなってしまったが、行きつけの歯医者には歯茎は治せないと言われ、これも行きつけの内科医から痛み止めやら抗生剤やらを処方してもらって服用していた。
 8月頃、痛みが酷くなり行きつけの内科医に公立病院の口腔外科を紹介してもらったが、抜歯するという診たてで取り付く島がなかった。
 抜歯は嫌だから、キャンセルしてしまったら、偶々、歯が取れて痛みも気にならなくなったが、師走になる前ころから、別の個所が痛み、ネットで検索して、ようやく、歯茎を治療してくれるという歯医者を見つけることができ、12月25日に治療してもらい、1か所は痛みが治まったが、もう1か所は痛みが来る年に持ち越され、正月明け、5日の予約日に診てもらえるまで安静状態を保つようにしている。

 痛みが酷かった時は、精神的なダメージは相当なもので、鬱状態で、雨が降ったときなど、自死が頭を過るほどのピンチだった。
 当然、夜もよく眠れないし、痛みというのは怖ろしいものだと改めて自覚させられた。

 痛みといえば、2024年は正月元旦から能登半島を襲った地震、9月の豪雨と死が直結する痛みが住民を襲った。道路が壊れ、ライフラインの復旧も遅れている。
 世界に目を転じれば、北朝鮮の独裁者金一族の助っ人を得たロシアのウクライナへの攻撃が続き、ウクライナの苦戦が告げられている。
 中東ではイスラエルがパレスチナでハマスへの攻撃を止めず、犠牲者が増えるばかりである。

 死を悼むと言えば、語り継ぐ戦争でお世話になった大阪のガイド師の墓参りというか供養で、コロナ禍になって初めて、新幹線で大阪に行った。
 さらに、人生で一番と言っても過言ではない恩人の墓参りに昨日、出かけてきた。
 お世話になってから52年。結婚式にも多忙の中、顔を出していただいたので、その時からでも、もう40年近く経ってしまった。
 遅くなってしまったお詫びと改めて感謝の気持ちを込めて般若心経を唱えた。
 いつもなら、「手向」を供養のために吹くのだが、「寺で法事があるから音を出すのはご遠慮ください」とのことだったので、経を唱えた。
 この日は連れ合いの姉も一緒で、両親や甥の墓所も訪れたので2か所の寺お参りしてきたことになる。
 
 年の瀬になると、行く年の心残り、人生の心残りが気になったりするものだが、長年、不義理をしていたようで心苦しかった恩人の墓参りができて、心残りが一つ解消した。

 2024年痛みに苦しんだ人、その痛みを自分は来る年まで持ち越し、解消できなかったが、来る年には、今、痛みを抱えている人たちの痛み、苦しみが少しでも解消するようと祈りたい。

2024年12月25日

分断生む 極端な好き嫌い

 社会の様々な事象から有識者がその見識を披露してくれる読売の優れた連載「あすへの考」、その12月22日は「民主主義と世論」をテーマに関西学院大学善教将大教授(42)が世間を賑わす社会の分断現象について、「他者への理解が必要だ」と訴えていて、大いに参考になったので書いておく。

 世論調査がメディアでよく実施されている。
 例えば、「支持政党は」というように。ところが、読売が2022年に行った全国世論調査で「絶対に支持したくない政党」を尋ねた結果、NHK党(当時)の52%、次いで共産党35%という順で、一番低かったのが国民民主党だった。

 否定的党派性が大きな意味を持つようになったきっかけは、1990年代の米国政治の変化で、支持するという感情に他党が嫌いという感情が混ざることで、感情的な分極化と呼ばれる現象が起きる。

 国際的にみて、分断化の度合いが弱い日本でも、2024年11月の兵庫県知事選では集団極性化現象が起きた。
 異なる「集団」を嫌悪している実態が二人の争いの構図の中で鮮明に見てとれた。

 異なる考えの政党が連携することで、互いの支持層への拒否感和らぐ可能性がある。


 日本人の意識が変わったことを実感させられるのは、家庭には神棚と仏壇が同居しているのが当たり前のことだったのが、核家族になるや、両方ともない家が増えているときだ。
 神仏が同居するくらい、神棚の主は、神仏習合というか、神仏混淆というのか神様は懐が広かったが、新興宗教は皆排他的である。
 宥恕の精神がなくなりつつあるなと意識するのもこの時のことだ。

 2020年にコロナ禍が始まり、自粛警察などと呼ばれる現象が起きた。
 これも、他者の行動が許せなくなっている人が増えている印象である。

 米国がトランプ大統領になってから、分断という言葉が目立つようになった、
 他人を滅茶苦茶に攻撃するのがこの人の特色である。

 総じて、他者のことを許せない人が増えている印象である。

 さて、支持政党と絶対に支持したくない政党の中で、興味深かったのは、嫌われ政党のトップがNHK党で、次いで日本共産党、その次がれいわ新選組だったこと。
 トップとその次が独善的だから嫌われるだろうとは思ったが、次いで、れいわ新選組の名前が出てくるとは思いもよらないことだった。
 確かに、テーブルの下で手を握っているかのような自民と立憲、さらにその他自民の補完勢力に対し、国会で全く妥協しないから好かれないだろうとは思ったが、こういう存在がいなければ世のなかはよくならないこともまた事実である。

 極端な好き嫌いと同様に他者のことを許す宥恕の精神をなくしてしまうと住みにくい世の中になってしまうことだけは確かなことだ。 

2024年12月21日

価格操作 産業発展阻む

 「価格操作 産業発展阻む」というテーマで12月17日の読売(糸井裕哉記者)が「ニュースの門」という紙面で談合とカルテルについて規制強化すべきだと論じているのが興味を惹かれた。

 物価高が止まらない。そうした中でも、業界でそろって値上げすることは独占禁止法で禁じられている。
 モノの値段を勝手に決めると、何がダメなのかー。規制強化の歴史を振り返りながら、日常生活への影響と根絶に至らない背景を探った。

 国や自治体などの公共工事や公共調達に関する入札で事前に受託事業者や受注金額などを決める行為は「談合」。

 事業者らが相互に連絡を取り合い、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量を共同で取り決める行為は「カルテル」と呼ばれる。いずれも、独禁法の禁止行為である。

