月に一度の映画館行き、12月は倉本聰脚本、若松節朗監督、本木雅弘、小泉今日子、中井貴一など出演の『海の沈黙』を観てきた。
月に一度の映画館行き、いつも一緒に行ってもらう連れ合いが滅茶苦茶に忙しくて、とうとう10月、11月と行かれなくて久し振りに観ることができたので満たされた気分である。
月に一度映画館に行くというのは自分の流儀かつ、自分に課していることであるが、非日常の世界に浸るというのは日々の生活に欠かせなくなっている。
さて、ドキュメンタリー作品などを観ることが多く、エンターテイメント作品を観る機会がほとんどないので偶には文芸作品というのか、倉本作品を観るのも悪くない。
倉本聰といえば、自分にとっては高倉健の代表作で、大好きな『駅 STATION』の脚本を書いた人だから、期待して観ることにした。
北海道富良野に移り住み、北海道の佳さを知るだけに冬の留萌、増毛、雄冬などを舞台に『駅 STATION』を書いてくれた。あの時の光景が忘れられず、感動の余韻に浸って、現地を訪れてしまったほどである。
さて、『海の沈黙』である。
高名な画家の展覧会で起こった贋作騒動。必然的に描いた作家のことが追及され、浮かび上がってきたのが、若き天才画家と呼ばれながらも、突然、姿を消した津山竜次。
高名な画家の妻となっている安奈は、かつてその竜次の想い人だった。
竜次の番頭スイケンの助力で小樽で再会を果たす二人。
しかし、この時竜次は肺を病んでいたのである。
興趣を削ぐから物語のあらすじはこの辺でやめておく。
団塊の世代かつ、映画好きとはいいながら、エンターテイメント作品を観る機会が少なかったので、主演の本木雅弘、小泉今日子のことはよく知らず、「サラメシ」で見事なナレーションを聞かせてくれている中井貴一のことは少しは知っている程度だった。
小泉今日子は失礼ながら、「いい女だな」とスクリーンを眺めていたら、連れ合い宛に送られてくる通販の「ハルメク」の宣伝で見たことを思い出した。50代の女性として、輝いていたあの女性だった。
本木雅弘はお茶の宣伝で見ていただけでなく、『おくりびと』に出ていたことを思い出した。
入れ墨の女性を演じた清水美砂は『海は見ていた』だったかで観ているので知っていた。
映画で一貫して描かれているテーマは美術品の価値ということである。
多くの人々は美術品の贋作などと言っても見抜くことなどできるわけがない。
贋作だとされる前、絶賛されてきた作品が贋作だとわかると途端に価値が下がってしまう。
美術品の価値とは何ぞや?ということに尽きる。
このことは映画作品などが海外で評価されると途端に日本での評価が上がる事例とそっくりである。
つまり、人々は自分で美術品の価値などわからないのではないかということ。
買い求めたプログラムにも書かれていたが、美術品の贋作、美術品の価値などに興味関心がある向きには大いにお薦めした映画である。
男と女が抱く過去の恋愛の思い出は同じではないと思うが、男の立場から見ると、若い頃好きだった女性のことは忘れがたいような気がしてならない。
女性の立場からはどうだろうか。
願わくば、同じであってもらいたいが・・・。