2025年08月26日

シベリア抑留の実態解明と瀬島龍三スパイ説

 NHK時論公論「シベリア抑留 道半ばの実態解明 今後は」が8月22日放送され、視聴することができたので語り継ぐ戦争の立場から書いておく。

 「戦後80年の8月15日「終戦の日」は過ぎましたが、戦争体験者の苦難の中には、終戦後に始まったものもありました。そのひとつが、いわゆる「シベリア抑留」です。80年前の1945年8月23日に旧ソビエトが出した指令に基づいて元日本兵などが抑留され、過酷な労働を強いられ多くの人が命を落としましたが、犠牲者の正確な数など全容はいまだわからず、多くの課題が残されています。今回は「シベリア抑留」の実態解明の道のりと、今後について考えます」と㏋にある。

 厚生労働省によると、抑留された人は約57万5000人で、その1割ほど、約5万5000人が死亡したとされている。生き抜いた人の多くは抑留が3年から4年、最も長い人は11年にも及ぶ。

 ダイヤモンドオンライン 共同通信社社会部編「シベリア抑留に『日ソ密約』はあったのか?瀬島龍三による『あってはならない歴史の改竄』とは」をネットで見つけた。シベリア抑留の実態解明のカギを握る男、ソ連のスパイだと信じているのは自分だけだろうか。


 『シベリア抑留』の実態解明がなされていない証拠に抑留者の人数がある。
 2014年に88歳で亡くなった元抑留者の村山常雄さんが作った名簿。亡くなった仲間たちのため、政府に提供された名簿や自らシベリアの墓地で書き写してきた名前などをもとに、11年かけて約4万6300人分の氏名や死亡場所などをまとめホームページで公開。

 その村山さんに影響を受けたという関東学院大学准教授小林昭菜さんがロシアの公文書館なども含め調査した結果では抑留者は61万1237人。

 アジア太平洋戦争に関し、語り継ぐ戦争、戦没者慰霊のための行脚を2008年から2019年まで続け、コロナ渦で出かけられなくなっている間に後期高齢者となり、心身共に著しく衰えてしまったが、自分にとって、シベリア抑留は満蒙開拓と並んで最大の関心事である。
 五味川純平『人間の條件』(三一書房)を原作とするTVドラマで、主人公梶を演じた加藤剛が最愛の人美千子に会いたいと抑留中の収容所を脱走するも、願いがかなうことはなく、凍土に倒れた体に降りしきる雪が積もっていくシーンは今でも落涙するほど梶に感化されてしまったからだ。

 そのシベリア抑留に関しては山崎豊子『不毛地帯』(新潮文庫)を買い求めて読んでいるが、一般に主人公の壱岐正元陸軍中佐のモデルだと思われている瀬島隆三元陸軍中佐に関して、複数の人物から造形したもので、瀬島隆三だけがモデルだというのは誤りだと作者は言っている。

 共同通信社社会部編『沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか』(朝日文庫)の一部を抜粋・編集したものです。この本は1999年に新潮文庫から刊行されたものの復刊です。とはじめに断りがある。
 
 全国抑留者補償協議会(全抑協)から出版された『シベリア抑留秘史』日本語訳の単行本には、原文にない「更に軍将兵、一般日本人の本国送還」の十六字が「然るべき取り扱い、給養、医療」の後に加筆されていた。

 あってはならない歴史的文書の改竄。全抑協から出版前の原稿点検を頼まれた瀬島の行為だった。全抑協会長斎藤六郎(1995年12月、72歳で死亡)が言う。手の込んだ加筆を瀬島さんがするとは思わなかった。

 財務省の公文書改竄が騒がれたことがあるが、文書を改竄するのは後ろめたいことがあるからに決まっている。

 この一事でもって瀬島龍三がソ連のスパイだったことが裏付けられるが、かつて,A級戦犯だった岸信介元首相だって、米国のスパイだった可能性が高かった。

 理由は簡単である。
 シベリアに抑留されてしまえば、帰国できる保障はない。帰国できるならスパイにでもなんでもなるだろうし、極東裁判、東京裁判で死刑もあるかもしれないA級戦犯から逃れられるなら米国のスパイにだってなるだろう。

 人間なんて本当に弱いものである。

 日本兵をシベリア抑留し、強制労働させるように命令したのはスターリンだが、一部に、日本政府や軍幹部はシベリア抑留を賠償の一部として容認したのではないかという疑惑があるのだ。
 戦争の勝者に敗者が何かいえるはずもないが、シベリア抑留しようとしているソ連に将兵を日本に帰すように発言してもいないことをさも、申し入れしたかのように文書を改竄するなんて怪しいものではある。
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