 戦前は石炭の価格安定や産業振興のため、紡績や製鋼などように24業種で容認されていたカルテルも1947年の独占禁止法施行で禁止になった。

 公取委OBの田辺治白鳳大学教授によれば、「『良質で安価なモノ』を追い求めなくては、経済や社会は衰退する。不当な値上げで泣くのは消費者。厳格な処分を続け、企業側の意識を高める必要がある」と指摘する。


 公共事業は仕事を受注する側にとっては、安定的な収入が得られるという点で魅力があるはずだ。
 談合で仕切り役というのか「業務屋」がいて、受注する仕事を皆で順番にという結果、仕事にありつければ、互助会ではないが、共存共栄できるのではないか。
 だから、談合が簡単になくなるとは到底思えない。

 もう一方のカルテルであるが、こちらも生産量を調整し、価格を協定してしまえば、値崩れの心配がないから
企業にとっては甘い誘惑のようなものだ。

 談合とカルテルを許せば、納税者や消費者にとっては好ましい結果にはならないし、産業界にとっても発展が阻まれるのは理解できることだ。

 入札時における談合のことは関係者から耳にしたことがある。
 退職してから早や20年経ってしまったから、少し前のことになってしまうが、簡単にはなくならないというのだ。
 例えば、水道工事などであれば、縄張りというかどうかわからないが、工事店の近くの現場は近くの工事店がやっているようなことを耳にしたこともある。

 公共工事では、贈収賄事件が起きるのは、発注のときで、受注できるかどうか死活問題だから起きるべくして起きていると言っても過言ではない。

 少し前に銀行の再編があったが、自動車産業でも日産がホンダに統合されるというニュースが流れ、トヨタとホンダの2大グループに再編されそうだ。

 二つで競争するから問題なさそうだが、1強だけであると、独占禁止法からすれば、価格を決めてしまうようなことは許されない。

 納税者、消費者が不利益を被ることのないように願いたい。

2024年12月15日

独裁者の逃亡先は独裁国家ロシア

 内戦が続くシリアで反政府勢力が8日、首都ダマスカスを制圧し、アサド大統領は後ろ盾となってきたロシアに亡命したと伝えられ、政権は崩壊した。とメディアが伝えている。

 12月9日のNHKによれば、シリアでは反政府勢力を主導した組織の指導者が演説し、「この勝利は歴史の新たな1ページで、地域にとっての転換点だ」と述べた。

 アサド政権の崩壊から一夜が明けたが、これまでのところ大きな混乱は伝えられておらず、国外に避難していたシリア人が帰国する動きも広がっている。

 シリアのジャラリ首相は早期に政権移譲を行う考えを示したが、反政府勢力を主導した組織がテロ組織に指定されていることなどから、平和的な政権の移譲が実現するかが今後の焦点となっている。

 
 2010年から2012年にかけ、中東アラブのチュニジアで起きた反政府運動ジャスミン革命がアラブ諸国に伝播してアラブの春と呼ばれ、自由と民主化を求める多くの市民が独裁政権など抑圧する側に抗議するため立ち上がった。
 エジプトのムバラク政権、中東アラブの暴れん坊こと独裁者リビアのカダフィー大佐が倒された。

 アサド父子による独裁政権が続いていたシリアでも反政府運動が起きたが、ロシアの独裁者プーチンの支援を受けたアサド政権と反政府組織との間で内戦状態になったのである。
 ところが、シリアが頼みとするロシアのプーチンはウクライナへの侵略戦争で支援どころではなくなり、同じく支援していたイランやイスラム武装組織ヒズボラがパレスチナにおけるイスラエルとハマスとの戦争で支援の力が弱まったことでアサド政権の崩壊は時間の問題だった。
 反政府組織の勝利で独裁者アサドは家族を連れ、ロシアへ逃亡し、プーチンは亡命を受け入れたと伝えられている。
 独裁者の最期としては、処刑される前に逃げ出したアサドと家族は命だけは助かったように見えるが、プーチンにとって役に立たなくなったアサドがロシアに居場所が与えられるだろうか大いに疑問である。

 ロシアの独裁者プーチンが国民の富を独り占めし、宮殿に住んでいることが伝えられているが、独裁者アサドもフェラーリなど高級車がずらりと贅沢な暮らしぶりだったことが伝えられている。

 毎日、発信してきたのは「自由」のためにである。
 自分にとって、食べること、生きることすなわち自由でなけれならず、自由を奪う独裁者が大嫌いである。
 北朝鮮の独裁者金一族だけはまだ倒されていないが祖父の代から3代目で、このまま独裁政権が永遠に続くはずがない。

 日本の戦後を政治の世界で見てみると、小泉内閣が独裁的傾向が強くて大嫌いだった。
 「自民党をぶっ壊す」と威勢のいい言葉を発し、郵政民営化に反対する人たちを守旧派だと選挙で公認せず、刺客まで送り込む念の入れようだった。
 自由と民主主義を標榜する自民党政権とはとても思えない暴挙だった。
 結果、郵政民営化で何か佳いことがあったかといえば、何もなかった。

 国鉄民営化では、労働運動の核となる国労、動労をつぶし、派遣労働を導入し、非正規雇用が増えて貧富の格差が拡大した。
 それでも、500円預けたまま返してもらえないが、SUICAという便利なものが使えるようになった点だけは高く評価できる。
 とにかく、独裁者が一人倒されて喜んでいるが、独裁者の雰囲気が漂うトランプが米国大統領に復帰することになり、世界はよろしくない方向に進みそうで危惧するばかりだ。

2024年12月14日

筋を通した昭和の男 高倉健

 「筋を通した昭和の男 高倉健の偉大な背中」という見出しで、東京大手町の読売新聞ビルで10月3日から11月28日まで開催された「没後10年展『高倉健に、なる。』」には、全国各地から連日大勢の人が訪れた。

