2024年01月28日

ものづくりの道へ

 士農工商の時代から手に職というのが庶民の生きる道の一つとして考えられてきた。
 手に職ということでいえば、ものづくりがわが国の伝統工芸を生み、育ててきたと言っても過言ではない。
 そのものづくりでおもてなしをしているのが東京は葛飾の町工場で、職人技体験イベントを実施するということが、少し前の2023年の10月13日の読売で伝えられていた。

 多くの町工場を抱える「ものづくりの街」葛飾区。優れた技術で生産された製品は、様々な分野で高評価を得ている。その魅力を住民に紹介するイベントが10月28日に開かれるという案内である。
 2023年で5回目となる取り組みで、オープンファクトリーと呼ばれ、下町で徐々に広がっている。
 今回は区内の町工場で13種類の体験が用意された。

 その読売が9月27日の文化の紙面で「工芸の郷から」というタイトルで奈良県生駒市の「高山茶筌」を取り上げていた。
 茶道では必須の茶せんであるが、国内産のシェア約9割を誇る茶せんの産地・奈良県生駒市の高山町で茶せん師の谷村丹後さん(59)が茶せんを作っている様子と出来上がった茶せんが写真で紹介されている。
 「高山茶筌」の始まり室町時代中期とされる。
 この地域を治めていた鷹山頼栄の次男宗砌が、わび茶の祖村田珠光から茶を混ぜる道具を依頼された。鷹山家の没落後は家臣に伝承され、一子相伝で受け継いできた。


 ものづくりといえば、古の時代から伝承され、今日に至る伝統工芸品から、葛飾の町工場で作られている今の時代で使われる製品まで様々である。
 茶道文化の必需品茶せんは一般常識程度に裏千家の茶道の様式美を習ったことがある自分にとって、製作者はどうやってこれを作るのだろうかと考えさせられたほどの品物である。
 残念なのは、生まれ育ってきてから、毎日のように緑茶は必ず飲んでいても抹茶を頂戴する生活とは程遠かったかして、自宅で一服ということにはならなかった。
 文化というのは親の背中を見て受け継ぐ部分もあるだろうか、抹茶椀はそれなりに揃えてあるのだが、火鉢というかお湯を沸かすことが自分の部屋ではできないので、やらなければと思いつつ、なかなか実行できなかった。

 一方で、現代のものづくりといえば、町工場でということになるだろうが、そうなるとプラスチック製品の加工など便利な品物が製品としてつくられることになるのは需要と供給の原理から当然のことであろう。
 木とか竹、籐など自然素材を使ったものから伝統工芸品が作られることに対して、ステンレス製品にレーザーを使ってイニシャルを刻むなど町工場のものづくり現場で働く人たちの技術力が日本を下支えしているのだから、職人さんにはがんばってもらいたい。

 葛飾といえば、柴又の車寅次郎は、豆腐屋の手伝いをしていたとき、油にまみれて働く労働の価値について語っていたことがある。
 帝釈天の門前町で団子屋をやっているおじ、おばの店の隣の印刷工場で働く妹さくらの亭主ひろしの同僚たちが汗にまみれて働く姿にテキヤという口上でものを売り、額に汗して働く労働者に後ろめたささえ抱いている寅次郎はある意味正常な感覚の持ち主ではないか。

 米を作り、野菜を作る。洋服をつくる。家を作る。ものづくりに勤しむことの重要性から見れば、これらの人たちの収入を増やしていくような施策が待たれる。
posted by 遥か at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用
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