「心情等伝達制度に救いはあるのか」というテーマで7月28日の読売が「広角多角」というタイトルの紙面で社会部の石浜友理記者が願望の実現について書いている。
日頃書いている記事で知らず知らずのうちに文体が願望調になっていることに気づいた石浜記者。
願望といえば、犯罪被害者遺族に心情伝達制度が設けられ、遺族は刑務所に収容されている加害者に対し、被害者遺族の心情を伝達できる制度が始まり、取材していた犯罪被害者遺族が実践し、加害者から回答が届いたことを伝えてくれた。
24年前に横浜市で起きた殺人事件で、当時22歳の長女・美保さんを亡くした渡辺保さん(75)が実践した心情伝達制度は満足のいくものだったのであろうか。
犯罪被害者や遺族の思いを刑務所職員を通じて加害者に伝える「心情等伝達制度」が2023年12月に始まり、制度を利用した渡辺さん。
殺人罪などで無期懲役が確定した受刑者の男(46)は、事件後に自首したが裁判では無罪を主張し、これまで謝罪の言葉は一切ない。渡辺さんは6月、男への積年の思いを刑務所職員にこう託した。
「お前の身勝手な犯行で、大事な大事な娘が殺害され、家族の未来を壊された。どのような謝罪があろうと絶対に許さない。謝罪の気持ちは持っていないのか。許されなくても謝罪し続けるのが人間ではないのか」
「過去のことは忘れて、今できることをやりたい。人生をやり直すことを考えている。美保さん、その家族に申し訳ないと思っている。5500万円の賠償金は金額が多すぎるので、払わない」
娘の人生を奪っておきながら、自分だけ過去を帳消しにして新しい人生を歩むつもりなのか。全然反省していないじゃないか――。「『申し訳ない』など、形だけの謝罪でしかない。もしかしたら謝罪の気持ちを持っているかもしれないと、ほんの少しの期待を持った自分がバカだった」と、渡辺さんは深いため息をついた。救いは感じられなかった。
まず、犯罪の加害者に性善説みたいなことを期待するのは愚かであると断言できる。
加害者には本当のワルと言われる矯正などありえない、極刑にするか、終身刑(無期懲役)で一生刑務所で暮らしてもらうよりない悪魔がいる。
具体的には名古屋アベック殺人、女子高生コンクリート詰め殺人事件、郡山集団女性性暴行事件、北九州監禁殺人などの加害者がこれにあたる。
生かしておいてはいけない人間だとは被害者遺族の気持ちを忖度すれば出てくる結論である。
しかし、刑罰が軽くて、もう出所して世の中を跋扈している人間もいる。
対して、事件後反省し、遺族に謝罪をしている加害者がいるから、矯正ができないわけではない。
後期高齢者になってしまった自分と同世代の被害者遺族である父親がいくら嘆いても、横浜の事件は加害者なんてこんなもので、加害者の典型は自分は他人の命を奪いながら、自らは死にたくないというのが加害者の本音である。
わが国最大の暴力団組織山口組の顧問弁護士だった山之内幸夫さんは現在、ユ―チューバーだとご本人の弁である。
その山之内さんが自らの幼少の時代を振り返って貧しかったけれど、親の愛情をたっぷり受けて育ったから道を踏み外すことがなかったと発言しているのを耳にしたことがある。
然るに、暴力団の構成員になる人は、在日、部落など同じ貧しく育っても、親の愛情をきちんと受けた人などまずいない。
親の愛情を受けたか受けなかったかで犯罪で残酷なことが平気でできるか、できないかに分かれるというのだ。
コンクリート詰めにして女子高生を殺害した加害者の中には家庭を持っている人がいると耳にしたことがあるが、仮に事実だとして、女子高生をあれほどの残虐な仕打ちで殺害しておきながら、幸せな家庭を築いているなんてことが許されるわけがない。
同様に、横浜事件で加害者が人生をやり直したいと発言しているのを耳にすれば、被害者遺族は怒り心頭であろう。
人を殺害しておきながら、自分だけのうのうと生きている。
天罰が下らないなら、神なんて存在しないのではないか。
被害者遺族の立場にもっと寄り添った判決が必要な所以である。