2024年03月17日

石綿作業2か月「労災」 47年後肺がんで死亡

 1970年にアスベスト(石綿)を使う作業に従事し、47年後に肺がんで死亡した男性(当時65歳)について、横須賀労働基準監督署が2023年3月に労災認定した。国は肺がんの場合の認定要件を「石綿にさらされた期間が10年以上などとするが、男性の作業期間は約2か月という異例の短さだった。と3月7日の読売が夕刊で伝えている。

 石綿は1970〜90年にかけて多く輸入され、2006年から製造や使用が禁止された。石綿を吸って疾病を発症するまでの潜伏期間は30〜50年とされる。

 労基署に意見書を提出するなど妻の労災申請を支援した「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の担当者は「『たばこが原因』と言われて労災認定を諦める人は多いが、石綿による労災の疑いがあれば気軽に相談してほしい」と話している。

 2023年12月13日のNHKWEBによれば、建物の解体作業に従事し、肺がんで死亡した81歳の男性がアスベストによるがんだったとして労災に認定されたことがわかった。男性は国の救済制度の申請が退けられていて、支援団体はその後、労災が認められたケースは異例だとしている。

 アスベスト被害の患者などの支援にあたる団体は13日、厚生労働省で記者会見を開き、40年近く建物の解体作業に従事し、2022年、81歳で死亡した都内の男性が労災に認定されたことを明らかにした。


 昨日、建設労働者の労働環境の改善に関して取り上げたが、建設労働者の多くが苦しめられたアスベスト(石綿)による公害病に関して、石綿作業に2か月従事し、47年後肺がんで死亡した男性が妻の労災申請が認められたことを伝えるニュースが流れた一方で、2023年の年末には、同じく肺がんで死亡した男性が国の救済制度の申請が退けられた後、労災が認められたことを伝えるニュースがあった。
 労災で救済されたニュースは悪くはないが、当事者にしてみれば、肺に疾患となればおそらく相当な苦しみだったにちがいない。
 苦しみながら亡くなった個人には気の毒なことだが、遺族にとってはいくらかなりとも生活の支援にはなるだろう。

 公害病といえば、水俣病を筆頭に患者の苦しみは想像を絶する。
 有機水銀による中毒のすさまじさは有機水銀が混じった工場廃液から魚を通じて胎児にまで及び、生まれてから重い荷物を背負わされて生きていかなければならない患者に対し、チッソや国、県などの関係者が患者の立場に寄り添っているとはとても思えない。

 同じ公害病であっても、アスベスト(石綿)は水俣病などとは異なり、製造工場周辺の住民が吸って苦しめられたことはあるが、主には建設現場や工場作業などでアスベストを使用した労働者が吸って肺に異常を来したわけで、労働者が一所懸命に働きながら、体を蝕んでいった労働災害であることに特色がある。

 水俣病、アスベストと何回となく書いてきたが、結局弱い立場の人間が苦しめられることになる構図は同じなのだ。

 お上が原因を突き止めて承知していながら、企業寄りで患者のことは後回しにしてきたこともいつの世も変わらない。

 国家権力は信用できないし、自分の行く末をあなた任せにしていると、語り継ぐ戦争での満蒙開拓団みたいなひどい目にあうことになってしまう。

 アスベストは水俣病と異なり、労働者の問題として労災という救済制度があったのはよかった。
posted by 遥か at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境問題・公害問題
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