2010年05月15日

人は愛するに足り、真心は信ずるに足る 

 中村哲、澤地久枝『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束』岩波書店2010年を読んだ。

 この本は内橋克人経済評論家が朝のNHKラジオで取り上げたと聞く。生憎、その放送は聞き逃した。

 書店に行ってもなかなか手に入らず、痺れを切らして店員に聞いたら、岩波の本は買い取りだから置いていないとか、重版中で品切れだとかでようやく、先日買い求めたものである。

 2010年2月27日に医師中村哲として、一度とりあげているが、この対談集はノンフィクション作家である、澤地がアフガンで沙漠の緑化のため、灌漑用水路建設に奮闘する中村にエールを送りたいという希望で、本の出版を企画し、日本の若者へ伝え残すという理由に心を動かされた中村医師が了解して実現した。

 澤地久枝については、『人間の条件』や『戦争と人間』の著作で知られる五味川純平の助手をしていたことを知っているくらいであるが、彼女についても、勉強し、いずれ取り上げたい。

 さて、中村医師である。前回取り上げたときにも実に立派な人がいるものだと感心したものであるが、対談集を読み、人柄などを知るに及び、その活動実績に敬服し、同じキリスト教徒として、大正・昭和期の社会運動家で「貧民街の聖者」として知られる賀川豊彦の再来かと思った。

 賀川豊彦についてもいずれ書く。

 中村医師がアフガンに行き、はじめは医師としてハンセン病の治療にあたっていたが、病気の原因は水がないことによる栄養失調であると見抜き、医師であるにもかかわらず、沙漠に灌漑用水路の建設に取り組むのだ。この辺が並みの人間にできることではない非凡さだろう。

 沢木耕太郎の『人の砂漠』では「砂漠」、この対談集では「沙漠」この違いする知らなかった。

 自分はこの対談集を読み、大いに反省しているところだ。かつて、アフガンでの灌漑用水路の建設に従事していた伊藤和也ワーカーが殺害されたとき、アフガンの人のために懸命に働いてきた日本人を殺害するようなこんな恩知らずな人間がいる国でなぜ、中村医師はその活動をやめないのか、早くやめて、帰国したほうがいいなどと、はなはだ失礼なことを考えてしまったのである。

 しかし、自分がこの対談集を買い求めることで、ささやかであるが、自分の良心として、中村医師へのエールを送ることになるのではないかとも考えた。

 人は何のために生きるのか。『クロッシング』で描かれた北朝鮮の脱北者。生まれた子どもを赤ちゃんポストに預ける人、12年連続で3万人を超えるという自殺者。アフガンで一所懸命に灌漑用水路建設に奮闘する医師。

 対談集の内容について、あえてあまり触れなかった。中村医師の仕事を応援するため、自分で買い求めてほしいからである。

 





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