編集委員(古沢由紀子)が興味を持ったテーマを取材し、結果を取材帳というタイトルで伝えてくれる連載が読売の夕刊にある。その9月12日は藁を探しての1だった。
米の副産物であり、様々な日用品や祭礼に使われるなど農村の人々に身近な存在だった稲藁。
田んぼの肥料や燃料になる循環型資源としても注目されているが、農業人口の減少や機械化の進展で、今や「貴重品」になりつつある。
藁を切り口に、地域のつながりや手仕事などの継承、活性化に奮闘する人々を各地で取材した。
新潟県上越市の桑取谷でチェコ出身の淑徳大学教授郷堀ヨゼフさん(44)は10年ほど前から家族で昔ながらの米作りに携わっている。無農薬で栽培し、稲架で天日干しするのだ。
コンバインが普及した米作りは稲藁が裁断されてしまうが、ヨゼフさんらがコメ作りをする7アールの田は長い藁の貴重な「供給源」となっている。
この藁を使った地域の歳時のリーダー西横山小正月行事保存会の和瀬田仙二会長(83)は小正月用の長い藁の入手に苦労していたが、郷堀家の藁に多くを頼っているそうな。
2022年11月18日のNHKが宮城県石巻で稲藁といぐさを使った昔ながらの畳を製造している「和楽」佐々木正悦会長が畳製造のために集めた丈の長い藁をネットで販売したところ日本全国から注文があるとのこと。
納豆、歳時に、カツオの調理などが用途らしい。
取材帳の第1回は歳時に使うための藁の話だったが、それぞれの行事をつなぐ藁は土から生まれ、役割を終えれば土に還る。「私たちが失い、取り戻そうとしている循環型生活様式の象徴でもある」と郷堀ヨゼフさんはつぶやくのだ。
首都圏の田舎町に生まれ育ち、後期高齢者を目前にした今も住み続ける。
コロナ禍で中止になっていた氏神様の祭礼が10月1日に実行されるという通知が回覧されている。
歳時は続けることに意義があると思うが、田舎町も都市化されつつあり、五穀豊穣を祈願する祭礼をいつまで続けられることか。
というのは、もう米作りをするような人はいないし、畑だって、野菜を作っている人など数えるほどだからだ。
しかし、循環型生活様式の象徴である藁が土から生まれ土に還ることを想うとき、人間の生活の古き良き時代の産物である米の副産物である藁を活用した先人の智慧に頭が下がる。
米作りの副産物を歳時に使い、冬の間は筵やわらじを編んだりと、当然、畑でマルチ代わりに敷いていたものだ。
プラスチックの分別収集とリサイクルの項でも書いたが、有機無農薬で野菜作りを実践しているとき、マルチを使わない。除草と土の保温のためにマルチと呼ばれる黒いシートを畑に敷く生産者がほとんどであるにもかかわらず。。
人と同じことをやるのが大嫌いだから、マルチは使っていないが、代わりに藁を使いたいと思っているがその藁が手に入らない。
これを書いているとき、宮城県石巻の畳製造業の会社が販売していることがわかったので、金額によっては注文してみようかなと思った次第である。
子どもの頃、筵がわが家にあって使っていたが、便利な敷物だった。蒲簀という筵を二つ折りにした袋もあった。
循環型生活をもう一度見直してみたい。
2023年09月17日
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