2025年04月10日

トランプ関税は貧富の格差是正に役立たず

 生まれる前からわが家で購読している読売の連載「人生案内」を小学生の頃から読んでいたが、読売には優れた連載があって、1面では有識者が時事について論評する「地球を読む」が連載中である。

 その4月6日は、吉川洋東大名誉教授がトランプ政権「終わり告げる「米国の世紀」という見出しで、トランプ関税で多くの国が巻き込まれ、米国の植民地の傀儡政権同様の自民党石破政権が「国難だ」などと動揺を隠せない有様であることに対し、「独り勝ち」のように世界経済をリードしてきた米国の問題は、経済全体の成長が不十分というよりも、作り出されたモノやサービスの分配があまりにも偏っていることだ。分配の偏りが生む社会の歪は極めて深刻である。
 貧富の格差と並行して、「健康格差」も拡大してきた。被害者ともいえる「白人貧困層」が憤るのは当然のことだ。
 こうした問題の解決策として、トランプ関税は何の役にも立たない。必要なのは政府・公的部門による所得再分配の強化であり、そのための税・社会保障改革である。
 しかし、トランプ政権はこれらの政策を目の敵にしている。
 実業家イーロン・マスク率いる「政府効率化省」は、連邦政府職員の大量解雇を進めている。
 対外援助を担う国際開発庁は税金の無駄遣いだとして業務停止に追い込まれている。

 この事態に対し、どう対処すべきななのか。
 任期中の4年間の短期的出来事と捉え、右往左往しない、取り乱さなことである。
 トランプ関税の影響を受ける世界の国々と協調し、共感を日本は大切にしていくことだ。と結ぶ。


 戦後80年、アジア太平洋戦争に敗れてこの間、米国の植民地同然の日本は、西部邁さんは保護領だとしていたが、江戸時代に黒船で恫喝されて開国以降、軍部が真珠湾攻撃をしたことを除けば、米国のご機嫌ばかり取っていた気がしてならない。

 語り継ぐ戦争で、反米という立場に立つようになってしまったが、日米安保と日米地位協定という不平等条約の改正すら米国に談判できない傀儡政権同様の自民党政権では日本をよくすることはできない。

 トランプ関税は日米の関係を見直すチャンス到来である。
 この際、米軍基地を日本からなくすか、さもなくば、東京の空の制空権を米軍から取り戻すなど勝手なことばかりしている米兵の自由を制限することを考えるべきだ。
 このことはれいわ新選組から参議院議員選挙に立候補伊勢崎賢治さんが指摘している。

 大事なことは、日米共通の貧富の格差是正である。
 税金が何のためにあるのか。原点に回帰すべきである。
 税金は所得の偏りを公的に再配分して是正するためであるから、高額所得者の納税額、それも金融商品など汗を流さないで所得の多い富裕層をターゲットに納税額を増やすことではないか。

 昔なら、革命が起きて当然なほどの貧富の格差がある米国。そのあとを追いかける日本。
 それを成しえないで、関税で貿易黒字になっても人々の暮らし向きはよくならない。
posted by 遥か at 15:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 貧困問題

2025年04月09日

実質賃金が上がらないのは大企業が利益を貯め込んだから

 4月6日のNHKまいあさラジオ「著者からの手紙」で『日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす』(ちくま新書)の著者河野龍太郎さんの話、実質賃金が上がらないのは大企業が利益を独り占めというか、本来、労働者に分配すべきところを貯め込んだからだという自分の考えと全く同じことを指摘していたので、書いておかなければならない。

 実質賃金といえば、すぐに労働生産性との関係が問題とされるが、米国ほどではないにしても、欧州よりは生産性が明らかに改善され、1998年からこの四半世紀で3割は上がっているが、実質賃金は横ばいとなっている。
 実質賃金が上がらないのは、労働生産性とは全く関係なく、収益を上げた大企業が貯め込んだからだと厳しくも、当然のことを指摘する経済評論家がいたことを知り嬉しくなってしまった。

 大企業が利益剰余金として内部留保を120兆円から600兆円もため込んできた。
 現在、賃上げがされるようにはなってきたが、物価が高騰しているため賃上げが追いついていない収奪的システム下という状況にある。

 銀行の不良債権問題が世間を騒がせたことがあったが、企業は経営上、自己資本を高めるため、コストカットとして、人件費の削減、定期昇給の凍結、正社員の非正規雇用化に取り組んだ。
 自己資本が積みあがって体力がついた後も、人件費の抑制が続いたからである。

 インバウンドブームを喜んではならない。賃金が上がらない私たちの労働力を切り売りしているだけのことだからだ。
 イノベーションは問題解決という見方は誤りである。
 イノベーションの悪影響を受ける人を救済する政策が求められている。
 一部の人に経済的恩恵が集中する収奪的制度の下では経済は成長できず、一国は衰退する。包摂的社会でなければ、繁栄できない。とアセモグルと共にノーベル賞を受賞したジェームズ・ロビンソンは警鐘を鳴らしている。


