2024年11月26日

雪煙の歳月

 NHKスペシャル「雪冤の歳月 〜ひで子と巌 奪われた58年〜」を視聴することができ、冤罪の勉強に関して大いに役立ったので書いておく。
 「なぜこれほど長い時間がかかったのか―。58年前に一家4人殺害の犯人とされ,半世紀以上を死刑囚として生きた袴田巌さん(88)。ようやく開かれた再審で10月9日、無罪が確定した。
 弟の無実を信じ、裁判のやり直しを求め続けたのは姉のひで子さん(91)だった。長年にわたる拘禁で精神が蝕まれ、会話もままならない弟を支えながら、重い司法の扉を叩き続けた姉。長期にわたり2人に密着、無罪を勝ち取るまでを追った記録。


 全国判事被害者の会によれば、戦後の冤罪事件で、死刑判決が確定した後、再審で無罪が確定したのが1948年の免田事件、1950年財田川事件、1954年島田事件、1955年松山事件である。
 死刑判決事件は、帝銀事件、三鷹事件、牟礼事件、藤本事件、名張事件、波崎事件、袴田事件、見崎事件、晴山事件、道庁爆破事件。
 無期懲役確定後再審無罪となったのが梅田事件、足利事件。
 無期懲役判決事件は丸正事件、狭山事件、日産サニー事件。
 有期懲役確定後再審無罪となったのが榎井村事件、弘前大学教授婦人殺し事件、徳島ラジオ商殺し事件。
 有期懲役判決事件は白鳥事件。
 無罪確定事件が幸浦事件、松川事件、二俣事件、木間ケ瀬事件、八海事件、仁保事件、山中事件。
 その他として、甲山事件。
 袴田事件は分類すれば、死刑判決確定後、再審無罪が確定した事件に加わる。

 冤罪事件について、目覚めたのは名張の毒ぶどう酒事件を描いた『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』を観たときからである。
 爾来、「えん罪・名張毒ぶどう酒事件・東京の会」のサポート会員となり、再審開始請求を支援してきた。
 映画を観る前でも、松川事件、免田事件。近年では布川事件、足利事件。さらに、大崎事件、日野町事件、豊川幼児殺人事件。三鷹事件、狭山事件、飯塚事件などメディアで取り上げられた事件のことは関心を持っていた。

 袴田事件に関しては、NHKが番組制作にあたり「雪冤」ということで、冤罪を晴らす、身の潔白を認めてもらうということで名づけられたタイトルだと思料するが、この言葉は知らなかったので勉強になった。
 袴田事件といえば、当事者は長年の拘禁状態と認知症も関係するのか、精神を蝕まれているようでお気の毒であるが、姉のひで子さんの闘志あふれる姿に人として敬意を表したくなった。
 同時に国家権力の犯罪ともいうべき冤罪事件の底の深さを考えさせられた。

 名張の毒ぶどう酒事件は、一審で無罪判決が言い渡された事件である。その判決が2審で死刑判決になってしまい、最高裁で死刑が確定し、再審開始請求も第10次と回数が増えるばかりである。
 袴田事件の姉ひで子さんに対し、名張では、妹の岡美代子さんが頑張っているが、高齢であり、再審開始請求が認められることが急がれる所以である。

 袴田事件で冤罪が晴れたことを喜ぶと同時に上述のとおり、これほど多くの冤罪事件が起きていること、しかも、再審開始がなかなか認められないところに国家権力を全く信用しない人々が増えるばかりである。

 政府を信用できない。国家権力が市民を守らないのではどうにもならない。