月に一度の映画館行き、5月は受刑者の更生をテーマにした『シンシン/SING SING』を観てきた。
ニューヨークで最重警備のシンシン刑務所で行われている収監者更生プログラム「RTA」の舞台演劇のグループの一員で、無実の罪で収監された男と収監者たちとの友情を描いた実話を映画化した作品である。
無実の罪で再審請求をしている男が収監者更生プログラムとはいうものの、収監者仲間たちと演劇に取り組むことで生きがいを見出している。
その演劇グループに、刑務所内でも恐れられているギャングの男が加わることになり、次の上演に向けて、演目選びから準備が始まる。
無実の男はギャングの男が出所できるように尽力したことで二人の間にはいつしか友情が芽生える。
しかし、自由を渇望する無実の男は古くから一緒に演劇に取り組んでいた仲間を病気で亡くし、ギャングの男の出所も決まると、一時絶望的になるが、仲間の支えで自分を取り戻すのだ。
刑務所では受刑者の更生ということに重きをおいている。
刑事政策の藤本哲也中央大学名誉教授の『犯罪学者のひとりごと』(日本加除出版株式会社)の22頁に受刑者の更生に役立つようにということで内観法が使われていることをとりあげている。
内観法とは、「自分を知る」ための方法として吉本伊信が開発した自己観察法である。
具体的には、父母、祖父母、兄弟、姉妹、配偶者というような身近な人に対する自分の行動を、
1.してもらったこと
2.して返したこと
3.迷惑をかけたこと
という3つの観点で小学校低学年から年代順に具体的なエピソードを思い出し、自分自身のことや身の回りの身近な人々との関係をありのままに見直す。
その最終目的は「どんな境遇になっても喜んで生きられる精神状態を身につける」ことだと解説しているのはWEBの奥武蔵内観研修所である。
収監者更生プログラム「RTA」の演劇もまた受刑者の更生ということでは効果がありそうだと思われる。
というのは、犯罪者が更生するためには、まず己がなしたことに反省がなければならない。反省するには内観法などで自分を見つめなおすことが欠かせない。
さらに、自由を拘束されているわけだから、自由になれるのは演劇の世界なら許されることで、演劇なら、非日常の世界ということだから、日ごろのストレスの発散ができるというものである。
役を演じるから役者というように、役を演じることで自分を見つめなおすことだって可能だ。
毎日、発信してきたのは「自由のため」である。
その自由を奪われ、拘束されているからには「自由」になった無実の男とギャングの男の再会のシーンは目に焼き付く光景である。