 今、世界で問われているのは、イデオロギーなどではなく、貧富の格差問題である。
 米国でトランプに投票した人たちは白人の貧しい人たちなどで、社会を変えてほしいとの願いからだとされている。
 愚かなのは見当違いだということがわかっていないことだ。
 トランプ関税でモノの値段が上がっても影響を受けないのは富裕層であり、貿易収支が黒字になったり、製造業が元気なっても、貧富の格差が天文学的に開いてしまった米国では大勢に影響がない。

 トランプ関税でおたおたしている日本政府は情けない。
 今こそ、内需拡大のため、一人10万円ずつ配るときだ。
 米国に行けば、安部、岸田という時の総理が米国からトウモロコシや役に立たないミサイルトマホークやすぐ墜落するオスプレイを買わされたようにまた脅されるだけだ。

 れいわ新選組の山本太郎代表は、米国に行くな。欧州などトランプ関税の被害者連盟を作って、一緒に対処すべきだと党首討論で発言している。

 やるべきは、非正規雇用を減らし、正規雇用を増やすこと。
 実質賃金を増やし、購買意欲を喚起し、景気低迷を打破することである。
 
 富の独り占めをすることはよくない。
posted by 遥か at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 雇用

2025年04月08日

戦艦大和水上特攻で3056人が戦死 「敗れて目覚める」ために死ぬ

 戦艦大和がアメリカ軍の攻撃を受け沈没してから7日で80年を迎え、呉市にある慰霊碑の前では追悼式が行われた。とメディアが伝えている。
 TSSテレビ新広島によれば、戦艦大和の追悼式には戦死した乗組員の遺族などおよそ300人が参列した。
 戦艦大和は沖縄に上陸したアメリカ軍に対抗するため、生きて帰ることが許されない「特攻」として出撃。
 アメリカ軍機の攻撃により鹿児島県沖で沈没し、3056人の乗組員が戦死した。

 呉市にある慰霊碑といえば、「碑を巡る」というタイトルで2月18日の読売が戦艦大和戦死者之碑として「海軍の象徴 戦争語り継ぐ」という見出しで取り上げていた。
 「大和ミュージアム(休館中)の館長戸高一成さん(76)は「世界最大の戦艦を用いず、敗戦を迎えたら海軍の面目が立たないということで特攻に踏み切った側面もある。海軍のメンツのために負けてもいいという形で多くの人の命を差し出した。日本海軍の汚点だと」断じている。
 4月6日、大和は駆逐艦などを従えて計10隻で沖縄へ向けて出撃し、翌7日、九州南西沖で米軍機の攻撃を受けて沈没。乗組員の約9割3056人が戦死し、生還者は276人だったとされる。

 同じ読売が4月6日、梅田明日佳の読書ノートで吉田満『戦艦大和ノ最期』を取り上げ、「犠牲強いる空気 今も」という見出しで、名著と評価の高いこの書籍に書かれていることを紹介している。
 大和の最期は、侵略に憑かれた旧日本軍転落の象徴だとし、「軍がこの戦いに投入した吉田のような学生は終戦後の日本を立て直すためのリーダーとなりうる人たちだった。この海戦で戦死した臼淵馨大尉は自分たちは日本が『敗れて目覚める』ために死ぬのだと若い士官らを慰めたが、人柱となることへの葛藤は想像を絶するものだ」と逝く人たちの気持ちを慮っている。


 語り継ぐ戦争、戦没者慰霊のための行脚であるが、戦争で犠牲となった人々のお陰で、戦後80年、つまり団塊の世代の一員としては、その人生のすべてで平和に暮らせたことを感謝し、全国の慰霊碑を周ってきた。
 アジア太平洋戦争に関心のない向きと異なり、自分は戦争について詳しく知っている方だろうと見ていたが、反省すべき点も少なくないことが分かった。

 人間魚雷「回天」のことを描いた『出口のない海』を見逃してしまったこと。
 人間爆弾「桜花」の慰霊碑がある鹿島にまだ行っていないこと。
 そして、戦艦大和の慰霊碑にお参りしていないことと、『戦艦大和ノ最期』を読んでいないこと。
 シベリア抑留から引き揚げてきた人と仕事で接点があったにもかかわらず、若かったから、話を聞くことができなかったこと。
 など、反省というか悔いていて、死ぬまでに実現させたいと念じている。

