2025年04月03日

ワンストップ支援センター 苦しい運営で自治体が支援

 31日にフジテレビの第三者委員会の調査結果が公表され、タレントの女子アナに対する性暴力が業務の延長線上にあったことだと認定された。結果的に組織ぐるみの性暴力事件であり、性暴力事件を起こしたタレントに対し、刑事事件で告発されていないことが間違った対応だったことを認める内容となっていた。

 被害者の女子アナをはじめ性暴力被害者の救援ということで、俄かに注目されているのが「ワンストップ支援センター」であり、しかも、センターの運営が苦しいことがわかった。
 
 全国にある性暴力被害者の救援拠点「ワンストップ支援センター」の先駆けとなった大阪の拠点に対し、大阪府が新年度から支援強化に乗り出す。人手や資金の確保が困難になり、存続の危機に直面したためだ。公的な援助はあるが、各地の拠点も苦しい運営を強いられており、どこでも等しく支援が受けられる体制を整えるには国などの更なる後押しが求められている。と3月29日の読売(岡田優香、島香奈恵記者)が解説の紙面で伝えている。

 性暴力被害者の心身の負担を抑えるため、包括的な支援を1か所で提供する救援拠点が「ワンストップ支援センター」である。医師が診察し、警察や弁護士、カウンセラーらにもつなぐ。
 大阪の拠点「性暴力救援センター大阪SACHICO(サチコ)」は2010年4月、府内の民間病院を拠点に創設された。
 13年にNPO法人化され、年間4000件近い相談に応じ、診察や性感染症検査、裁判を見据えた証拠採取などを担ってきた。
 医療スタッフの人件費などの財政負担などで苦しい運営を続けてきたが。府は2025年2月、支援強化を決定。
 公的事業に位置付けられたことで一歩前進ということになった。

 国はサチコをモデルに10年12月からワンストップ支援センターの設置を促し、18年までに全都道府県に設けられた。運営主体は自治体や民間団体など地域で異なり、現在は52か所。全国の相談件数は23年度6万9100件に上る。


 心身を深く傷つける性暴力は「魂の殺人」と言われている。

 70年代から80年代の頃、多田さよ子『小菊の悲願』(聖燈社)を買い求めて読んだことで影響を受けたのは人身売買に反対することだった。
 著者は廓の楼主の娘として生まれ育ち、基督教の影響からか、父親に人身売買である廓の経営を辞めてほしいと頼み、怒った父親から勘当されたということだった。

 爾来、売春に関する本を買い求めて読むうちに、上坪隆『水子の譜 引き揚げ孤児と犯された女たちの記録』(現代史出版会発行、徳間書店)を買い求めて読み、戦時中の満州でのソ連兵などからの性暴力で妊娠してしまった女性が引き揚げ後、中絶手術を余儀なくされたことを知り、衝撃を受け、性暴力をなくすように社会を変革することを考えるようになった。

 ということで、犯罪被害者支援を訴えることを立ち位置にし、犯罪被害のうちでも特に性暴力に関して発信することに力が入るようになった。

 性暴力といえば、刑法では、強姦罪が強制性交罪を経て、不同意性交罪になったように世の中の意識が明らかに変わった。

 2022年、米国で『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』が上映され、日本でも上映されたので観ているが、性暴力被害者がついに立ち上がり、強大な権力を持つ映画プロデューサーは失脚した。

 日本でも、プロダクションの創業者による少年たちへの性加害が英国BBCによって明らかにされ、プロダクションは世間からバッシングされたが、当事者は死んでいたので、責任追及することはできなかった。
 その性加害のプロダクションに在籍していた男によって、女子アナへの性暴力が明らかになると、この男の余罪が注目されることになった。

 人間のやることは変わらないが、時代は明らかに変わった。
 性暴力犯罪は明らかに許されない時代になったことで、泣き寝入りしていた人たちが勇気を振り絞って立ち上がれば、加害者を刑務所に送ったり、失脚させることができるのだ。

 性暴力被害者支援は犯罪被害者等基本法ができたからこそで、一つの法律が世の中を変えていく実例で、人身売買をなくすための売春防止法もその意味で制定されてよかった。