「わたしのビタミン」というタイトルで社会で役立つことに取り組む人を紹介する読売の社会保障の紙面、その5月30日はケアリーバーの後輩支える農家目指す渡辺さとしさん(37)である。
生後間もなく都内の乳児院に預けられ、2歳から18歳まで児童養護施設「至誠学園」で過ごす。現在は有限会社「北斗産業」(北海道富良野市)の社員として、農業を学んでいる。と略歴が紹介されている。
施設や里親のもとを離れた「ケアリーバー」と呼ばれる若者を支えるのが目標だそうな。
18歳で施設を離れて大学に進学するも、学費は給付型奨学金を充てても、生活費を稼ぐため、夜遅くまで飲食店でのアルバイトだから授業についていけず、5年目で休学。復学はならず、応援してくれた施設の学園長や職員の気持ちに応えられず情けなかった。
でも、お世話になった人に恩返ししたいという一心で気持ちを入れ替え、仕事を探す。
農地に太陽光パネルを設置し、パネルの下で作物を育てながら発電する「ソーラーシェアリング」に感銘を受け農業の道へ。
2022年4月、7年間勤めた会社を辞めて、紹介してもらった農家の河原政之さんのもとで農業を学んでいる。
数年以内に独立を目指しているが、不安になり、施設の学園長に相談すると、「君は息子のような存在。何があっても支えるから」と励まされ、親みたいで安心できる。
生きていると様々な誘惑もあり、気持ちが落ち着かないこともあったが、大自然と向き合うとおおらかな気持ちで物事を捉えられるようになった。
これまでは支えられる側だったけれど、これからは支える側になりたい。という渡辺さんにエールをおくりたい。
加齢が原因か、もともとの気質なのか、近年、涙腺が弱くなってしまい、渡辺さとしさんのことを書いているうちにいつの間にか目頭が熱くなってしまった。
年齢的に自分の子どもの世代になる渡辺さん。
同じ30代だから、育った環境は大いに異なるが、大学を中退したところと農業に取り組むところが似ている長野でサバイバルナイフと猟銃で4人を殺害した男とつい比較してしまう。
警察官を撃ち殺すツールとなる猟銃を父親に買い与えられた所謂親ガチャ息子。
乳児院、児童養護施設で育ち、親の愛を知らない37歳。
どうしてこうまで人生が異なってしまうのか。
至誠学園といえば、福祉に関心のある向きなら知らない人はいないビッグネームになっている。
2012年10月にここの3代目の理事長高橋利一さん(当時73)のことを取り上げたことがある。子どもたちと寝食を共にしているとかで、この人なら、渡辺さとしさんの力になってくれるはずだ。
自分の息子に猟銃を買い与える父親。「ボッチ」という言葉に異常に反応し、家族以外とは孤立している青年。
農耕民族と狩猟民族は異なり、大地を愛し、農作物の生産に勤しむ人間は猟銃やサバイバルナイフなど持たないのが一般的である。
大学を中退しても、自分と同じ境遇のケアリーバーたち後輩の就職の受け皿になろうとしている渡辺さとしさんは立派である。
お世話になったから、今度は自分がお世話する側にという心根の優しさに落涙してしまう。
あんまり、無理しないで、ぼちぼち肩の力を抜いたほうがいいよ。というくらいのアドバイスくらいしかできないが、応援している人間がいることだけは伝えたい。
2023年06月02日
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