岸田首相は21日、国が定めた援護対象区域外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」に対し、被爆者と同等の医療費助成を行う考えを表明した。被爆体験者の一部を被爆者と認めた9日の長崎地裁判決については、被爆者を公平に認定することが困難になるとし、控訴すべきだとの方針を示した。これを受け、長崎県と長崎市は控訴を決めた。訴訟の原告団も控訴する。と9月22日の読売が伝えている。
被爆体験者への医療費助成は現在、被爆体験による精神疾患などに限定されており、対象者は3月末時点で約6300人に上る。新たな助成では、医療費が原則無料となる被爆者と同等の制度とする。
長崎地裁判決は、長崎市東部で放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと認定した上で、原告44人(うち4人死亡)のうち15人(うち2人死亡)を被爆者と認めて県と市に被爆者健康手帳の交付を命じ、残る29人の訴えは退けた。
広島原爆では、国が被爆者援護法で定めた区域外でも、「黒い雨」に遭った人を被爆者と認定する2021年の広島高裁判決が確定し、国は22年から被爆者と認める新基準による救済を始めたが、長崎は含まれていなかった。
岸田首相は選挙区が広島であり、選挙では当然のことながら、原爆の被爆者や関係者から応援されてきたのではないか。
首相になって一番の功績は広島でサミットを開催したことで、常識的に考えて、各国首脳を原爆資料館に案内したことと思っている。
このことは岸田首相でなければできなかったかもしれないと考えれば、被爆者の心情にも理解があるはずだ。
語り継ぐ戦争で訪れた土地では、沖縄とヒロシマ・ナガサキが激しく心を揺さぶられた。いずれにも戦争の資料館があり、ここを見学したことで、わが国で市民が地上戦に巻き込まれたらどうなるか。非武装の市民がジェノサイドで原爆を投下されたらどうなるかが理解でき、その土地に住む人たちへの思いがより深まった。
ヒロシマでは、原爆ドームは無論のこと、映像などで知ってはいても、被爆の実態がより深く理解できたのは資料館での見学が大きい。
核兵器の怖さを知り、平和のために各国首脳にこそ原爆資料館を見学してもらいたかった自分としては、サミットの広島開催は評価できることだった。
原爆投下後の黒い雨で放射能を浴びた人たちのことを被爆体験者と呼ぶのはおかしなことだとすでに書いている。
原爆の放射能を浴びたら被爆者ということくらい誰でもわかることで、扱いに差をつけることが間違っている。
岸田首相だから、ナガサキの被爆体験者の医療助成をすると表明したことと理解し、佳かったと思っていたが、お役人からの要請だろうが、控訴はいただけない。
被爆者、被爆体験者とか線引きなどと言わずに、もっと早く医療助成し、救済すべきだった。