 戦艦大和といえば、戦艦大和のスクリューだったかの製造に関わった技術者が親族にいて、東京青梅にある老人ホーム慶友病院に入所していたので訪ねたことがある。
 語り継ぐ戦争だから、戦艦大和のことやら戦争のことを聞かせてくれるということだったが、訪ねたら、墓場まで持っていく云々で聞かせてはくれなかった。
 その後、100歳くらいだったかで旅立ってしまった。

 戦艦大和ミュージアムの館長が水上特攻は、海軍のメンツのために多くの人の命を差し出した。
 臼淵馨大尉が自分たちは日本が敗れて目覚めるために死ぬのだ。と差し出された命の重さを思うとき、命令する側は戦後もおめおめと生き残っていることに憤りを抱く。

 一つの戦艦で3056人が犠牲となったことに対し、死者に改めて供養の祈りを捧げたい。

2025年04月07日

令和の百姓一揆 農政の抜本的な転換で食を守れ

 3月30日、全国各地で一斉に行われた農家や酪農家による「令和の百姓一揆」。花冷えの東京でも約30台のトラクター行進が繰り広げられ渋谷や原宿を快走した。コメの品薄や価格高に消費者の不安が高まる中、農村では離農が進み、食を守るには農政の抜本的な転換が必要と訴える。デモに集まった人々の思いを聞いた。と4月5日の東京新聞のWEB(木原育子、山田祐一郎、山田雄之)が伝えている。

 コメの価格高が注目される中、近年の飼料肥料の高騰、異常気象にも見舞われる生産者の苦境を訴えようと、農家や市民の有志でつくる実行委員会が行った「令和の百姓一揆」。この日は14都道府県で一斉に実施され、都内では沿道含め約4500人(主催者発表)が参加。渋谷や原宿が一時騒然となった。
 実行委員長の菅野芳秀さんは、参加した農家らに団結を求め、農家への支援を訴えた。

 農業白書によると、日本で農業を主な仕事にする「基幹的農業従事者」の数は2023年で約116万人と2000年の約240万人から半減した。23年度の食料自給率はカロリーベースで38%。百姓一揆は農家への所得補償の拡充や食料自給率の向上を目標に掲げた。

 「令和の百姓一揆」の解散後、明治記念館(港区)で活動や今後の方針を話し合う「寄り合い」が開かれ、約200人が参加した。
 運動の事務局を担った山田正彦元農相が「農業は採算が取れず、直接支払いの所得補償があって農家は安心して農産物を提供できる。消費者が知った上で支援できることが重要だ」と一揆の意義を強調。今後も組織的、継続的に活動していくことを確認した。

 農林水産省によると、2022年の米農家など1経営体当たりの作物収入などは378万3000円で肥料代などの経費を除くと、手元に残る所得は1万円。平均労働時間で割ると「時給10円」となる。単純換算だが、米農家の低所得を象徴する数字とされてきた。


 毎日、TVやラジオのNHKと永く購読している読売の新聞記事で世の中の出来事を把握しているが、インターネット、YouTubeも視聴しているのは、TVや新聞が恣意的に伝えないニュースがあるからだ。

 例えば、プロダクションの創業者による少年への性加害事件。惜しまれつつも病には勝てなかった森卓さんこと森永卓郎さんの『ザイム真理教』の購読部数が伸びていること。日航機123便が自衛隊によって墜落させられたこと。財務省解体デモ。フジTVの女子アナ性接待とタレントの性暴力事件。そして、令和の百姓一揆である。

 因みに、令和の百姓一揆について、NHKも読売も伝えていなかったのではないかと思うのは、この事実を知ったのは遅く、調べたら東京新聞が伝えていたというわけだ。

 食料自給率の低さから、日本の食の安全保障について何回となく発信してきたし、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)という経済連携協定の不透明さに反対運動に加わっていたこともあるくらい、食の自給自足については真剣に考えてきた。
 自民党、公明党政権の減反政策が原因でとうとう令和の米騒動が勃発した。
 ところが、令和の百姓一揆で東京新聞の記者が取材したところ、パンを食べ野菜も食べないから関係ないという趣旨のコメントをした女性がいたことがわかった。

 どこまでも愚かな人間は、飢餓になったら、自分の体を投げ出してでも食料を求めるようになることがわかっていない。
 
 小麦なんて、生産国が輸出を止めれば、パンは米粉でしかつくれない。そうなれば、米不足では困ることさえ理解していない。

 語り継ぐ戦争だから、敗戦後の大都会東京では星の流れに身を占って、鬼畜と呼んでいた米兵に身を売り、食料を手に入れる女性たちが後を絶たなかったではないか。

 米国のトランプ大統領が米国のご都合主義で友好国とされてきた日本にも例外なく追加関税をかけることを発表した。
 貧富の格差に怒った米国の貧しき有権者たちは、その状況を変えてほしくて愚かにもトランプ大統領を選んだ。
 トランプ大統領は貧富の格差を是正するつもりなど全くなくて、米国で輸入する品物に関税をかけることで米国が豊かになるなどと貧しき人たちを欺いている。
 