 「大切なのは、自分の役目は何なのかを見極めて、一生懸命悔いのない毎日を送ることだ」と書いた本紙への寄港、「人生の喜びは何かを得ることではない。得てから大事にしていくこと」(直筆は、わとなっているが、はで書いた)というメモ―。展示品は、スクリーンの外でも硬派な生き方を貫いた高倉健の美学を伝えた。と12月8日の読売が「広角/多角」というタイトルで(田中誠文化部次長)が伝えている。

 1983年発行の写真集「高倉健⦿独白」(学習研究社)から高倉健を励まし続けた作家丸山健二さんから引用した文章に心を揺さぶられた。
 「暗くて、重くて、正しくて、強い一匹狼のイメージは、いつしか敬遠されるようになった。(中略)弱くてだらしない男たちが、『普通でいいんだよ』(中略)などという小賢しい言葉の上であぐらをかいている。その中にあって彼は男であり続けたいと願い、役者をしながらもその姿勢を楠層とはしない。それが高倉健ではないのか」


 先般、高倉健が一番輝いている『駅 STATION』をTVが放送してくれたので夢中で視聴してしまった。
 映画館でこの映画を観たことが心に刻み込まれたのだろうか。語り継ぐ戦争で、稚内から留萌にレンタカーで移動した時、隣町の増毛に行ってみたら、映画の舞台となったこの街に風待ち食堂だった建物が健在で、観光案内所のようになっていた。
 そこで、樺太から引き揚げてきた小笠原丸など3船が留萌沖でソ連の潜水艦からの攻撃で沈められたので、慰霊の旅をしていることを伝えると、主が小笠原丸の犠牲者の慰霊碑が近くの町営墓地にあるからと教えてくれてお参りすることができたのである。
 増毛の駅にも行ってみたが、残念ながら廃線で、駅舎があるだけだった。

 何故、高倉健かといえば、昭和の価値観ともいえる「男らしさ」の代表が高倉健なら、同じ昭和を生きてきた団塊の世代の一員である自分は意気地なしで、「男らしさ」に憧れるばかりだったからだ。
 しかし、それでも、自分は卑怯な振る舞いはできるだけしないように努力してきた。
 然るに、お笑いタレントが性暴力疑惑で週刊誌を訴えながらも、身の潔白など全く晴らす意思もなく、提訴を取り下げた。
 かと思えば、正義の味方でなければならない検察のトップが部下の女性検事に酒を飲ませ、抵抗できなくした上で性的暴行をし、公判で一度は認めた事実関係を翻し、同意の上だったとして事実関係を争う姿勢に転じたという見苦しさ、往生際の悪さである。
 就活生に対する、雇用する側の権力を笠に着たセクハラ、性的暴行も後を絶たず、厚労省が防止策を国会に提出するとも伝えられtえいる。

 高倉健とはまるで正反対の卑怯者たちが跋扈しているのだ。
 それだけに、高倉健の生き方が見直される所以である。

 意気地なしだから、高倉健さんのような生き方はできないが、それでも、女性に酒を飲ませて抵抗できなくして性的暴行するような卑怯な真似は絶対しない。

 東映の『昭和残侠伝』のような所謂やくざ映画は映画館で観たことはないが、『飢餓海峡』とか、山田洋二監督『幸せの黄色いハンカチ』以降の作品は結構観ていて、作品名を以前書いてみたことがあった。
 
 筋を通す。これは大事なことだとつくづく思う。

2024年12月09日

人生3度生きた 堀田力さんを悼む

 戦後最大の疑獄といわれるロッキード事件を捜査した元東京地検特捜部検事で、退官後は公益財団法人を設立して福祉活動に尽力した堀田力さんの訃報をメディアが伝えている。

 12月4日の読売によれば、司法の世界で30年、福祉の世界で30年−−。「人生を2度生きた」といわれるが、「3度生きた」のではないか。評伝として日記などから紹介されている。

 3度目の人生は、2022年暮れに脳梗塞を患い、左側の視野を失い、右目で文字を読んでも意味が認識できない症状に見舞われてから始まった。自分では何もできず、妻の姿が見えないと不安で仕方ない。

 日記の一部によれば、戦争と神の話や、生きていても迷惑をかけるばかりと全身を押し潰す<黒い感情>、<絶望→自死直行の黒く強固なかたまり>のことも出てくる。

 一方、黒い塊を不思議にとかす妻の抱擁や、抱擁から得られる生きる力こそ、赤ん坊や今の子どもたちに必要ではないかという考察もつづられている。

 5回にわたる脳梗塞や持病の心臓病に苦しみながら、字を読む訓練を重ね、読書を楽しめるまでに回復した。リハビリへの努力と執念は周囲が驚くほど。


 繰り返される冤罪事件、大阪の検察のトップによる女性検事に対する性的暴行事件で、名張の毒ぶどう酒事件で冤罪を訴え、再審開始請求を支援している立場から、司法、とりわけ警察と検事に対する心証は極めて悪い。
 検事が正義の味方でなくなり、国家権力の代行者として、全く信用できなくなっている。

 それでも、堀田さんが東京地検特捜部でロッキード事件の捜査に当たったことと、退官後、弁護士かつ福祉の世界で「時代をよくしたい」「社会の役に立ちたい」という生き方はそれは見事なもので称賛していた。

 人生最後の大仕事ととして子育て支援の充実に乗り出したとき病魔に倒れた時のことは以前書いたことがあるが、これほどの人物でも自死を考えたと伝えられている。
 その危機を救ったのが連れ合いの明子さんの抱擁だったそうな。
 絶望し、自死直行の黒く強固なかたまりを不思議にとかす抱擁は生きる力が得られ、この生きる力こそ赤ん坊や子どもたちに必要ではないか。と考察しているところに非凡な人物像を垣間見た。
 掲載されている堀田さんと明子さんの笑顔の写真には激しく心を揺さぶられた。

 つくづく結婚って大事なことだと痛感した。佳き伴侶に恵まれたからこそ、社会の役に立つ仕事ができたのだと改めて連れ合いの持つ力を実感した。

 後期高齢者になる前から、不調に悩まされるようになり、後期高齢者になった2024年は歯茎の痛みなどで、鬱状態、すなわち、自死ということが頭を過った。
 死ということをこれほど真剣に考えたことはなかった。
 乗り越えられたのは、やはり、連れ合いの持つ力、明るさに救われたからである。
 畑の持つ力も大きかったこともある。

