産業廃棄物のリサイクルを手がける石坂産業(埼玉県三芳町)は、環境教育を行う会社としても知られ、国内外から多くの人が見学に訪れる。読売の連載「LEADERS 経営者」に聞く(聞き手小川直樹記者)の7月29日は石坂産業代表取締役石坂典子さん(53)。
石坂産業の創業者で典子さんの父石坂好男さんの思いは「ごみをごみにしない」だ。この思いを継ぐのは私だと2002年社長に就任した。
地域から問題視された産廃の焼却施設は廃炉にし、外部に騒音や粉じんを出さなうよう屋内型の工場を建て、産廃の減量化、再資源化を行う事業構造の大転換を進めた。
すべての廃棄物が資源化する社会構造への変革に向けて種まきを続ける。
回収の仕組みは製品開発段階から考えることが秘訣だとも。
08年に工場見学通路を作ったのは、この仕事に価値があることを知ってもらうことが目的だった。
不法投棄されていた会社周辺の雑木林を豊かな里山に再生。「三富今昔村」と名付けた里山と工場見学者は年間6万人に上る。
生物多様性が回復し、子どもたちの環境教育ができる「体験の機会の場」に認定されている。
資源やエネルギーの循環に、オーガニックファームや里山を通じて土づくりもしているので、生態系の循環のことも話せる。
石坂産業は循環をデザインする会社。循環の重要性を語るだけでなく、業務を通じて社会や環境をより良い條rチアに再生していくリジェネラティブ・インフラストラクチャー(基盤)になろうとしている。
経営者の役割は「こういう社会を作りたい」という人を増やすことだ。その思いを受け取った次の担い手が社会実装し、その輪を広げていく。
毎日、生きていると食べなければならないし、食べたものが体を維持し、不用となったものは排せつされる。
家族がいてもいなくとも、要らなくなったものはごみとして廃棄する。
そのごみとされているものでも、分け方や見方を変えると資源となる。
家庭から出る生活ごみは一般廃棄物と呼ばれ、家庭と家庭以外からの事業系とに分けて収集、処分される。
家庭から出ても、日々の生活とは異なり、家の解体などで出てくるものは産業廃棄物として大別される。
祖父が昭和の初めに建てた土蔵があったが、理由あって解体してしまった。
解体業者が解体を始める前、池袋方面のアンテイックの品物を扱う業者が回収車2台でほとんどの品物を運び出し、持って行ってくれたのでごみはほとんど出なかった。
基礎コンクリートや柱は分別し、産廃として解体屋が運び出してくれた。
石坂さんの会社は品物の材質別に用途を絞り、リサイクル処分してくれる産廃受け入れの貴重な会社である。
産廃を受け入れてくれる会社がなければ、解体屋が困るし、発注者が困る。
「ごみをごみにしない」という創業者は流石先見の明がある人物だし、後継典子社長は、産廃の投棄場所にされていた雑木林を手入れし、里山として蘇られた。
産廃の工場と里山と見学してもらい、環境教育に資するとは見上げたものである。
感心しきりだったのは、回収の仕組みは、製品開発段階から考えるとの指摘だった。
原発の使用済み核燃料の処分場のことを考えることなく、原発を推進してきた電事連などはこの指摘をわが身に置き換えてもらいたい。
リーダーとして、尊敬できる。
エールをおくりたい。