 一時的貿易収入は増えるだろうが、貧しき人たちに還元されるなんてことがあるわけがないことくらいどうして理解できないのだろうか。

 日本も同様、大きな社会問題となっているのは貧富の格差拡大と食料の確保である。

 農家を守ることは市民の暮らしを守ることに直結している。
 農家に所得補償というか補助金を出して、食料の生産を続けてもらえるようにしなければならない。

 食料が不足して困るのは市民である。
posted by 遥か at 09:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 農業、林業振興

2025年04月06日

アルコール依存 断酒の42歳 経験伝える

 アルコール依存症や生活習慣になるリスクが潜んでいる多量の飲酒。依存症で苦しんだ女性が啓発イベントなどで経験を語っている。助けを求める相手がいなかった自分を振り返り、「一人で悩まずに誰かに相談を」と呼びかけている。3月26日の読売(山田佳代記者)が夕刊で伝えていた。
 
 アルコールやギャンブル依存症の人の社会復帰を支援する一般社団法人「オンブレ・ジャパン」で体験を語るのは非常勤職員の後藤早苗さん(42)である。

 アルコール依存症は全国に54万人と推計される。当事者が認めたがらないため、「否認の病」と言われ、適切な治療や支援につながりにくい。

 厚労省は、アルコール依存症や生活習慣病のリスクを知るために、自身の飲酒習慣を客観的に把握するように勧めている。
 飲酒によって仕事や日常生活に支障が出ているなど不安がある場合、保健所や各都道府県の精神保健福祉センターが相談に応じる。


 自分の一番大事な宝物かつ生命線である連れ合いがビール大好き人間の一人で、アルコール依存症の予備軍ではないかと心配しているから、今回は連れ合いのために書いているようなものだ。

 連れ合いの両親は越後は妙高の出身で、父親は40代後半で病死しているが、酒が好きだったようで、母親は別にして、一族皆酒好きだから無理もないが、映画を観に行くと、昼食の時、決まってビールを飲むし、少し前のことになるが、ビールを飲みながら夕飯の支度をしていたから、流石に、キッチンドリンカーではアルコール依存症ではないかと心配になり、忠告したら、夕方はノンアルコールのビールにしている。

 連れ合いが缶ビールを愛飲するため、町会の資源回収では、アルミ缶回収で大きく貢献している。
 「ビールではアルコール依存症にはならない」とは連れ合いの弁であるが、真偽のほどはわからない。

 久里浜にアルコール依存症を治療する施設があって、もう20年以上前に見学したことがある。
 久里浜で思い出したのは、職場で好感の持てる後輩がいて、酒焼けするほど酒好きな彼が久里浜に入所する前日だったか、箪笥の取っ手だったかで首を括ってしまったことを思い出した。
 学生時代、落研に所属していたとかで、芸名まで持っていた。
 通夜、葬儀には失礼したが、後日、線香を手向けにお邪魔したら、母親の何とも言えない姿と接して、親より先に逝くのは親不孝だなと思ったのと同時に、アルコール依存症の怖さを痛感したことを思い出した。

 アルコール依存症に限らないが、薬物、ギャンブルなどの依存症は一人ではどうにもならない。
 アルコホーリクス・アノニマス(AA)があるように、自らの心をさらけ出して、告白し、共に闘うことで、いくらかなりとも前進できるのである。
 犯罪の抑止力が、自分の大事な人を裏切らないことであり、アルコール依存も同じように大事な人を裏切れないと思えれば前進できるはずである。

2025年04月05日

東京で赤ちゃんポスト運用開始、熊本に次いで2例目

 育てられない子どもを匿名で預かるいわゆる「赤ちゃんポスト」の設置に向けて準備を進めてきた東京・墨田区の社会福祉法人が会見を開き、「賛育会病院」できょう(31日)午後から運用を始めた。
また、妊婦が医療機関以外に身元を明かさずに出産する「内密出産」も同時に開始し、いずれも、熊本市の慈恵病院に続いて全国で2例目となる。と31日のNHKが伝えている。

 「ベビーバスケット」というネーミング。生後4週間以内の新生児が対象で、病院は赤ちゃんを保護したあと一定期間預かり、その後は、児童相談所が中心となって乳児院や里親につなぐ。

 4月1日の読売によれば「いのちのバスケット」となっているが、どちらにしても赤ちゃんポストよりは佳い。
 赤ちゃんポストは2007年に運用を始め、24年3月末で179人が預けられた。
 内密出産では21年12月からの3年間で約40人が生まれた。