 連れ合いが先に逝ってしまった西部邁さんが自死を選択したのも支えてくれる肝心な伴侶がいなかったからだとみている。

 男は強がりを言っても、弱いのだ。
 無論、高倉健みたいな強い男もいることはいる。
 堀田さんが社会の役に立つ仕事で活躍できたのはご自身の努力は無論のこと、連れ合いの力が大きかったのだろうと勝手に推察している。
 自分も改めて連れ合いに「これまでありがとう」と感謝したくなった。

2024年12月07日

2023年ノーベル平和賞受賞モハンマディさん一時釈放

 イランの首都テヘランの刑務所から一時釈放中の5日、本紙の単独インタビューに応じた人権活動家でジャーナリストのナルゲス・モハンマディ氏(52)の言葉は、ノーベル平和賞受賞後、刑務所外で発する初の肉声となった。モハンマディ氏は日本の女性にも連帯を呼びかけた。と12月6日の読売(吉形祐司記者)が伝えている。
 
 21日間限定で、療養のためテヘランのエビン刑務所から釈放されたモハンマディ氏。反国家プロパガンダ罪などで累計30年以上の禁錮刑やむち打ち刑の判決を受けた政治犯だ。ただ、今回の一時釈放中の行動について、政権からの規制は特になかったという。
 「受賞は私だけでなく、イランの女性と国が民主主義を達成し、女性の権利を勝ち取る機会をつくった」と評価した。
 「様々な社会の女性が対話を持つことが互いの社会の成長につながる。イランと日本の女性にも対話の機会が生まれてほしい」と期待した。
 98年に政府批判の記事を書いて以降、逮捕と投獄が繰り返され、累計30年以上の禁錮、154回のむち打ちの判決を受けたモハンマディさん。


 1978年のイラン革命でパーレビ朝が倒され、イスラム教シーア派の指導者ホメイニ体制に代わったイラン。
 医師の中村哲さんが灌漑用水を作ったことで広く知られているアフガンでもソ連、米国と戦ったイスラム原理主義のタリバンが勝利し、両国ともに、政権によって民主主義と女性の自由が奪われてきた。
 イランが米国と対立することは理解できるものの、女性の自由を奪うことには断固反対である。
 同じことがアフガンのタリバンにも言えることだ。
 アフガンの女性に教育を受けさせないなど論外である。

 人権活動家でジャーナリストのナルゲス・モハンマディさんが訴えているのは、自由と民主主義のことで、イランには教条主義はあっても、肝心な自由と民主主義がないから、人権が抑圧されない自由と民主主義の社会を目指そうとしているだけで、政府批判を理由に口封じのために投獄するという政権は、傍目から見てもノーサンキューである。

 モハンマディさんのことを他人事ととても思えないのは、日本の社会もイランと較べ、自由と民主主義がはるかに進んでいるとはとても思えないからだ。
 中国や韓国でさえとっくの昔から夫婦別姓が確立されているにもかかわらず、夫婦別姓に反対する勢力。日本国憲法で国の象徴とされている天皇の後継者が男系でなければならないなどと愚かな主張をしている勢力が少なくない。
 男女が平等という世界の趨勢にあって、寝ぼけたことを言っている勢力がいるのだ。
 夫婦別姓などは好きなように選択できるようにすればいいだけのことである。反対する理由が理解できない。

 病気で闘病中の経済アナリスト森卓さんこと森永卓郎さんが政府に批判的な発言をしているとスポンサーで成り立っているTVには出演できなくなると言っていた。

 先般、2024年を振り返って、2月にロシアの北極圏の刑務所で殺害された反体制の指導者ナワリヌイさんのことを書いたばかりである。
 21世紀のヒトラー+スターリンこと悪魔殺人鬼のプーチンは自分の反対するナワリヌイさんが目障りで、結局、手下の者に手をまわして殺害させてしまった。

 森卓さんは日航機の事故は自衛隊による撃墜だったと衝撃的なことを発信していることはすでに書いたが、日本では発信するまではできても、そのことをメディアが取り上げようとはしない。
 つまり、日本のメディアからは権力を批判する自由ということが守られていないということになる。

 だからこそ、モハンマディさん投獄のことを遠いイランの出来事だなどと思ってはならない。 

2024年12月04日

『海の沈黙』

 月に一度の映画館行き、12月は倉本聰脚本、若松節朗監督、本木雅弘、小泉今日子、中井貴一など出演の『海の沈黙』を観てきた。
 月に一度の映画館行き、いつも一緒に行ってもらう連れ合いが滅茶苦茶に忙しくて、とうとう10月、11月と行かれなくて久し振りに観ることができたので満たされた気分である。
 月に一度映画館に行くというのは自分の流儀かつ、自分に課していることであるが、非日常の世界に浸るというのは日々の生活に欠かせなくなっている。

 さて、ドキュメンタリー作品などを観ることが多く、エンターテイメント作品を観る機会がほとんどないので偶には文芸作品というのか、倉本作品を観るのも悪くない。
 倉本聰といえば、自分にとっては高倉健の代表作で、大好きな『駅 STATION』の脚本を書いた人だから、期待して観ることにした。
 北海道富良野に移り住み、北海道の佳さを知るだけに冬の留萌、増毛、雄冬などを舞台に『駅 STATION』を書いてくれた。あの時の光景が忘れられず、感動の余韻に浸って、現地を訪れてしまったほどである。

 さて、『海の沈黙』である。
 高名な画家の展覧会で起こった贋作騒動。必然的に描いた作家のことが追及され、浮かび上がってきたのが、若き天才画家と呼ばれながらも、突然、姿を消した津山竜次。
 高名な画家の妻となっている安奈は、かつてその竜次の想い人だった。
 竜次の番頭スイケンの助力で小樽で再会を果たす二人。
 しかし、この時竜次は肺を病んでいたのである。
 興趣を削ぐから物語のあらすじはこの辺でやめておく。

