2025年06月09日

徴用船 重油輸送「大明丸」魚雷に沈む

 アジア太平洋戦争では、国に徴用された民間船舶にも多大な犠牲が出た。約7000隻が沈没し、船員6万人余りが死亡したとされると5月25日の読売が戦後80年昭和百年の連載で伝えている。
 
 1944年11月3日未明、大阪商船(現商船三井)のタンカー「大明丸」(6723総d)がボルネオ島ミリの北西約350`を重油8000dを満載で航行中魚雷攻撃を受け沈抜した。
 
 新潟県村上市の農家の次男に生まれ、軍国教育を受けた大矢秀二さん(95)は、その時、赤道に近い海で暑さをしのぐため、甲板で寝転んでいたことから、沈みゆく船の船尾にようやくたどり着き、ボートを下ろし、縄梯子で乗り移るや、茫然と見守る目の前で大明丸は海中に姿を消した。

 5月14日、横須賀市観音崎公園にある「戦没船員の碑」で営まれた追悼式に参列した大矢さん。
 「戦争に行ったことを勇敢だと思ってほしくない。本当の勇敢さとは、戦争を止めることだった」と語る。

 「戦没した船と海員の資料館」(神戸市)によれば、国は、「戦時海運管理令」などに基づいて民間船舶と船員を徴用し、兵士や物資、燃料の輸送任務に充てた。


 アジア太平洋戦争敗戦から80年。
 父親が召集され、南方の島スマトラ島に派兵されるも、運よく帰国できたから生まれた団塊の世代の一員としては、親米派の自民党政権が米国の対中戦略に乗せられ、再び戦争に巻き込まれそうになっていることを危惧している。
 せっかく、戦争の勝者米国の肝いりでできた平和憲法である日本国憲法を改め、治安維持法同様の緊急事態条項、戦前、戦中でいえば、戒厳令の役割を果たす条項で米国の戦争に自衛隊を派兵させようと目論む保守派勢力の台頭が不安でならない。

 戦争といえば、アジア太平洋戦争の反省がきちんとなされてこなかったことから、再び、戦争への道を進もうとしているとしか思えない。

 靖国神社へのA級戦犯の合祀以降、戦争責任が揺らいでいる。
 学生時代、アメリカ帝国主義は張子の虎だと北京放送が流していたが、今や、その中国が帝国主義化し、覇権主義の大国として、米国と覇権を競っている。
 米国はその中国が台湾を統一しようとしていると危機を煽り、日本の自衛隊に中国との戦争をさせようと目論む。
 目を覚まさないといつの間にか戦争が始まってしまう。
 緊急事態条項を断固絶対阻止しなければ遠からず戦争に巻き込まれる。

 さて、アジア太平洋戦争を検証していくと、軍人だけが戦ったわけではないことに気づかされる。
 召集され民間人から兵士にされてしまった人たちが宇品港から南方に送られ、無事帰国できた人たちが宇品港に帰ってきた。
 その宇品港の暁部隊が兵站を担っていたことを先般取り上げた。

 兵站=糧秣などを運搬したのが徴用船であるが、民間の船を徴用するくらいだから、徴用船は警護も手薄だったことから、ことごとく沈められていくことになる。

 勝者の米国は、その辺り抜け目がないというか、調べがしっかりしていたから、兵站がたたかれてしまえば、戦争を継続することはむずかしくなってしまう。

 緊急事態条項を考えている議員は自分が戦争に行くわけではないから、米国の思惑に乗せられているが、自衛隊員とその家族にしたら大変なことだから、参議院議員選挙で投票をするとき、しっかり考えてもらいたい。

 徴用船の乗組員の立場に立てば、戦争になれば、いつ、同じ目に遭わないとも限らない。
 参議院議員選挙で戦争に巻き込まれない政党を選択する以外に道はない。