 性暴力被害者の救援拠点「ワンストップ支援センター」の運営が苦しいということを書いたとき、犯罪被害者支援を訴える自分の立ち位置や、なぜ、性暴力を憎み、人身売買である管理売春に反対するのかについても詳しく書いた。
 育てられない子どもを匿名で預かる所謂「赤ちゃんポスト」のことも何回となく取り上げてきたのは、上述の考え方の延長線上にあるのが保護される乳児たちではないかとみているからだ。

 亭主がありながら、たった一度の過ちで妊娠してしまい、離婚され、母子で生きている女性とおつきあいがあったことがある。
 賢いとは言い難いが、それでも、子殺し、子捨てをしないで父親の知れない子どもを育てているのだから、まあいいじゃないか。と応援していた。
 そもそも子どもに罪があるでなし、親が育てられなければ社会が育てればいいだけのことである。

 中学生の妊娠を取り上げたのは『3年B組金八先生』だったと記憶するが、現実は中高生や女子大生、未婚女性で妊娠してしまい、父親である男が逃亡し、出産しても育てられないからと子どもを手にかけてしまうことが後を絶たない。
 そんな女性の駆け込み寺否赤ちゃんポストが熊本にしかなかったことが問題だと考えていた。
 カネがない女性たちがそもそも熊本までの交通費が用意できるわけがない。

 というわけで、東京墨田区に赤ちゃんポストができるかもしれないということを耳にした時、早く開設してもらいたいと強く願っていた。

 犯罪被害者支援を訴えてきた立場であるから、妊娠して男に捨てられた、あるいは男が逃亡したという女性たちが子捨て、子殺しをしたからと言って誰が責められようか。
 悪いのは原因者の男たちである。この男たちを捕まえないで、母親だけに法的な責任を押し付けることはできない。
 ということで、人口が最も多い大都会東京に赤ちゃんポスト「いのちのバスケット」が開設されたことを喜んでいる。
 ㏚をしっかりして、子殺し、遺棄などの犯罪が少しでも減るようにしていくことが求められる。
 
 妊婦が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」の受け入れも始めたというから、事を内密に済ませたい女性には福音であろう。

 母子の絆の強さから、将来、親子の名乗りを上げられる可能性があるとなれば、頼る女性も少なくないのではないか。

 人は皆、それぞれ人には言えない事情を抱えて生きている。
 仕方のないことで、犯罪者にさせないことの方がよほど、世のため、人のためである。

2025年04月04日

乳酸菌で人も家畜も健康に

 農学分野での優れた研究を顕彰する第62回読売農学賞の受賞者7人が決まり、4月5日授賞式が東京大学で開かれると3月31日の読売が伝えている。
 詳しいことは紙面に譲るとして、どうしても紹介しておきたい研究があったので書いておく。

 東北大学教授北澤春樹さん(61)が「イムノバイオティクスの畜産応用基盤研究」と何が何だかさっぱりわからんという研究であるが、「乳酸菌で人も家畜も健康に」という見出しに目を奪われたというわけである。

 発酵乳に含まれる様々な乳酸菌を調べたところ、ある菌株が生産する「多糖」と呼ばれる物質が、腸の免疫機能を活性化させていた。後年、共同研究する企業が多糖を生産する別の菌株を含む機能性ヨーグルトを商品化し、大ヒットとなった。 
 さらに、微生物が腸の免疫を調節する詳しい仕組みを調べたいと、豚に目をつけた。
 豚の免疫機能を調節する有用な微生物を見つけることができれば、餌に混ぜて、薬に頼らず健康に育てることができるかもしれないと考えたそうな。
 畜産業では、抗菌剤の過剰投与により、薬が効かない耐性菌の出現が問題となっていた。

 長寿県の長野県長野市で生まれ育ち、小学校の卒業文集に「1000歳まで生きられる薬を開発する」と夢を綴った。
 健康長寿に貢献するには身近な「食」が重要だと考え、東北大学農学部で乳酸菌研究に取り組んだ結果、受賞に至る。


 40代早々、3か月入院して炎症性腸疾患クローン病だと診断された。
 大腸ファイバーや小腸造影の検査の結果、小腸が狭隘になっている個所が数か所あり、結果、腸閉そくで2度入院している。
 手術も考えたが、狭隘な部位をカットして小腸をつなぐことが上手くいくかやってみないとわからないので、怖気づいて手術は見送った。
 病気が原因だろうが、若い頃は食べたものが排せつされるのに苦労は少なかったが、高齢者の仲間入りをしてから、加齢が理由だろうか、排せつが楽ではなくなってしまい、食べ物で何とかしようと考え、乳酸菌のヨーグルトを買い求めて食するようになっただけではなく、牛乳も1日に1パック飲む。

