2025年04月21日

「人権」と「治安」の間で揺れる拘留と保釈

 刑事事件で起訴された被告の勾留を解き、判決前に拘置所の外に出す「保釈」。勾留が長引けば「人権侵害」と批判される一方、保釈した被告が逃走すれば罪に問えず、社会に不安を与える。「被告の人権」と「社会の平穏」の間で揺れ動いてきた歴史をひもとき、今後のあるべきかたちを考える。と4月13日の読売(糸魚川千尋記者)が解説の紙面で伝えている。

 「『人権』と『治安』揺れる司法」というタイトル、「法改正や凶悪事件背景に保釈率変化」、「自白強要の『人質』根強い批判」、「逃走防ぐGPS」という見出しで、「保釈率は時代の変遷とともに増減を繰り返してきたと保釈率の推移を1940年だから2023年までの時系列のような括りで解説し、人権問題に関心が高い自分としては大いに参考になる記事であった。


 法律で使われる言葉は一般的には難しい表現が少なくない。
 刑事事件だけではないので、犯罪と一口に括れないが、一般的に現行犯で逮捕されれば別にして、犯罪容疑で警察に逮捕された場合、取り調べを経て、検察庁に送られ、検事が裁判にかけるかどうか決める。
 裁判で判決が確定し、初めて有罪となるのだ。
 逮捕されただけでは、まだ有罪とはならない。

 実例を挙げて説明するとわかりやすいのではないか。
 逃亡者ことカルロス・ゴーンが日産のトップだった時、役員報酬過少記載事件や会社の資産を横領というか背任というか私物化した罪で逮捕起訴されたとき、拘留が長引いてなかなか保釈されないことに日本の司法に恐怖を覚えたのか。15億円の保証金でようやく保釈されると、その道のプロに依頼し、無断で出国、レバノンに逃亡した事件があった。
 逃亡することを予測している検察は、当然、簡単には保釈しないが、長期の拘留は人権問題を問われるため、裁判所は保釈保証金を担保のように納付させて保釈を認める。
 逃亡の恐れがある場合、保釈金もそれなりに高くなる。
 結果的に15億円が没収されたが、もっと多額の金を日産から奪っているから、15億円の保釈保証金はもともと自分のカネではなかったから痛くも痒くもなかったのだ。

 ところが殺人事件や不同意性交罪事件の容疑者が保釈されることはまず考えられない。
 何故なら、殺人や不同意性交などの犯罪は再犯の可能性が極めて高いことから、検察が起訴し、裁判が開かれることになったとしても、保釈したら、治安が維持できないからだ。

 「人権」と「治安」揺れる司法で一番の問題は、警察、検察が自白を強要するために人質として、自白を迫ることにある。
 司法の世界では人権が重要視されてこなかったのである。

 最後に、保釈された被告が逃走することを防ぐためGPSを活用することも23年に決定し、28年までに導入されることになっている。
 GPSを足に外せないように取り付けることは性犯罪者が仮釈放になったり、出所したらつけるということが議論になっているくらいで、居所が分かってしまうので、効果は期待できる。