 団塊の世代かつ、映画好きとはいいながら、エンターテイメント作品を観る機会が少なかったので、主演の本木雅弘、小泉今日子のことはよく知らず、「サラメシ」で見事なナレーションを聞かせてくれている中井貴一のことは少しは知っている程度だった。
 小泉今日子は失礼ながら、「いい女だな」とスクリーンを眺めていたら、連れ合い宛に送られてくる通販の「ハルメク」の宣伝で見たことを思い出した。50代の女性として、輝いていたあの女性だった。
 本木雅弘はお茶の宣伝で見ていただけでなく、『おくりびと』に出ていたことを思い出した。
 入れ墨の女性を演じた清水美砂は『海は見ていた』だったかで観ているので知っていた。

 映画で一貫して描かれているテーマは美術品の価値ということである。
 多くの人々は美術品の贋作などと言っても見抜くことなどできるわけがない。
 贋作だとされる前、絶賛されてきた作品が贋作だとわかると途端に価値が下がってしまう。
 美術品の価値とは何ぞや?ということに尽きる。

 このことは映画作品などが海外で評価されると途端に日本での評価が上がる事例とそっくりである。
 つまり、人々は自分で美術品の価値などわからないのではないかということ。

 買い求めたプログラムにも書かれていたが、美術品の贋作、美術品の価値などに興味関心がある向きには大いにお薦めした映画である。

 男と女が抱く過去の恋愛の思い出は同じではないと思うが、男の立場から見ると、若い頃好きだった女性のことは忘れがたいような気がしてならない。
 女性の立場からはどうだろうか。
 願わくば、同じであってもらいたいが・・・。

2024年12月01日

自由のために死す!ナワリヌイさんを称える

 「光陰矢の如し」、2024年も師走になってしまった。 
 いつも年末になると行く年を振り返ってみて、書くことになるが、今朝のマイあさラジオで、アレクセイ・ナワリヌイ『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(講談社)の訳者である斎藤栄一郎:星 薫子の一人斎藤栄一郎さんに著作について訊いていたので書かないではいられなくなった。
 読んでもいないのに取り上げるのは自分の生き方に反することで、心苦しいが、衰えてしまった高齢者の世迷言として理解してもらえればいい。

 Part1 NEAR DEATH 死の淵
―2020年 航空機内での毒殺未遂事件からドイツ療養まで
 Part2  FORMATION 原体験
―軍の町で育った青年が政治に目覚め政治に失望するまで
 Part3 WORK 目覚め
―無神論者が父になり、プーチン体制の罪と嘘を暴くまで
 Part4 獄中記
―2021年 帰国直後の逮捕から2024年 殺害まで
 
 ロシアの反体制派リーダー、人権活動家、政治活動家。2011年の下院選挙における不正疑惑に抗議、大規模なプーチン抗議集会を行い、一躍注目を集める。「反汚職基金」を立ち上げ、SNSを駆使して不正選挙の実態、政権中枢幹部および国営企業の腐敗と富の独占を告発し、国内外で大反響を呼ぶ。国際的評価も高く、欧州議会が人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」、人権と民主主義のためのジュネーブ・サミット「勇気賞」(ともに2021年)、「ドレスデン平和賞」(2024年)など、多くの賞を得ている。と出版社の著者紹介がある。
 

 書いておきたかったのは、アレクセイ・ナワリヌイさんがドイツで治療していたのだから、そのまま亡命していれば殺されることはなかったにもかかわらず、ロシアに帰国して逮捕、投獄され、北極圏の刑務所で事実上殺害されてしまったことに対し、何故だ?とずっと考えていた。

 「自由」の有難みを訴えるために毎日書き続けてきた立場として、21世紀のヒトラー+スターリンこと悪魔殺人鬼のプーチンを怖れさせた男として歴史に名前が刻まれることになったナワリヌイさん。
 プーチンに殺されても、独裁者かつ悪魔殺人鬼に抵抗を呼びかけ、ウクライナへの侵攻、侵略戦争にも反対した人物として、今後も高く評価されることはまちがいない。

 人は何のために生きるのか。
 後期高齢者になるまで生かされた立場として、得た結論は人は死ぬために生きるということだった。
 死ぬためとは、自分が信じたことをやるということでもある。

 アレクセイ・ナワリヌイさんは自らの信念のために殺されることを怖れず、結果的に、プーチンに殺されてしまったが、彼がロシアで果たしたことは永遠に称賛されるだろう。
 ご冥福を祈りたい。

2024年11月27日

父を亡くし、医者になって、「生」の時間が長くなるように

 はたらく人を応援する 第11回 こども作文コンクール「ありがとう」感謝の心を、未来へつなぐ。の表彰式が11月9日に都内で開催された。その受賞者作品が11月23日の勤労感謝の日の読売に掲載されている。

 小学5〜6年生の部で大賞を受賞した湘南白百合学園小学校6年米田彩夏さんの「私の夢について」を読んで心を揺さぶられたので書いておく。

 医者になりたい。というのが夢だと言う米田さん。4歳の頃に父親を亡くしたが、その頃は「死」がどういうことかわからなかった。
 目を閉じたままいつまでも起きてこない父。母や祖父母、親戚たちが涙を流す姿に、何か良くないことが起きているとは思った。
 新盆のとき、「今日は,お父さんが天国から帰って来る日だよ」という母親。次々と集まる親戚に期待がふくらんだ。
 いつまで待っても帰って来ない父。家中のドアを開けて確かめてもどこにも父がいない。
 母に怒りをぶつけて泣きじゃくった。翌日、父の動画を見せてもらい、ずっと見続け、ようやく「死」がどういうことか理解できた。
 母は自分より悲しいかもしれない。祖父母もつらいかもしれない。父はもっと生きたかっただろうと思って。
 病気や事故、戦争などで大切な人を亡くした人が世界中にたくさんいるだろう。生と死はつながっているからこそ、いつか来る「死」の前に「生」の時間を長く過ごせる人が一人でも多くなるように医者になりたい。
 父を亡くした悲しいことと引き換えだけど、やりたいことを見つけた。夢に向かって歩いて行きたい。
 以上が要旨である。