 デイビッド・モントゴメリー、 アン・ビクレー、片岡夏実訳『土と内臓 微生物がつくる世界』(築地書館)を親族の薦めで読んだのは、有機無農薬での野菜作りを実践していることと、内臓の病気を抱えていることが理由だった。
 有機無農薬だから、土づくりに拘りがあって、豚糞を肥料にしてきたが、動物の糞よりも植物性の方が同じ植物を育てるのには適しているかもということで、米糠、菜種油粕そして魚粉末を混ぜ、水を加えて手作りする所謂ぼかし肥料を併せて使うようになった。

 TVで知ったことだが、飛騨高山の酪農家だったか、畜産農家だったかが、乳酸菌入りの飼料を食べさせたところ、牛舎が臭わなくなったというのだ。しかも、そこの牛糞で作った肥料は夜盗虫が食べるから野菜は無事生産できるというほどの優れモノだというではないか。
 実際に使ってみたことがあり、肥料としては優れていた。

 乳酸菌で人も家畜も健康になれるだけでなく、乳酸菌で牛舎や豚舎、そして鶏舎などが臭わなくなれば、一石二鳥であるが、北澤さんの研究にはこのことは触れられていないので、聞いてみたい。
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2025年04月03日

ワンストップ支援センター 苦しい運営で自治体が支援

 31日にフジテレビの第三者委員会の調査結果が公表され、タレントの女子アナに対する性暴力が業務の延長線上にあったことだと認定された。結果的に組織ぐるみの性暴力事件であり、性暴力事件を起こしたタレントに対し、刑事事件で告発されていないことが間違った対応だったことを認める内容となっていた。

 被害者の女子アナをはじめ性暴力被害者の救援ということで、俄かに注目されているのが「ワンストップ支援センター」であり、しかも、センターの運営が苦しいことがわかった。
 
 全国にある性暴力被害者の救援拠点「ワンストップ支援センター」の先駆けとなった大阪の拠点に対し、大阪府が新年度から支援強化に乗り出す。人手や資金の確保が困難になり、存続の危機に直面したためだ。公的な援助はあるが、各地の拠点も苦しい運営を強いられており、どこでも等しく支援が受けられる体制を整えるには国などの更なる後押しが求められている。と3月29日の読売(岡田優香、島香奈恵記者)が解説の紙面で伝えている。

 性暴力被害者の心身の負担を抑えるため、包括的な支援を1か所で提供する救援拠点が「ワンストップ支援センター」である。医師が診察し、警察や弁護士、カウンセラーらにもつなぐ。
 大阪の拠点「性暴力救援センター大阪SACHICO(サチコ)」は2010年4月、府内の民間病院を拠点に創設された。
 13年にNPO法人化され、年間4000件近い相談に応じ、診察や性感染症検査、裁判を見据えた証拠採取などを担ってきた。
 医療スタッフの人件費などの財政負担などで苦しい運営を続けてきたが。府は2025年2月、支援強化を決定。
 公的事業に位置付けられたことで一歩前進ということになった。

 国はサチコをモデルに10年12月からワンストップ支援センターの設置を促し、18年までに全都道府県に設けられた。運営主体は自治体や民間団体など地域で異なり、現在は52か所。全国の相談件数は23年度6万9100件に上る。


 心身を深く傷つける性暴力は「魂の殺人」と言われている。

 70年代から80年代の頃、多田さよ子『小菊の悲願』(聖燈社)を買い求めて読んだことで影響を受けたのは人身売買に反対することだった。
 著者は廓の楼主の娘として生まれ育ち、基督教の影響からか、父親に人身売買である廓の経営を辞めてほしいと頼み、怒った父親から勘当されたということだった。

 爾来、売春に関する本を買い求めて読むうちに、上坪隆『水子の譜 引き揚げ孤児と犯された女たちの記録』(現代史出版会発行、徳間書店)を買い求めて読み、戦時中の満州でのソ連兵などからの性暴力で妊娠してしまった女性が引き揚げ後、中絶手術を余儀なくされたことを知り、衝撃を受け、性暴力をなくすように社会を変革することを考えるようになった。

 ということで、犯罪被害者支援を訴えることを立ち位置にし、犯罪被害のうちでも特に性暴力に関して発信することに力が入るようになった。

 性暴力といえば、刑法では、強姦罪が強制性交罪を経て、不同意性交罪になったように世の中の意識が明らかに変わった。

 2022年、米国で『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』が上映され、日本でも上映されたので観ているが、性暴力被害者がついに立ち上がり、強大な権力を持つ映画プロデューサーは失脚した。

 日本でも、プロダクションの創業者による少年たちへの性加害が英国BBCによって明らかにされ、プロダクションは世間からバッシングされたが、当事者は死んでいたので、責任追及することはできなかった。
 その性加害のプロダクションに在籍していた男によって、女子アナへの性暴力が明らかになると、この男の余罪が注目されることになった。

