2025年03月22日

人間爆弾「桜花」初出撃で犠牲となった人々

 (カメラマン・ノンフィクション作家)神立尚紀「いまからちょうど80年前の今日、『無惨な失敗』に終わった人間爆弾『桜花』の初出撃の全容」という語り継ぐ戦争の立場から、興味深い記事を3月21日の現代ビジネスのWEBで見つけたので書いておく。

 いまからちょうど80年前の昭和20(1945)年3月21日午前10時――。
 鹿屋基地で、分隊長・三橋謙太郎大尉以下15名の桜花搭乗員と、野中五郎少佐以下、桜花の母機となる一式陸上攻撃機(一式陸攻)18機の搭乗員135名、それに護衛戦闘機隊の零戦搭乗員、整備員、兵器員などである。この日、索敵機からの敵機動部隊発見の一報を受け、第七二一海軍航空隊(七二一空。別名神雷部隊)の桜花特攻隊がはじめて出撃することになった。

 神雷部隊の桜花隊は、平野晃大尉、湯野川守正大尉、三橋謙太郎大尉、林冨士夫大尉の四個分隊に分かれ、母機の陸攻隊は、野中少佐が率いる攻撃第七一一飛行隊と、足立次郎少佐が率いる攻撃第七〇八飛行隊の二個飛行隊編成になっている。

 桜花は全長6.07メートル、全幅5メートル、全備重量2140キロ。頭部に1.2トンの爆薬を仕込んだ大型爆弾に、翼と操縦装置と3本の火薬ロケットをつけたような形をしていて、「人間爆弾」とも呼ばれる。目標の敵艦隊の近くまで母機の一式陸攻に懸吊され、敵に近づけば搭乗員が母機から桜花に乗り移り、母機から切り離されると滑空で、ときにはロケットを吹かせながら敵艦に体当たりする。ひとたび母機を離れれば絶対に生還不能な非情極まる兵器だった。ただ、「命中するまでは大切な命」。機体下面と操縦席の後ろには防弾鋼板が装備されている。


 というプロローグで、3月21日のお彼岸に桜花の乗務員たちは、特攻として母機と共に、護衛の戦闘機に守られ出撃するも、護衛の戦闘機がトラブルその他で予定数揃わなかった不運も重なり、母機共々戦死した詳しい状況が伝えられていた。

 特攻作戦で人間爆弾「桜花」を出撃させたのは宇垣纒中将で、現場では命令を受けた岡田指令が隊長に命じ、出撃した母機の指揮官は野中五郎少佐である。

 8月15日、宇垣は彗星に搭乗して17名の部下とともに沖縄に特攻し戦死したが、岡村は厚生省第二復員省に勤務していた1948年7月13日に自殺している。
 城山三郎『指揮官たちの特攻 幸福は花びらのごとく』(新潮文庫)では、特攻の責任者宇垣纒中将が敗戦後であるにもかかわらず、部下を道連れにしたその卑怯な振る舞いと同行を命じられた部下の中津留達雄大尉のことが描かれていた。
 母機の隊長である野中五郎少佐という名前で、もしや、陸軍の青年将校が起こしたクーデーター2・26事件の首謀者の一人で自決した野中四郎陸軍大尉の弟かと思ったら、彼は親しい人に兄の汚名を雪ぎたいと話していたらしい。

 ウクライナに侵略したロシアのプーチン、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム武装勢力ハマスがイスラエルの人を人質としたことからイスラエルのネタニヤフが軍事作戦を始めたことになっている中東。
 ただし、先般、観てきた『ノーアザーランド』でヨルダン川西岸で武力でパレスチナの人々の家や学校などを壊し、追い出して、自分たちの入植地にしようと企図するユダヤ人の侵略行為を知った今、ハマスのことを責めることなどできない。
 ただし、プーチンもネタニヤフもハマスのリーダーも自らは安全地帯にいて、部下に命令するだけだということを世界の人々はよく考えた方がいい。
 戦争では決まって市民が苦しめられる。
 リーダーが凶暴な悪魔だと侵略された側の市民が気の毒でならない。
 日本軍は人間爆弾なんて非情なことを考えたが、今はドローンなど無人機で攻撃する時代になった。それでもすぐに戦争を始める人間は進歩がない。
 戦争に反対だ。
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