月に一度の映画館行き、2月は小泉堯史監督、松坂桃李主演『『雪の花―ともに在りて―』を観てきた。
1月観たのが月末だったから、2週続いて映画好きには至福なひと時を過ごせたことになる。
原作は吉村昭だとのことだが、恥ずかしながら全く知らなかった。
「多くの命を奪う疾病に立ち向かい、絶対に諦めなかった男 その真実には、人々との出会いと夫婦の絆があった―」と買い求めたプログラムにあった。
江戸時代末期の福井藩の町医者で漢方医の笠原良策が当時流行った死に至る病疱瘡(天然痘)を治療、予防しようと奮闘する物語で実話が基になっているらしい。
天然痘といえば、すぐに英国のジェンナーという名前が出てくるほどで、予防で歴史に名が刻まれるほどの快挙をなした。
そこから、遠く離れて自分の身近な人々を救った笠原良策医師も実に立派である。
2020年から猛威を振るった新型コロナが完全に収束したわけでもなく、インフルエンザにマイコプラズマ肺炎と重なって流行っているみたいな時だから、タイムリーといえば時期的にはぴったりだが、新型コロナの治療と予防で我が国の医療関係者が懸命に頑張ってくれたことと同様にいつの時代にも、ありがたい医師がいたものである。
福井藩といえば、別名越前で、越前となれば、越前焼、越前和紙、そして越前竹人形と頭を過る。
映画でも、越前和紙を製造している様子が伝えられたが、連れ合いの働いていた職場に越前出身の女性がいて、早期に退職して田舎に帰り、越前和紙の作家になったと風の便りに聞いている。
疱瘡の予防として京都で「種痘の苗」を手に入れた医師の笠原は、子どもたちに種痘苗を打ち、その子を連れ、越前に戻ろうとするが、生憎、道中が吹雪となってしまい、あわや遭難というシーンがあった。高倉健の「八甲田山」の雪中行軍のシーンが頭に浮かんだほど吹雪の怖さを知った。
幸い、事前の準備よろしきを得て無事一行は越前に戻れた。
2019年11月に大阪から福井に行き、永平寺でお参りしてきたことを思い出しながらスクリーンを眺めていた。
11月だから季節はよかったが、冬ともなれば、タイトルのような雪なしには考えられないのが越前ではないか。
日本海側は山陰の湯村温泉の『夢千代日記』、越前では『越前竹人形』、越中では『風の盆恋歌』、越後では『越後つついし親不知』と雪で大変だが、ズバリ『雪国』もあるくらい文学作品やTVドラマ、映画などで名作が生まれている。
映画ではカメラワークでその景色が紹介され、旅情を誘われてしまった。
佳い映画なので、一人でも多くの人にお薦めしたい。