 人間のやることは変わらないが、時代は明らかに変わった。
 性暴力犯罪は明らかに許されない時代になったことで、泣き寝入りしていた人たちが勇気を振り絞って立ち上がれば、加害者を刑務所に送ったり、失脚させることができるのだ。

 性暴力被害者支援は犯罪被害者等基本法ができたからこそで、一つの法律が世の中を変えていく実例で、人身売買をなくすための売春防止法もその意味で制定されてよかった。

2025年04月02日

フジTV第三者委員会女子アナへの性暴力を認定

 元タレントの中居正広氏の元女性アナとのトラブルを巡る一連の問題について調査していたフジ・メディア・ホールディングス(HD)とフジテレビの第三者委員会が31日に公表し、両者の関係性については、両者の権力格差、フジテレビにおけるタレントと社員の会食を巡る業務実態などから、本事案はフジテレビの「業務の延長線上」における性暴力であったと認められる、としている。とメディアが伝えている。

 テレビ朝日などが伝えるところによれば、編成局長B氏やフジテレビ社員が関与した事実は認められなかったとしたうえで、2日前に行われたバーベキューの会を踏まえてAさんが「同種の会合」と認識したことに影響があると指摘している。

 また、トラブル発覚後のB氏らの対応について、B氏らは中居氏の依頼を受け、中居氏に代わって見舞金名目で現金100万円をAさんの入院先に届けたことがAさんに対する口封じ、二次加害行為と評価した。

 また、B氏が中居氏にAさんの退社を伝えると、中居氏からショートメールで「了解、ありがとう。ひと段落ついた感じかな」「色々たすかったよ」と返信があり、B氏が「ひき続き、何かお役に立てることがあれば、動きます」と返信していたことが分かった。

 第三者委員会の報告書では、BSフジの報道番組のキャスターで3月27日にフジテレビの取締役を退任した幹部によるハラスメントの事案も認定されている。


 いつの時代も変わらないのは人間である。
 弱いものが虐められ、女性の場合は性暴力、セクシャルハラスメントを受けても泣き寝入りするというのがお定まりのことだった。
 本多勝一『殺される側の論理』(朝日新聞社)の単行本を買い求めて読んだことがある。
 人間を殺す側と殺される側に視たてる。つまり、される側に立ってみるとフジの女子アナの気持ちが理解できるのではないか。
 売れっ子だったタレントとTV局に雇用されている女子アナとの権力差は天と地ほどの開きがあり、しかも、タレントには職場の上司がついて、ご機嫌取りをしているのだ。
 
 ところが、時代は明らかに変わっていることに売れっ子だから傲慢になっていたタレントは気づかず、女子アナは自分の思いどおりになるものだと考えていたのであろうよ。(鬼平の口調になってしまった)

 ジャニーズ事務所の創業者の性加害を知っていながら、日本のマスメディアは報道することがなかった。
 この事務所に所属していたタレントは創業者の性加害を見て、権力者は何をしても許されると誤解していたのではないか。
 ここに登場したのがいつものことながら、悪いことは悪いという異国の放送局である。
 英国BBCが少年たちに対する性加害を告発したことから、日本のマスメディアがようやく重い腰を上げたのである。

 するとどうだろう。
 加害当事者はすでに死人に口なしであったが、事務所は世間からバッシングを受けた。ところが、このタレントはうまく逃れ、一人TVに出演してカネを稼いでいた。

 フジテレビが局アナで性接待ということで報じられたが、結果は業務の延長戦上の性暴力だと認定されたのだから、事実上の性接待と指摘されてもあながち間違いではあるまい。

 世の中、そんなに甘くない。
 
 当初、うやむやで逃げられると踏んだ当時のトップは外国の株主からの申し入れで思い通りにはならなかった。
 陰で天皇などと呼ばれていた権力者、大学の理事長が脱税で捕まったし、少年に性加害をし続けてきたプロダクションの創業者は逮捕されることはなかったが、その恥ずかしい犯罪で汚名は語り継がれていく。
 フジテレビの最高権力者として長く君臨していた人も退任した。
 報道番組でキャスターの態度が大きくて、陰でパワハラやセクハラをしているだろうと見ていたら、処分されることになったと伝えられている。
 タレントの評価は地に堕ちた。

 自民党の裏金議員が石破首相のことを批判していたら、「裏金議員こそ辞めろ!」「恥を知れ!」という趣旨のことを日曜討論会でれいわ新選組の長谷川うい子さんに言われたと伝えられている。

