2024年10月11日

戦場体験放映保存の会設立20年 1800人の声収集

 戦後79年を経て、戦場の惨禍を体験した元兵士が次々に世を去る中で、その証言を映像に収め、公開している民間団体「戦場体験放映保存の会」が2024年、設立20年を迎える。約1800人の証言映像を収集してきた同会だが、さらに元兵士らの声を集めたい考えで、「歴史の証人として、ぜひ自分の体験を話してほしい」と協力を呼びかけている。と10月8日の読売(畑武尊記者)が夕刊で伝えている。

 いま力を入れているのは、映像の証言を文字に起こし、映像を視聴するのに較べ、多数の体験談に触れられ、誰でもWEB上で読める形にすることだ。現在までに文章にできたのは約480人にとどまる。
 文字起こしのボランティアを募り、作業を進めたい。と事務局長の中田順子さん(50)と事務局次長の田所智子さん(58)は意気込む。

 2022年8月16日の東京新聞のWEBによれば、戦争を多面的に記録するため、兵士を送り出した銃後の人々の証言の記録にも力を入れていく。と中田事務局長が力強く話していた。

 2024年4月、功績が認められ、吉川英治文化賞を受賞した。

 厚労省や総務省によれば、終戦時日本の総兵力は陸軍547万人、海軍242万人だった。
 一定期間軍務に就いた理、負傷したりした元軍人には恩給が支給されている。2003年度38万人以上が受給していたが、23年度時点で受給者は1401人で、次々と証言者が世を去っていることがわかる。


 語り継ぐ戦争だから、「戦場体験放映保存の会」を設立し、約1800人の証言を集めたことに敬意を表したい。
 できそうでできないことである。

 事務局長や事務局次長の年齢が団塊の世代の一員である自分と較べ、まだ、50代ということで、期待できそう。これからは銃後の証言も集めるということも喜ばしいことである。
 語り継ぐ戦争の立場から、戦場体験を記録することは今の平和な社会を守っていくために極めて重要なことである。
 しかしながら、戦争は戦場だけで行われているわけでなく、銃後と呼ばれた兵士を送り出した市民にも影響を及ぼすことは敗色濃厚となっていくにつれ、空襲、空爆などで証明されている。

 さらに、政府の要請によって、満州に渡った人たち、満蒙開拓団などの人々の身の上にも大きな悲劇が起きたことがわかっている。
 その人たちのうち、ソ連兵などの略奪、性的暴行から開拓団員を守るために性奴隷として差し出された15人の娘たちのなかから、満蒙開拓平和記念館で証言が語られたことが契機となり、黒川開拓団の悲劇が広く知られることとなった。

 戦場での兵士たちの体験、銃後で空襲、空爆で逃げ惑った体験、満州で起きた集団自決、シベリア抑留などの体験をネットワークで一覧化し、誰でもが、いつでも見られるようにすることが求められている。

 戦場で生き残るのは大変なことだが、戦争は戦場で戦っている人たちだけの問題ではなく、集団自決に追い込まれた人たちなど、様々な分野で生と死のはざまで彷徨した人たちのことを記録することが大事だ。

 誰かがやらなければならなかったことに取り組んでいる関係者にエールをおくりたい。