2023年10月26日

「非人道的」臓器売買に警鐘 読売 協会賞受賞

 新聞大会では、2023年度の新聞協会賞5件、新聞技術賞1件の授賞式も行われた。読売新聞東京本社からは、「『海外臓器売買・あっせん』を巡る一連のスクープ」が協会賞を受賞し、取材班代表の社会部・佐藤直信次長があいさつした。と10月19日の紙面で伝えている。

 今夏まで1年半以上にわたり、海外で臓器移植を受けた日本人患者や仲介団体の関係者を取材してきた。そして腎臓一つが約200万円だったこと、ドナー(臓器提供者)が経済的に困窮するウクライナ人女性だったことなど、少しずつ事実を明らかにしてきた。

 先進国の人が途上国で金銭を支払って臓器移植を受けることは、非人道的な臓器売買につながるとして国際的に強く批判されている。取材班はこうした事実を明るみに出して社会に警鐘を鳴らす意義は大きいと考え、2022年8月に最初の記事を出した。

 その後は、問題の背景にある国内の深刻なドナー不足、仲介団体の活動を長年野放しにしてきた法の不備について繰り返し報じてきた。2023年2月に警察が仲介団体を摘発したことで、法や制度の見直しに向けた議論が進んでいる。一連の報道からこうした動きを引き出せたことを誇らしく思う。
 

 少年を狙ってのことだろうと芸能界に疎い自分でさえ、悪だくみを察知していた芸能タレント事務所の創業者による少年相手の性暴力事件。事務所の創業者が繰り返し、性暴力を行ってきたことを知りながら、メディアは何も報道しなかった。
 週刊誌の文春砲は被害者北公次さんの証言を掲載し、糾弾する姿勢を見せていたが、追随するメディアは現れず、被害者が続出することになり、ついに、英国BBCに報道され、世界に恥をさらした日本の芸能界とメディア。
 読売も同罪である。
 しかし、戦前から読売を購読してきたわが家では、読売の「人生案内」をはじめ、プロ野球の長嶋、王の活躍、箱根駅伝、青森東京間駅伝、東京大阪間駅伝の記事を小学生の頃から読んでいたので、自分は読売が嫌いではなかった。
 安倍政権に批判的だった文科省の前川さんを陥れようと政府が企んだとき、政権に協力した報道をした政治部を滅茶苦茶に批判し、糾弾したこともあった。
 結果的に政権は身に覚えのない前川さんを陥れることはできなかった。

 読売の大阪社会部にいた大谷さんは舌鋒鋭く政権に対しても批判することで知られている。
 社会部は語り継ぐ戦争でもよく頑張ってアジア太平洋戦争の実相を伝えてくれているし、水俣病やハンセン病についても、被害者に寄り添った報道をしてくれている。
 記事に触発されて、書いていることが多いので感謝もしている。

 今回の、臓器移植報道に関しては、社会部はよくがんばった。
 臓器移植に関しては二つの大きな問題がある。
 一つはドナーが足りないことで、移植を待ち望んでいる人たちからすれば、海外であろうとカネで買えるなら買い求めてでも、臓器移植をしたい気持ちは理解できないものでもない。
 二つ目は、海外で臓器を手に入れるということはカネのために臓器を売る人から買うことになり、発展途上国や貧しい旧東側諸国の人などに対し、カネがあれば何でもありかと思わせることで、非人道的な行為とされることである。

 阪本順治監督『闇の子供たち』を観たとき、タイの裏社会で行われている幼児売春、人身売買、臓器密売の実態を知った。
 売春でエイズに罹患し、死ぬと黒いごみ袋に入れられて空き地で火葬されてしまう子どもがいた。
 そんな貧しい子どもたちの行きつく先は臓器売買である。

 語り継ぐ戦争では満州の関東軍731石井部隊の捕虜を使った人体実験が伝えられているが、人間の体に不要な臓器などあるわけがない。
 カネさえあれば、何をしてもいいことにはならない。

 やっていいことと、やってはいけないことがあるはずだ。
 このことを報道した読売の社会部はよくやったが、さらに、ドナーの提供者を増やすような報道を続けてもらいたい。
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