 阿漕なことをやっていると、いつかわが身に返ってくるということか。

2025年04月01日

米軍沖縄本島に上陸から80年 

 1945年4月1日、米軍は早朝から激しい艦砲射撃を加えた後、沖縄本島中部の西海岸へ上陸した。予想に反して日本軍の反撃はほとんどなく、米軍の従軍記者だったアーニー・パイルは上陸後の行動をこう書き残す。「まるでピクニックのようだった。皆で腰を下ろして七面鳥とオレンジに舌鼓を打った」と4月1日の毎日新聞のWEB【喜屋武真之介記者】が伝えている。

 読谷山村(現・読谷村)の自然壕、シムクガマではこの日、避難していた住民約1000人が米軍に保護された。ハワイ帰りの大人2人が米兵と交渉し、投降するよう住民を説得した。

 一方、近くのチビチリガマでは翌2日、住民が集団自決し、83人が亡くなった。半数以上が子どもだった。米軍は投降を呼び掛けたが、多くの人が「残虐に殺される」と恐れ、応じなかった。

 本土決戦までの時間を稼ぐため、日本軍はあえて地上戦に持ち込んだ。米軍の侵攻を遅らせようと、各地の橋も事前に破壊した。だが、その工作は功を奏さず、むしろ住民の避難を妨げた。米軍は沖縄本島を分断して南へ、北へと進んだ。嘉手納町に、爆破された栄橋の橋脚の一部が残る。


 花冷えというには寒すぎて昨日から冬物を身に着けているが、菜種梅雨を思わせるような雨マークの多い週間予報にあちこちから桜の開花の便りが届き、三つ葉つつじのピンクや菜の花の黄色が鮮やかに春の到来を告げている。
 花粉症で悩まされる3月が卒業生たちと共に旅立ち、新しい年度のスタートラインに立つ人達が希望と不安な気持ちを抱え、北風と冷たい雨の中を傘を差しながら出かけたことであろう。

 80年前、沖縄本島で戦争が始まったといえば、高倉健と吉永小百合の共演で話題となった森谷司郎監督『動乱』をTVが放送してくれた。
 1932(昭和7)年の所謂・5・15事件から1936(昭和11)年の同2・26事件までの時代を背景に青年将校とその伴侶にスポットを当てた物語で、軍事クーデターで決起した青年将校が鎮圧され、軍法会議で銃殺となるまでのことが描かれている。
 1980年に公開されたときに観ているけれど、内容はよく覚えていなかったが、観た理由だけは忘れていなかった。
 2・26事件が起きた時代は恐慌で貧しい農民の娘たちが身売りを余儀なくされ、息子たちは食べるために軍隊に志願した時代である。
 青年将校と共に決起した兵士たちが貧しい実家の妹が身売りさせられるような政治を変えたいという願いで行動を共にしたと耳にしていたからで、人身売買に反対する立場だったからだ。
 姉が芸者に身売りさせられることを知った初年兵が脱走し、死ぬことを強要する上官を手にかけ、銃殺刑に処せられる。その姉が初年兵の所属する部隊の責任者である青年将校が工面したカネを受け取りながらも芸者になってしまう。二人は満州で再会し一緒になる。
 やがて、青年将校は2・26事件を起こすのだが、決起は失敗に終わり、首謀者の一人として銃殺される。
 日本は事件の5年後、米国との戦争に突入するのだ。

 沖縄戦に目を転じてみよう。

 もともと琉球王国だった沖縄。日本軍が本土の防波堤にしたことから悲劇が始まった。
 米軍は本土の攻撃の前に、南太平洋から北上し、ソロモン諸島ガダルカナル、テニアン、サイパン、グアム、硫黄島と次々と日本軍守備隊を攻略し、沖縄の慶良間諸島座間味島に上陸したのが1945年3月26日、27日には隣の渡嘉敷島に上陸し、4月1日に中部の読谷村に上陸する。
 鉄の暴風と形容されるほどのすさまじい艦砲射撃を加えた後、上陸し、日本軍を南北に分断させ、結果的に南下していく日本軍を摩文仁に追い詰めた。
 6月23日、守備隊司令官の自決で集団的な戦闘は終結した。

 沖縄での日本軍は硫黄島での戦いの如く、持久戦に持ち込み、本土への上陸に対する時間稼ぎ、つまり、防波堤にするというのが日本軍上層部の考え方だった。
 しかし、ガマと呼ばれている自然壕に隠れている住民を追い出したり、子どもが泣くと、日本軍兵士は子どもを殺せと命じたり、住民を守るための軍隊ではなかった。
 それでも、沖縄県民は師範学校や高等女学校の教員や生徒たちがひめゆり部隊や鉄血勤皇隊を組織して、日本軍に同行し、兵士の看護などに力を尽くした。

 琉球民族の素晴らしいところは、敗戦後、勝者、敗者、民族の区別なく弔うため、平和の礎に刻銘し、供養の祈りを捧げることができるようにしていることだ。

 あれから、80年。
 戦争にならないようにしていかなければならない。