2025年07月26日

清貧の大統領に学ぶ生き方

 「貧乏とは、少ししかもっていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである」と現代の大量消費社会を痛烈に批判したことで知られるホセ・ムヒカ・ウルグアイ元大統領が5月に89歳で亡くなったことを受け、7月17日の読売(大月美佳記者)が夕刊の追悼抄でその生き方を称賛している。

 南米ウルグアイ大統領在任中(10〜15年)、公邸に住まず、3部屋しかないトタン屋根の自宅から通勤した。
 その暮らしぶりから「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれた。

 一貫して目指していたのは、豊かさを分かち合える平等な社会の実現だった。訪問客には小説「ドン・キホーテ」の一節から「常に人間は一人では生きられない」と説いた。
 幼くして父を亡くし、母と共に花を売って生計を立てた。左派武装組織に参加し、計4回逮捕された。軍事政権が終わるまでの12年以上に及ぶ獄中生活、ハエを食べて飢えをしのいだこともあった。
 「極限まで追い詰められた経験は、人生の最も重要で根本的なこと、些細なことに気づかせてくれた」とは同じ武装組織のメンバーだった連れ合いのルシアさんだ。
 出所後は花を売りながら元ゲリラ仲間と政治活動を続け、大統領に就任したとき74歳だった。
 在任中は、自らの給与の大半を寄付し、貧困層への住宅建設などに尽力した。
 『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』が刊行され、退任後の2016年に来日。
 ヒロシマの平和記念資料館を訪れ、「未来に向けて記憶しよう。人間は同じ石で躓く唯一の動物だだと歴史が示しているから」と記帳をした。


 くさばよしみ編、中川学絵『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)が手許にある。
 他人の悪口を言わないからか、人に好かれる連れ合いには親しくしている女性が多い。
 職場で管理職として現在も働き、陶芸を楽しみかつ自分も一緒に会食したことがある読書好きな女性がこの本のことを教えてくれたので、買い求めて読んだというわけである。

 恥ずかしながら、この時までよく知らなかった。
 投獄され、後に大統領になったといえば、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領がすぐに頭に浮かぶ。
 南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領と同国代表ラグビーチームの白人キャプテンがワールドカップ制覇へ向け奮闘する姿を、クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン、マット・デイモン主演で描いた『インビクタス負けざる者たち』2010年公開だったか。
 この映画を観て、一握りの人たちが多くの富を独り占めすることに疑問と怒りを抱いたことを思い出す。

 具体的には、独裁国家、北朝鮮の金一族、ロシアで宮殿に住んでいるというプーチン大統領、中国で支配層の中国共産党幹部たち、そして、米国と日本などで富を独占する一握りの富裕層。

 中野孝次『清貧の思想』(文春文庫)が90年代の日本で話題となったことがある。
 清貧という言葉で、大好きな作家乙川優三郎の『安穏河原』を思い出した。
 不器用な生き方が災いし、娘を女衒に売ってしまうほど貧すれど、人間としての誇りだけは失うなと娘に告げる浪人。その娘の子どももまた女郎だった母親から厳しく育てられ、空腹でも「おなかいっぱい」と施しをうけようとしない姿に涙が止まらなくなってしまうのだ。

 利権ばかり考え、反日反社の旧統一教会とズブズブの関係かつ、政治資金を裏金にしていた清貧とは縁のない政治家たち。
 死んであの世に持っていけるわけでもないのに富を独占する富裕層。
 世界は広い。
 ご冥福を祈りたい。
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