 赤穂市民病院で明らかな医療ミスで元気だった女性が自分の意志で体が自由にならなくなってしまったことをNHKのクローズアップ現代で知った。
 わずか8か月でわかっているだけでも8件。医師の資格があるのか疑問だが、医者になってはいけない人が医者になる、手術をしてはいけない医師が手術をした結果である。
 
 大事な大事な父親を亡くした引き換えに医者になりたいと夢を語る米田さんにエールをおくりたくなった。
 長く生きてきた自分よりよほど優秀な米田さんだからきっと夢を叶えて医者になり、人助けをしてくれることだろうと期待している。

 世の中で医師という職業に就く人には、立派な人が少なくない。
 黄熱病の研究で志半ばで亡くなった野口英世。自身も被爆しながらも被爆者の診察をされた永井隆。胎児性水俣病を見出した原田正純、アフガンで医師でありながら灌漑用水を敷設した中村哲。(敬称略)
 とりあえず、思いつくままに少しだけ名前を挙げたが、ほかにも国境なき医師団のようにたくさんの医師がいる。
 志の高い人が医師になってもらえると有り難い。

2024年11月10日

「自由」を求めて ベルリンの壁崩壊から35年

 ベルリンの壁崩壊から35年、当時、東側陣営の民主化運動に先べんをつけ、壁の崩壊の原動力ともなったと評価されるのがポーランドの自主管理労組「連帯」で、その活動をいまに伝える地元の博物館の館長で政治学者のベイゼル・ケルスキ氏が8日、NHKのインタビューに応じた。とNHKマイあさラジオが伝えている。
  
 ケルスキ氏は、壁が崩壊した歴史的な意義をあらためて強調した上で自国第一主義を掲げ、多様性などを否定する極右政党がヨーロッパで台頭している現状を取り上げ「残念ながらいま私たちはまったく別の世界に生きている」と懸念を示した。

 トランプ氏が大統領選挙で勝利したアメリカについて「人権の尊重や国際的な連帯も重要な問題ではなくなる」と述べた上で、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領については「NATOの結束が安定しているかを見極めようとするだろう」としてアメリカが世界を不安定化させるおそれがあると危機感を募らせた。

 「私たちはいっそう無秩序な状況の中にいる。自由や民主主義に基づく秩序を構築したい側と、世界を勢力圏に分けることに関心を持つ大国との分裂が生じている。私たちは、なぜ人権や平和を重んじるのかを再び説いていかなければならない」と述べ、ベルリンの壁の崩壊が広めた民主主義や自由な価値観を守り続ける重要性を強調した。


 毎日、飽きもせず発信しているのは「自由」のためにである。
 政党名にその「自由」を置いている自由民主党はといえば、反日、反社の韓国の旧統一教会の影響を受けた安倍派の議員たちがリーダーが健在のうちは、メディアも全くこのことを批判できなかったが、旧統一教会の被害者の怒りの銃弾に倒されると、ようやくメディアも旧統一教会の反日反社の姿勢を明らかにする報道をするようになった。

 次いで、政治資金を集め、政治資金規正法に反し、このカネを裏金とし、税金も申告せずに逮捕もされないということで、有権者の怒りを買い、衆議院議員選挙で裏金議員と呼ばれた人たちが苦戦し、与党の過半数割れという事態を招いた。
 一言でいうなら、自由の意味をはき違えている。
 保守派と自分たちのことを主張しているくせに反日の韓国のカルト教団の手先みたいになってしまって恥ずかしくないのか。

 その一番大事な自由が奪われていたのが、米ソ冷戦構造下の東欧の人たちだった。
 その筆頭が東西に分断されたドイツで、その象徴がベルリンの壁である。

 ベルリンの壁を崩壊させる原動力となったのが隣国ポーランドの民主化組織連帯で、その指導者がワレサさんだった。
 ポーランドは1939年にソ連に侵略され、ナチスドイツの時代はドイツ軍に、戦後はソ連軍にということでソ連軍に酷い目に遭わされてきた。
 カティンの森事件で将来を嘱望されたポーランドの人たちがソ連軍に拉致され、虐殺されたことから反ソ感情はゆるぎないものがあるのだ。

 ベルリンの壁が崩壊したことで、東西ドイツは統合され、元通り一つの国になり、その後、欧州は欧州連合(EU)として国境、通貨など自由と民主主義体制の連合体として一緒になった。
 旧ソビエト連邦の共和国の一員にさせられていたウクライナは自由と民主主義を求め,EU加盟、その防衛組織NATOに加盟を目論んでいたことが気に入らなかったロシアのプーチンに侵略され、自由と民主主義井、国土防衛のために戦っている。

 自由を人びとから奪った象徴がベルリンの壁なのである。
 自由は油断しているとすぐに権力によって奪われてしまうから要注意だ。

2024年11月06日

ホストクラブ経営9社 ホスト30人 20億円所得隠し

 業界大手とされるホストクラブグループを巡り、多額の税逃れが東京国税局の調査で明らかになった。運営会社など9社とホスト約30人を合わせ、指摘された所得隠しは約20億円。大半のホストは店側から発行された報酬記録を破棄するなど、税務申告をしていなかったといい、納税意識の希薄さが鮮明になっている。と10月31日の読売(加藤哲大記者)が伝えている。

 関係者の話やホームページなどによると、FGは2011年設立で、グループは新宿・歌舞伎町を中心に大阪・ミナミ、名古屋・栄など各地の繁華街でホストクラブを運営。店員の中には、年間億単位の売り上げを記録するホストも複数いるとされる。

 ホストクラブを巡っては近年、「ツケ払い」にして客の支払い能力を超えた飲食代を請求し、女性客が返済のために売春を強要されるなどの問題が相次いだ。警察庁によると、各地の警察は2023年1月〜2024年6月、悪質な営業などで83件・計203人を摘発した。

 同庁の有識者検討会は2024年に入り、料金の虚偽説明や、恋愛感情に乗じた悪質請求を規制する方向で議論を進めている。年内にも報告書がまとまる見通しで、同庁幹部は「風俗営業法の改正も含めて対策を進めていく」と語った。


