「SDGs@スクール」というタイトルで、学校でSDGsに関わる活動をしている生徒たちのことを取り上げている連載が読売にある。その10月2日は、(染木彩記者)「『掃除部』学校と街きれいに」という見出しで、埼玉県立川口工業高校の「掃除部」の活動を紹介している。
全国的にも珍しい「掃除部」。掃除部が活動を始めたのは2007年。赴任してきたばかりだった理科の牧之瀬貴子教諭(62)は化学実験室などでネズミやゴキブリが走り回る姿に驚いていると、約10人の有志の生徒たちが自主的に掃除を始めてくれた。
2年かけて部屋はきれいになり、牧之瀬教諭が「部活として活動してくれない?」と呼びかけたことが「掃除部」の始まりだった。
愛好会として活動し、11年からは学校周辺のごみ拾いも行っている。
19年に部に昇格し、現在24人の部員が在籍する。
廊下のワックスを剥離剤で剝がしてから新しいワックスを塗り、床掃除用の機械も使いこなし、卒業生が清掃会社から即戦力として採用されるほど技術力は高い。
モットーは「掃除してやってると思うようなら辞める」で、もう少しきれいにしたいとトイレ掃除に没頭し、「定時制の生徒が来るまでには切り上げて」と牧之瀬教諭がストップをかけるほどだ。
全国の高校生がスポーツのように拾ったゴミの種類と量を競い合う「スポGOMI甲子園」の全国大会で2度優勝している。
部員たちの願いは街の人たちに「ゴミを捨てない」という意識を高めてもらうことだ。
2023年からは地元の小中学生やその親に参加してもらうゴミ拾い大会「かわりすCUP」を開催している。
川口市に行ったことがないし、埼玉のどの辺にあるかもしらないが、『キューポラのある街』の舞台になったことで鋳物の街だったことは知っている。生憎、若い頃の映画だから観てはいないが、近年は外国人が集まり、クルド人が大騒ぎした街として印象はすこぶる悪い。
その悪いイメージを払拭するのが県立川口工業高校の「掃除部」の生徒たちでエールをおくりたい。
トイレ掃除に力を入れていると知り、イエローハットの創業者鍵山秀三郎さんのことを思い出した。
近年では、役所広司がトイレの清掃を仕事にしている平山さんを演じた『パーフェクトデイズ』で公衆トイレの清潔さ、使いやすさなどが映画化されるほど社会問題として取り上げられるようになった。
例えば、登山客などで汚れが目立っていた奥多摩駅のトイレを地元の有志が清掃の回数を増やしたことで、きれいになり、今ではその清潔さを誇っているほどだ。
昨、10月4日の読売朝刊の長期連載「人生案内」に60代後半の男性が「人生楽しくない」どうしたら私の人生は充実するのか。と相談があった。
回答者は独特の文体で回答することで知られている作家いしいしんじさん。
荒っぽく要約してしまうと、誰かのために生きることが、生の時間を燃やす。ほんとうの楽しみにつながると軍手をはめ、舗道の植え込みを整える。通学路の交差点で、毎朝、ランドセルの児童に声をかける、などを参考に挙げている。
『荒野に希望の灯をともす』でアフガニスタンとパキスタンで35年も現地の人々に医療と灌漑用水の敷設で貢献した医師中村哲先生の活動を観て、異国の地で、自分の持っている医師としての資格を活かし、現地の人々の医療で貢献したばかりか、栄養失調が病気の原因とみるや、灌漑用水を敷設して、食料自給のために活動した人生は厳しく大変なことだったと思う反面、充実した人生だっただろうと推察する。
人間立ち位置というか、身の丈というか、できることは限られているとしても、自分のためでなく他者のために頑張っているというのは川口工業高校の掃除部の生徒も同じで立派である。
現代の偉人ともいうべき中村哲先生が成し遂げたことは誰にでもできるわけではない。
しかし、作家のいしいしんじさんが挙げられた舗道の植え込みを整える、草を毟る、ごみを拾うことはやろうと思えばできないことではない。
充実した人生を求めるなら、早速にも、実践してみることだ。
川口高校の「掃除部」の24人には感心するばかりであるが、退場するばかりの世代の一員としては、持ち時間が少ないが、手が回らず、道路に伸びている畑の生垣代わりのサツキなどを早く刈り込んできれいにしなければと思った。