2025年05月19日

国内供給を放置して進む輸入米と輸出米の危うさ

 【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「国内供給を放置して進む輸入米と輸出米の危うさ」というタイトルで農業共済組合新聞JAcomが3月21日に伝えていた内容はやがて来る食料危機を示唆していて怖くなってしまった。
 
 備蓄米が放出されたが、市場の「不足感」は極めて大きい。この夏にかけて、不足感がさらに高まる可能性がある。「流通に問題が生じているだけでコメ供給は足りている」との説明には無理がある。

 根本的には、農家の赤字は放置し、減反要請を続け、一時金(手切れ金)だけ払うから田んぼは潰せ、と誘導して、コメが作れなくなってきたツケである。

 消費者にとっても、所得が減る中での急激な米価上昇は苦しい。今、農家にとっての適正米価と消費者にとっての適正米価が乖離している。農家に増産を促し、消費者は安く買えるようにし、米価が下がっても農家の所得が得られるように支援することでコメ市場は安定化できる。

 一方で、輸入米が増えている。米国が狙っている。前のトランプ政権で日本は「盗人に追い銭」で25%の自動車関税を許してほしいと牛肉と豚肉を差し出した。中国が米国との約束を反故にして宙に浮いた大量の余剰トウモロコシまで「尻拭い」で買わされた。

 前回の日米貿易協定の交渉時の記者会見で、日本政府は米国との今後の自動車関税の交渉にあたり、「自動車のために農産物をさらに差し出す」ことを認めている。目玉品目はコメと乳製品だ。これが進めば、日本のコメや酪農の崩壊が早まり、日本の飢餓のリスクが高まる。安易に輸入に頼る落とし穴にはまってはならない。

 一方で、コメ輸出を8倍に増やすという目標が発表された。輸出米の付けには4万円/10aの補助金が支給される。ならば、国内の主食米の生産に4万円/10aの補助金を支給して、国内生産の増加を誘導するのが明確な方向性である。

 しかも、輸出振興とセットで必ず出てくるのは、規模拡大してコストダウンして、スマート農業と輸出の増加で未来は明るい、という机上の空論だ。日本の農村地域を回れば、その土地条件から限界があることは明白だ。100haの経営で田んぼが400カ所くらいに分散するしているからだ。

 中山間地域は、全国の耕地面積の約4割、総農家数の約4割、農業産出額の約4割を占める。大規模化とスマート農業でカバーできる面積は限られている。中山間地域の耕地を守らなければ、日本各地のコミュニティが崩壊して大事な国土・環境と人々の暮らし、命は守れなくなる。

 地域の疲弊は続くから仕方ないのではなくて、それは無策の結果だ。政策を変更して未来を変えるのが政策の役割だ。集落営農で頑張っている地域もあるし、消費者と生産者が一体的にローカル自給圏をつくろうという「飢えるか、植えるか」運動も筆者のセミナーもきっかけに広がりつつある。まず、地域から自分たちの食と農と命を守る仕組みづくりを強化していこう。
 以上が要旨である。


 語り継ぐ戦争であるが、戦時中は無論の事、敗戦後も食糧難の時代を経験した人たちにとっては、コメ不足によるコメの価格高騰は他人事ではあるまい。
 コメの価格高騰は政府の減反政策が誤りだったからだと指摘する鈴木宣弘教授の話は説得力があり、かつ勉強になる。

 トランプ関税に関して、自動車産業を筆頭に経団連の代弁者みたいな自民党政府はなりふり構わず土下座外交をし、米国が要求する農産物としてコメと乳製品を筆頭に農産物を犠牲にすることで自動車産業など輸出企業を守ろうとしているように思えてならない。

 市民にとって一番大事なものは自動車ではない。当然、食料である。
 その食料のうちから、コメと乳製品を犠牲にすれば、この先どうなるか想像できるだろう。
 農家と酪農家にはダメージで、そこまで食糧危機がやってきているようなものである。

 語り継ぐ戦争では、東京裁判でA級戦犯だった岸信介元首相から安倍晋三元首相までの派閥は郵政民営化をした小泉純一郎元首相も含め、米国の手先のように思えてならない。
 現に、ほかのA級戦犯は裁かれたにもかかわらず、一人放免され、後に、日米安保、不平等条約として知られる日米地位協定に関わっているのも米国の意図があったようにみえる。
 郵政民営化して、ちっとも良いことなどなかったが、何か魂胆があったはずだ。

 コメの価格高騰が減反政策の失敗によるものと認めたくない農林水産省は流通のせいにしたり、備蓄米放出では農協のせいにしたりしている。
 郵政民営化の次は、農協つぶしを画策しているからで、狙いは農協が組合員の農家から集めたカネである。
 にもかかわらず、農協関係者は相も変わらず自民党支持だから嫌になってしまう。

 とにかく、食料危機が目に目えてきた以上、真剣に食料確保の問題に取り組む必要がある。
posted by 遥か at 18:08| Comment(0) | TrackBack(0) |