 ホストクラブとホストが悪質な営業で客の女性を騙したも同然の手口で高額な飲食代金をつけ払いにし、支払えないと風俗に売り渡し、売春をさせるという一昔前の女衒以上の悪質な人身売買をやっている。
 その上で、得た高額な収入を税務申告していないということで、この業界で働く者たちの法律を遵守する姿勢が全くないことに対し、当局は一日も早く風俗営業法の改正をすべきである。

 やり方が阿漕すぎて、女衒や遊廓の楼主の血が流れているのかと思ったほどである。
 風俗業界は売春防止法で、人身売買並びに管理売春を禁じられているはずだから、ホストから風俗に身を沈められる女性を雇用するなら、営業許可を取り消すべきである。
 本人の意思で働くならともかく、騙し同然のやり方で多額の借金を拵え、身売りさせるのは、戦前、戦中、戦後と貧しい農家の娘たちが身売りさせられたことと変わらない。

 そもそも不正に得た不労所得というか収入であっても、税金を申告する必要があるが、自民党安倍派の人たちを主に政治献金を集めたカネを政治資金規正法で定められた収支報告をせずに裏金とし、税務申告しなかったにもかかわらず、明確な処罰が為されなかったことがあった。

 ホストだけに税金の申告逃れは許されないと言うつもりはないが、政治家もホストも脱税せず、きちんと税金を納めるところから、人としての評価が始まる。

 税金をきちんと納めようとはしない企業、個人共に許されることではないと肝に命じるべきだ。

2024年10月21日

強制不妊補償金支給法成立

 旧優生保護法の被害者救済を目指す新法は8日の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。不妊手術を強制された被害者や配偶者への補償や、人工妊娠中絶手術を受けた被害者への救済を実現する。衆参両院は優生思想に基づく過去の違憲立法を謝罪し、政府に誠実な対応を求める決議も可決した。とメディアが伝えている。

 10月8日の読売によれば、救済法では、不妊手術を強制された人に1500万円、その配偶者に500万円の補償金を支給する。本人や配偶者が死亡している場合は遺族が受け取り対象となる。人工妊娠中絶手術を強いられた人には、一時金200万円を支給する。

 旧優生保護法は戦後の食糧難を背景に、「不良な子孫の出生防止」を掲げて1948年に成立した。障害者らへの強制的な不妊手術を可能とし、96年に母体保護法に改正されるまで、約2万5000人が手術を受けた。最高裁は2024年7月、個人の尊厳や法の下の平等を定めた憲法に違反するとの判決を出した。

 救済法は、前文で国会と政府の責任に言及した上で、「心から深く謝罪する」と明記した。


 語り継ぐ戦争では、1945年8月9日未明、満州などに侵攻したソ連軍の兵士による邦人女性に対する激しい性的暴行が繰り返され、中国人や朝鮮人も呼応したかのように邦人女性に性的暴行をした。
 ために、生憎妊娠してしまい、博多、佐世保、仙崎、そして舞鶴に引き揚げ船が着くと、ソ連兵の子どもを産ませるわけにはいかないと当時堕胎罪があったが、超法規措置で妊娠中絶手術が行われた。無論、梅毒に罹患した女性には治療もである。

 精神疾患、所謂統合失調症で長く入院生活をしてきた弟を持つシニア世代の兄が家系のことを考え、子を持たないと若い頃、決めたことにその連れ合いが不満があったのであろうか、自分の目の前で口論となったことを思い出した。
 仕事というか、自分の身内のことではないが、その時の兄の気持ちが痛いほど理解できたし、夫を詰る連れ合いの気持ちもわからないではなかったが、正しい選択だったと今でも思う。

 三浦哲郎『忍ぶ川』(新潮文庫)を若い頃買い求めて読んだが、兄、姉が自殺、失踪という冥血筋に慄く大学生が水商売の世界に生きる女性と出会い、互いの血に流れる不幸を抱えながら共に生きていく姿を描く作品だったと記憶する。

 LGBTの人を生産性がない。あるいは性暴力の被害者女性に対し、女は嘘をつける。さらには、アイヌや朝鮮半島出身者などを差別する発言を繰り返した自民党の比例選出の女性議員がいたが、人を差別する人はかなりいるような気がする。
 YOUTUBEには、在日だとか部落だとか人を貶めるような動画をアップしている輩がいる。
 在日であろうがなかろうが、日本国籍があれば、出身や過去なんて関係ないし、そもそも人権蹂躙ではないか。
 優生保護思想は差別発言を繰り返した女性議員を擁護する側の人たちが考えていることで、健常者も障がい者もいての社会であることを認めたくない了見の狭い人間の取る態度である。

 ハンセン病の患者にも、強制不妊があったことは、宮崎かづゑさんや、山内きみ江さんが証言している。
 ハンセン病は遺伝するわけではないが、病気のことが詳しくわからない時代から、隔離してしまうことで、原因が究明されてからも隔離が続くという、その延長線上にあるのが強制不妊だったのではないか。

 読売の看板となっている「人生案内」に3人子どもいて、知的障がいそれも重い子どもに愛情が持てないという母親からの相談があり、尾木ママこと尾木直樹さんが助言していた。

 社会というのはいろいろな人たちで成り立つものだから、生まれてきた命は平等であるはずだ。

2024年10月19日

女性支援団体 やまぬ妨害 シェルター閉鎖、保護件数減も

 困難を抱える女性の支援団体に対する嫌がらせ行為が後を絶たない。インターネットでの中傷が原因で、活動の縮小を余儀なくされた団体もある。と10月16日の読売が夕刊で伝えている。

