ロシアのウクライナ侵略から4年目を迎え、ウクライナの頭越しにロシアとの停戦交渉を急ぐ米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との28日の会談が決裂したニュースが流れた。
第2次大戦後の米国主導の国際秩序がロシアのウクライナ侵略で危うさを増している。米国はロシアの暴挙に際し、自由主義に対する権威主義の挑戦と糾弾し、西側諸国は団結して対露制裁を科し、ウクライナ支援に回った。
ところが、米国にトランプ大統領が就任するや、米国第一主義の観点から、ウクライナへの支援をしたくないからかウクライナの頭越しに対露交渉による戦争終結を急ぎ、奪ったウクライナの領土を返さず、NATOへの加盟も認めないというロシア寄りの姿勢を打ち出している。
これに対し、戦争終結後は二度とロシアに侵略をさせないような安全保障を米国や欧州の国々と取り交わしたいゼレンスキー大統領はウクライナに埋蔵されているかもというレアアースなどの鉱物資源の権益を米国に認めると譲歩し、安全保障の担保を求めただけにもかかわらず、上から目線の高飛車な態度のトランプ大統領と手下にいちゃもんをつけられたということらしい。
優れた連載「あすへの考」その2月23日の読売の紙面では、【戦後80年の世界】をテーマに「米主導の国際秩序 揺らぐ」「帝国的勢力圏拡大は中露の思う壺。国際機関は機能不全に陥る」「米の最大の敵は、トランプ現象と「もう一つのアメリカ」という見出しで政治学者、米国プリンストン大学G・ジョン・アイケンベリー教授(70)に聞いた内容を伝えている。
対立している米中は共存の道を見出せるのか。自由主義的国際秩序は維持できるのか。
米中対決で米国に必要なのは日欧など価値観を共有する国々との連携を強化すること。まず西側で自由主義的国際秩序を立て直し、21世紀の課題に取り組む展望を示す必要がある。多国間協調体制を整備・強化してこそ米国は中国の挑戦を退け、共存の方策を見出すことができる。
しかし、米国の自由民主主義の最大の敵は中国ではなく、トランプ現象であり、オルトアメリカ(もう一つのアメリカ)である。
ために民衆の分別に訴えることが肝心だが、国内の反動勢力は偽情報を拡散させ、偽りの歴史物語を流通させ、「もう一つの米国」「もう一つの歴史」を作り上げている。
ウクライナと台湾は強大な大国の暴力や圧力にさらされ、西側に与しようとしている。
西側の秩序を必死の思いで望む人々が存在している。
米主導体制には失敗もあるが成功もある。成功をかけがえのないものとして擁護することが、自由民主主義体制存続の危機に瀕している戦後80年の今、格別に重要となっている。
以上が要旨である。
ウクライナと台湾の人々の多くが西側の自由観主主義体制を望んでいる。
そのウクライナが権威主義というか独裁体制のロシアに隷従させられようとしていることに対し、ウクライナの人々は命を懸けて戦っている。
その先頭に立っているのがゼレンスキー大統領であるから、開国以降、日本の敵であったロシアと戦っている人々を日本政府が支援することを大いに支持してきた。
米国はご都合主義の国で、全く信頼に値しない国であるが、自由と民主主義体制のリーダー的地位にあることもまた事実である。その米国の大統領がもう一つのアメリカを代表する守旧派の一員で自由主義陣営に背を向ける存在だとするなら、自由民主主義体制国家所謂西側諸国にとっては迷惑この上ない存在である。
ロシアと陸続きの欧州各国はウクライナへの武力侵略を認めれば明日は我が身ということで、ウクライナ支援に関してはできる限りの援助を惜しまなかったし、今後も、できるだけのことはするだろう。
祖国防衛に関してはNATOで集団安全保障体制ができているが、ウクライナのNATO加盟を断固阻止したいロシアは核兵器を脅しの材料にし、圧力をかけている。
人間にとって食べることは別にして、生きていくとき、大切なのが自由だということで発信してきた立場としては、自由と民主主義陣営に与したいウクライナと台湾の人々の気持ちに何とか応えてやれないものかと思案するが、自由と民主主義陣営のリーダー格が自らも独裁者同然だからか、ロシアの回し者みたいでは、これから、戦争があちこちで起こりそうでお先真っ暗である。