兵庫県尼崎市で5月18日、開催された講演。会場の壇上には2人の人が座っていた。いずれも事件で最愛の家族を亡くした遺族である。その中にいた男性は妹を殺害された遺族である。
2021年6月、大阪市北区でカラオケパブを経営していた妹(当時25)は店の常連客だった受刑者(58)に首や胸などを刃物で何度も突き刺され殺害された。遺族が賠償を受け取れない現状を5月19日の毎日放送MBSが伝えている。
男性は受刑者に対して「損害賠償命令制度」でやり場のない怒りへの償いを求めた。この制度は刑事裁判の有罪判決後に、手続きに関与した裁判官のもとで審理が行われるものである。裁判所は受刑者に約2980万円の賠償を命じた。
実際に判決が出てから約2年弱経つが、実際に払われているのは600万円のみ。
賠償命令制度は刑事裁判の有罪判決確定後でないと実施できない制度である。そのため、遺族自身が相手の資力や資産などを調べるにもすぐには動けないのが現状だ。
さらに判決から10年が経つと時効を迎えてしまうため、加害者側からの支払い義務がなくなってしまう。そのため被害者は、加害者の逃げ得を阻止するためにも、再び裁判を行う必要がある。
男性が所属する「犯罪被害補償を求める会」では国に対して賠償金の立て替え制度の創設を求めている。
「損害賠償命令制度」とは犯罪被害者が加害者からスムーズに損害賠償を受けられるように設けられた制度。
損害賠償命令を申し立てると、損害賠償請求の審理が刑事裁判と同じ裁判所によって行われるため、迅速な審理が期待できる。
異議の申し立てがあった場合、民事訴訟に移行するし、複雑な争点がある場合は適さないというデメリットがある。
さらに、損害賠償命令制度にしろ、民事訴訟による損害賠償請求訴訟にしても、被害者に高額な賠償金を支払う能力があることすら稀で、仮にあったとしても、なかなか支払ってもらえないことがほとんどである。
だから、国に賠償金の立て替えを被害者や遺族は求めている所以である。
犯罪の被害者になってしまう人と犯罪の被害者になることとは無縁の人とが世の中にはいる、
女性の場合、サイコパス予備軍の男に狙われたら、ストーカーなどで苦しめられた挙句、自分だけの被害でとどまらず、親が殺害されてしまう例など近年でも少なくない。
2021年10月に起きた甲府一家殺人放火事件のように狙われた娘と妹は助かったが、両親を殺され、家を放火されてしまった被害者遺族姉妹の行く末を考えるとき、国家なり自治体なりが損害賠償金を立て替えてやらなければ、娘二人、路頭に迷ってしまいそうだ。
加害者にカネがないことはわかっているから、賠償が難しく、そうなれば、親を殺されてしまった姉妹はどうすればいいのだ。
すぐに具体化させることは困難であったとしても、親が殺されてしまえば生活できなくなってしまうひとたちが現実にいるわけだから、救済措置を講じてやるべきである。
2024年05月21日
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