2025年07月30日

『火垂るの墓』反戦の思いつなぐ

 「サヨナラは始まり 反戦の思いつなぐ」という見出しで高畑勲監督のアニメーション映画『火垂るの墓』のことを取り上げていた「広角/多角」という7月27日の読売のコラム(田中誠文化部次長)の記事に触発された。

 映画は「年齢や経験によって感じ方が変わる。子どもの頃から中高年になるまで、何度も見る価値が出てくる」とは高畑勲監督の長男耕助さんの父の作品について語っていた一言である。

 さらに、山口県下関市の柴口勲さんが、地元の梅光学院の中高生約40人と作った2016年の作品『隣人のゆくえ―あの夏の歌声』空襲で焼け野原となった下関の写真に着想を得た鎮魂のミュージカルだそうな。
 毎夏、東京は池袋のシネマ・ロサなどで上映されてきたが、22年に柴口監督が他界。自主配給上映に今夏をもって一区切りすることになった。
 「映画は終わってからが始まり」とは柴口監督の弁だと出演者の一人で、俳優福田麗さん(26)が明かす。「新たな何かが生まれる架け橋になれば」と願っていると福田さん。


 語り継ぐ戦争で、15年戦争、大東亜戦争、太平洋戦争、アジア太平洋戦争、第二次世界大戦、そして、先の大戦とその呼び名もそれぞれの立場で異なるが、父親が南方の戦地から帰国してから生まれた団塊の世代の一員としては、体験がない分、本や映画で学んだ戦争の実相について書いてきた。
 本は五味川純平『人間の條件』(三一書房)からの影響とこの原作がTVドラマ化され、映画化されている作品からも大いに影響を受けている。
 『火垂るの墓』は野坂昭如の原作は無論買い求めて読んでいるが、アニメーション映画には心を激しく揺さぶられた。
 学生時代はカネがなく、社会人になって、少しばかり経済的に余裕ができ、映画を観ることもできるようになったが、50代半ばを前に、病気治療を理由に退職して自由を手に入れてから、月に一度の映画館行きということで、ドキュメンタリー作品など娯楽映画ではない作品を中心に観てきた。
 招待で映画を観ているわけではないので、シニアとか夫婦50割だったかで観られるようになって金銭的にも有り難かった。

 『火垂るの墓』の兄の清太と妹の節子のことは自分の心の中では物語の人物ではなくなり、毎日、書き続け、発信している中でも実在の人物の如くよく登場している。

 戦争で親を亡くした子どもが生きていけるほど世の中甘くない。
 戦争の一番の犠牲者である弱者、その中でも、子どもたちにとってはどうすることもできないほどのしわ寄せが身に迫る。
 TVで『火垂るの墓』を放送してくれると決まって、泣きながら視聴してしまう。

 2011年の10月に神戸を訪れた。
「そして、神戸」の歌のように靴を投げ落としはしなかったものの、阪神淡路大震災からの復興の様子の一部を見届けたが、清太と節子の三宮にも行った。寂びれた神戸の駅とは異なり、賑やかな街だった。

 反戦映画の傑作だと断言できるが『火垂るの墓』の清太と節子の兄妹を現実に観ることがないように参議院議員選挙での右寄り勢力の台頭に対し、断固として、憲法の緊急事態条項反対、戦争反対を訴えていきたい。