 東京地裁は7月、性暴力に遭った若年女性らを支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)の名誉を棄損したとして、男性に220万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
 判決などによると、男性は動画投稿サイトなどにコラボの活動報告書の写真を転載し、「生活保護ビジネス」などと投稿。ユーチューバーらが押しかけ、女性を保護するシェルターの場所をネット上で公表したため、半数超を閉鎖に追い込まれた。
 少女の居場所作りを行うNPO法人「BONDプロジェクト」でも、非公表のシェルターの場所をSNSなどで拡散されて3か所のうち2か所を閉鎖。面談や少女の保護件数が半減した。
 性被害相談などに乗るNPO法人「ぱっぷす」も事務所に押しかけられるなどされ、拠点を移すことを余儀なくされた。
 これらの団体は、22年以降に嫌がらせが始まったり、ヒートアップしたという。


 人身売買に目覚めたのは多田さよ子『小菊の悲願』(聖燈社)を買い求めて読んでからである。同時に管理売春に反対する立場に立つようになった。
 実践として、深津文雄さんの婦人保護施設「かにた村」のサポート会員となり、支援活動を始め、かにたがウガンダへの支援を始める頃まで続いた。
 
 犯罪被害者支援を訴える立場から性暴力に反対する今は、東京・強姦救援センターのサポート会員になっている。
 明確に公言できるのは連れ合いを筆頭に、母親、姉、職場の同僚、連れ合いの箏の仲間、看護師など医療関係者など多くの女性に大変お世話になってきたことから、自分は女性の味方である。

 生きるときの理想として、困っている女性を虐待したり、いじめたりするような男は卑怯者だとして、卑怯者にはなりたくないと願ってきた。
 女性と一括りにすることができないのは、差別発言を繰り返した女性議員。合祀されているA級戦犯を祀る神社にお参りし、あたかも戦争を肯定するかのように見受けられる女性議員など嫌悪感のある人もまたたくさんいるからだ。

 シェルターとは爆弾から身を護る場所や施設のことであるから、その場所を公表して、爆弾やストーカーに狙われるようにする男は卑怯者だと断定できる。

 女性が困難を抱える女性に手を指し述べることを邪魔するのはやめるべきだ。福祉の生活保護を利用して何が悪いのか。
 女性を困らせ、シェルターに避難するようにさせたのは悪い男が原因ではないか。

 女性があっての男性ではないか。
 母親に産んでもらったところから、人生が始まったのだから、女性にもっと感謝すべきである。

2024年10月18日

祖先信仰 死後も続く 私たちの物語

 今や、読売の看板となりつつある連載「あすへの考」。その10月13日は【日本型の死生観】をテーマにチェコスロバキア出身で淑徳大学教授郷堀ヨゼフさん(45)に(古沢由紀子編集委員)聞いている内容が実に興味深かったので書いておく。

 日本の農村で調査する中で、「稲作をすれば地域のことが分かる」と言われ、新潟は上越で約7eの田んぼを借りてコメ作りをしているヨゼフさん。
 遺影に話しかける高齢者の姿を目にした時、カルチャーショックを受けたそうな。
 かつて、共産党独裁政権下で、宗教が抑制され、葬儀を行わない人が多いチェコ出身だからか。

 死者との関係を緊密に保ってきた伝統的な日本社会。死という本人と周囲にも大きな試練は葬式仏教という言葉があったくらい宗教が担ってきたことであるが、今日、葬儀の費用がかかりすぎることから、葬式や墓をやめる動きが広がりつつある。

 日常から死者を排除し、生命の枠組みを自分の誕生から死までに限定すると、「自分さえ、今さえよければいい」という考えに傾きがち。受け継いだバトンを未来につなぎ、いかに生きるかを考えれば、私たち自身の物語は終わらずに続いていく。
 今日まで受け継がれてきた仏壇や遺影が「あの世である異界との日常的な接点になり、死者や先祖に見守られているという思想には仏教だけでなく、土着の祖先信仰が影響している。死を超えて続くつながりは、人々に安心感をもたらしている。
 日本の日常生活に溶け込んだ死者との対話は、家族の悲嘆を緩和するグリーフケアとして近年、海外でも注目されているくらいだ。
 荒っぽいが要旨である。


 いつの頃からか、毎朝、仏壇と神棚に手を合わせ、ご先祖に感謝と日々の安泰を願うのが習慣になっている。
 宗教の勉強をしたわけではないが、個人的には先祖の守護霊に守られて今日に至っていると我が身を振り返って常に感謝の気持ちを抱く。
 還暦が過ぎ、古希を前に小学校のクラスメートで親しかった2人が亡くなり、古希が過ぎ後期高齢者まで大丈夫かなと思っていたら、大学のときから親しくしていた友人がすい臓がんで亡くなり、後期高齢者になるや、10代から20代と富士五湖の本栖湖でキャンプした運動神経友人が今夏、亡くなった。
 同級生や友人たちの中で自分が一番先に死ぬだろうと思っていたが、50代半ばを前にリタイアし、自由を手にして、畑で有機無農薬で野菜栽培を始めたからか、今日まで生きている。

 語り継ぐ戦争、戦没者慰霊のための行脚をしてきたくらいだから、死者は比較的身近にいるのだ。
 ところが、コロナ禍でどこにも出かけられなくなり、ようやく、騒ぎが収まりつつある2024年。コロナ症状で体調不良になり、8月になるや歯茎が痛み出し、その後、自宅で躓いて足の親指を捻挫しという具合で精神的にもダメージを受け、鬱状態になってしまったのである。

 それでも、10月になって、大阪でお世話になった恩人の墓参りを企画していたら、少し体調が上向いてきた。

 チェコ出身の文化人類学者郷堀ヨゼフさんの「死後も続く私たちの物語」を興味深く読んだのは、自分の死が近いからだと思うが、今夏亡くなった友人は、先日、手を合わせに訪れたら、無宗教だから、線香も無用かつ、納骨されないまま箪笥の上に遺影と共に安置されていた。

 田舎で調査をしているとき、遺影に語り掛ける高齢者の姿を見てヨゼフさんは驚いたらしいが、自分だって、毎朝の日課として、仏壇の前で死者に語り掛けていることを思い、一昔前の日本なら当たり前のことだと思っていたが、これからは、こんなことも少なくなっていくのかもしれない。

 死者を大事にしない社会は、生者も大事にされないはずだから、死者を大事にすることをもう一度見直した方がいい。
 語り継ぐ戦争では遺骨を収集することが求められる所以である。