採掘事業者が倒産ン度で撤退した「義務者不存在鉱山」の管理に自治体が頭を悩ませている。有害な排水の処理費などで負担する必要がある鉱山は13道府県に23か所あり、半世紀で投じられた公費は700億円を超える。処理施設の老朽化に加え、大雨などで排水が河川に流出するトラブルも相次ぎ、終わりの見えない出費を強いられている。と9月3日の読売が伝えている。
国は1973年施行の金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づき、早期に廃水対策を完了させるとしていたが、鉱山内部で湧き続ける地下水を止めることは容易ではなく、対策が必要な鉱山の数はほぼ変わらない。
処理費は特措法に基づき、国が4分の3、自治体が4分の1を負担している。
1974〜2023年度の50年間に投じられた公費は約770億円、そのうち自治体負担分が約190億円で、今後も毎年約5億円の費用が発生する見通しだ。
足尾銅山鉱毒事件(栃木県)、流域の渡良瀬川を汚染させたわが国初の鉱毒事件は明治時代の頃からのことで別子銅山(愛媛県)、日立鉱山(茨城県)、小坂鉱山(秋田県)と併せて四大鉱毒事件とされている。
鉱毒事件といえば、四大公害病の一つ、イタイイタイ病は岐阜県三井金属鉱業の神岡事業所を原因とするカドミウムを含んだ廃水が神通川に流出し、流域の富山県富山市の住民に被害が出た鉱毒による公害である。
鉱山を採掘すれば、有毒な化学物質であるカドミウムなどが処理されなければ、そのまま廃水から流れ出る危険があることが明らかになっている。
休廃鉱の廃水といえば、処理されないで流れ出ていることは明らかである以上、住民に健康被害が出ることは自明の理である。
事は処理費用の問題ではすまないのだ。
健康被害が出てからでは遅い。
企業は採算が取れなければ、すぐに廃鉱にして撤退してしまう。
住民は逃げられないから、国や自治体が処理するのは当然のことである。
本来、企業には後の世までまで責任があるわけで、「採掘しているときから、カネを拠出させて基金をつくり、会社が撤退してから後の処理費用に充てられるようにすべきである。」と関耕平島根大学教授も指摘しているとおりである。
鉱毒事件、公害病事件を繰り返してはならない。