農学分野での優れた研究を顕彰する第62回読売農学賞の受賞者7人が決まり、4月5日授賞式が東京大学で開かれると3月31日の読売が伝えている。
詳しいことは紙面に譲るとして、どうしても紹介しておきたい研究があったので書いておく。
東北大学教授北澤春樹さん(61)が「イムノバイオティクスの畜産応用基盤研究」と何が何だかさっぱりわからんという研究であるが、「乳酸菌で人も家畜も健康に」という見出しに目を奪われたというわけである。
発酵乳に含まれる様々な乳酸菌を調べたところ、ある菌株が生産する「多糖」と呼ばれる物質が、腸の免疫機能を活性化させていた。後年、共同研究する企業が多糖を生産する別の菌株を含む機能性ヨーグルトを商品化し、大ヒットとなった。
さらに、微生物が腸の免疫を調節する詳しい仕組みを調べたいと、豚に目をつけた。
豚の免疫機能を調節する有用な微生物を見つけることができれば、餌に混ぜて、薬に頼らず健康に育てることができるかもしれないと考えたそうな。
畜産業では、抗菌剤の過剰投与により、薬が効かない耐性菌の出現が問題となっていた。
長寿県の長野県長野市で生まれ育ち、小学校の卒業文集に「1000歳まで生きられる薬を開発する」と夢を綴った。
健康長寿に貢献するには身近な「食」が重要だと考え、東北大学農学部で乳酸菌研究に取り組んだ結果、受賞に至る。
40代早々、3か月入院して炎症性腸疾患クローン病だと診断された。
大腸ファイバーや小腸造影の検査の結果、小腸が狭隘になっている個所が数か所あり、結果、腸閉そくで2度入院している。
手術も考えたが、狭隘な部位をカットして小腸をつなぐことが上手くいくかやってみないとわからないので、怖気づいて手術は見送った。
病気が原因だろうが、若い頃は食べたものが排せつされるのに苦労は少なかったが、高齢者の仲間入りをしてから、加齢が理由だろうか、排せつが楽ではなくなってしまい、食べ物で何とかしようと考え、乳酸菌のヨーグルトを買い求めて食するようになっただけではなく、牛乳も1日に1パック飲む。
デイビッド・モントゴメリー、 アン・ビクレー、片岡夏実訳『土と内臓 微生物がつくる世界』(築地書館)を親族の薦めで読んだのは、有機無農薬での野菜作りを実践していることと、内臓の病気を抱えていることが理由だった。
有機無農薬だから、土づくりに拘りがあって、豚糞を肥料にしてきたが、動物の糞よりも植物性の方が同じ植物を育てるのには適しているかもということで、米糠、菜種油粕そして魚粉末を混ぜ、水を加えて手作りする所謂ぼかし肥料を併せて使うようになった。
TVで知ったことだが、飛騨高山の酪農家だったか、畜産農家だったかが、乳酸菌入りの飼料を食べさせたところ、牛舎が臭わなくなったというのだ。しかも、そこの牛糞で作った肥料は夜盗虫が食べるから野菜は無事生産できるというほどの優れモノだというではないか。
実際に使ってみたことがあり、肥料としては優れていた。
乳酸菌で人も家畜も健康になれるだけでなく、乳酸菌で牛舎や豚舎、そして鶏舎などが臭わなくなれば、一石二鳥であるが、北澤さんの研究にはこのことは触れられていないので、聞いてみたい。