2025年04月27日

出自知る権利 憲法保障 生みの親 都に調査命令

 東京都立墨田産院で67年前、出生直後に別の赤ちゃんと取り違えられた都内の男性が、都に生みの親を特定する調査の実施を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。平井直也裁判長は「出自を知る権利は、個人の尊重を定めた憲法13条が保障する重要な法的利益だ」と述べ、都に調査するよう命じた。原告側によると、新生児の取り違えを巡り、病院側に調査を命じる判決は初めて。と4月22日の読売(糸魚川千尋記者)が伝えている。

 原告の 江蔵智さん(67)は1958年4月10日頃、墨田区の同産院(88年に閉院)で生まれたが、2004年にDNA鑑定で育ての両親と親子関係がないことが判明した。都を相手取って起こした訴訟で、東京高裁が06年、取り違えを認定。「重大な過失で人生を狂わせた」として計2000万円の賠償を都に命じた。

 その後、江蔵さんは都に生みの親の調査に協力するよう求めたが、都は「要望に応えられない」と拒否した。このため、21年に調査を求めて再提訴していた。

 厚生労働省やこども家庭庁は新生児の取り違えの件数を調査していないが、法医学者が1973年にまとめた論文では、江蔵さんが生まれた58年を含む57〜71年に、全国で少なくとも32件の取り違えがあったと報告されている。


 東京都の小池百合子知事は判決を受け入れ、控訴しないことを表明したことから、調査に協力するということで当然のことではある。裁判官も原告の気持ちをよく理解した判決を出したことは高く評価できる。
 
 2013年制作、是枝裕和監督、福山雅治主演『そして父になる』では、子どもを取り違えられた親子の葛藤を描いていたが、取り違えという表現では片づけられない重大な人権蹂躙であることに気づかされた。
 この物語では、6歳の入学前の時点で取り違えが判明した上に、取り違えの結果、二組の親子の交流が始まるということだった。

 原告の江蔵智さんは46歳の時、病院での診察をきっかけにDNA鑑定を行い、取り違えに気づいた。
 そうなると、実の親に会いたいとの気持ちが日に日に募ったそうな。
 さらに、映画とは異なり、取り違え先の相手のことは不明ということだから、実の親に一目でも会いたいと願う気持ちは人間いくつになっても抱くものだろう。

 人生を明らかに狂わせてしまうほど大きな問題が取り違え問題である。
 誰だって、自分を例にすれば江蔵さんの置かれた情況がよく理解できるはずだ。
 親子といえば、血族というくらいだから強い血のつながりがある。
 少し前、親ガチャなる言葉が流行ったことがあった。

 人は生まれてくるとき、親を選べない。裕福であるか貧乏であるか生まれた家の経済力も大きく影響する。
 取り違えでその立場が代わってしまうことだって起こり得るわけだ。

 DVや家庭内暴力男が父親で、取り違えがあったならと考えただけでぞっとする。

 ご先祖という言葉があるように人には歴史がある。
 取り違えは一方通行にはならないため、子の立場からみれば、取り違えられてよかったということにもならない。

 人は知らなければ知らないで過ぎ行くことだって、育ての親とは別に実の親がいると知ってしまえば、会いたくなるのは人情でもあろう。

 当事者にはなりたくない問題でる。
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