階段状の岩壁(高さ約50メートル)に白いしぶきが舞い上がる。国指定名勝の三段壁(和歌山県白浜町)は、人生に行き詰まった人がたどり着く場でもある。
三段壁の看板には「重大な決断をするまえに一度是非ご相談ください」との言葉と、藤藪庸一牧師が理事長を務めるNPO法人「白浜レスキューネットワーク」に24時間つながる電話番号が記されている。スマホや財布を持っていない人のため、電話ボックスにはテレホンカードと10円玉が置かれている。
白浜バプテスト基督教会牧師・藤藪庸一(51)さん。藤藪さんが理事長を務めるNPO法人「白浜レスキューネットワーク」が三段壁に辿り着いた人からの「いのちの電話」として続ける取り組みだ。藤藪が携わって2024年4月で四半世紀。1000人以上の命と向き合ってきた。と6月3日の読売(古賀愛子、平野真由記者)が夕刊で伝えている。
白浜出身の藤藪さんは1999年、26歳の時に前任の牧師が始めた「いのちの電話」を引き継いだ。
「人と関わるのに必要なのは覚悟です」と話す藤藪さん。
「誰しもちょっとしたきっかけで気持ちが落ち込む。一度死にたいと思ったら、何かの拍子に、またその気持ちが過ってしまう。三段壁で出会った人に対し、最善を尽くしたい」という。
国内の自殺者数は2003年の3万4427人をピークに減少傾向にあったが、コロナ禍の20年に11年ぶりに増加した。緊急事態宣言などで人と人との接触を減らすことが求められ、社会不安も相まって、孤立や孤独を感じる人が増えたとみられる。23年は2万1837人となった。
偶然ではあるが、昨日6月5日、無縁遺体の引き取り手が減っているということを書いた。
生きているうちに手を打つことはできるが、だからと言って、自分がすぐ死ぬとは誰も思っていないので、準備できている人など数少ないだろう。
行政が相談に乗ってくれているところがあるにしても、死んだ後のことなど考えたくもないという人は、税金で合祀するしかないとは自分の考えである。
行旅死亡というのがあって、こちらは図書館に置いてある官報に載る。
自分は一時期、毎日のように官報の行旅死亡欄をチェックしたことがあるが、無常というのか大いに勉強になった。
文字通り、自殺者などがこれにあたるが、読売が取り上げていた無縁遺体は、アパートなどで独居の人が死に、縁者に連絡しても引き取りを拒否され、自治体が困っているということだ。
これに対し、白浜の三段壁の「いのちの電話」で自殺者に死ぬことを思いとどまらせてきた藤藪牧師の活動は自殺して行旅死亡とならないようにということだから、自殺者の最後のセーフティーネットの役割を果たしてきた。
以前、書いたことがあったはずであるが、キリスト教の牧師というのは世のため、人のためになることをやってくれている。偉い。
2023年の春、親族の30代の青年が自殺してしまったことを書いたが、身近に藤藪さんみたいな人がいてくれれば、彼も死なないで済んだかもしれない。と思えば、藤藪さんの活動が如何に優れたものであるか理解できる。
自分から死ぬことはないのである。人間は。
死にたくなくとも、お迎えが来れば、死ななければならない、
2024年06月06日
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