2024年07月07日

法医学解剖と検視 冤罪を減らせ

 NHKスペシャル「法医学者たちの告白」を一部視聴することができたので書いておく。
 
 「警察や検察から解剖の依頼を受け、死因を判定する法医学者。判断を間違えば、犯罪を見逃したり、えん罪を作り出したりすることにつながる。彼らの仕事は科学的で中立性が高いと信じられてきたが、検察側と弁護側の鑑定結果が対立するケースも少なくない。裁判のやり直し=再審において争点になることも多い。法医学者になる医師も減っている。一体何が起きているのか。法医学者たちの初めての告白から日本の司法制度の課題に迫る。」と㏋にある。

 年間400体もの解剖を行う千葉大学法医学教室岩瀬博太郎教授。日本でも有数の規模を誇る法医学教室であるが、丁寧な解剖で定評がある反面解剖数の増加で警察からは効率化を求められ、岩瀬教授は困惑している。
 国立大学だから、国からの予算措置を求めているのだが、検視官が3倍に増えている反面、法医学者は増えていない。
 次いで、年間250体の解剖を行い、これまで4000体もの解剖に携わってきた北海道旭川医科大学の女性法医学者が紹介される。
 「祈ることによる癒やしがないと、法医学は続けられない」と教会で折々祈りをささげる。

 年間20万人の異状死のうち、犯罪の疑いがあり、死因が不明の遺体は年間1万体にも及ぶ。
 その1万体の遺体に対して司法解剖は行われる。

 
 犯罪被害者支援を訴えてきたくらいだから、犯罪学、被害者学、法医学に大いに興味、関心を持っている。

 法医学者といえば、東京大学の上野正吉博士が『法医学』の著作を刊行されていて、自分も買い求めたくらいだから、あまりにも有名だが、次いで、東京監察医務院で監察医だった上野正彦さんもTVに出演したりされていたから知られているだろう。
 西丸與一『法医学教室の午後』(朝日文庫)も読んだことがあるような記憶がある。
 視聴したことはないが、『法医学教室の事件ファイル」というTVドラマもあったから、視聴者も関心が高いと言ってもいいのではないか。
 法医学者が犯罪の疑いがある異状死の解剖をする一方で、TVドラマ『臨場』では警察の検視官の活躍が描かれていた。

 犯罪の可能性があれば、すべからく遺体を解剖するのが望ましいだろうが、法医学教室の人手不足もあるし、検視官の検視で済ませることも現実としてはあるということか。

 近年の犯罪では、女性に酒を飲ませ、或いはクスリを盛って抵抗できなくして性的暴行をするという卑劣な犯罪が増えている。
 ところが、法医学的に言えば、睡眠導入剤などを盛られれば、事件後、調べれば、盛られたことがわかってしまうのだ。
 和歌山の毒カレー事件があったが、確かヒ素が使われたと記憶する。個人的に持つような物質ではないのに自宅にあったことが驚きだった。

 トリカブトを使うとか、犯罪者と犯罪を見抜く法医学者のバトルは外野席から見ていると興味津々であるが、当事者はたいへんである。
 見落としがあれば、冤罪につながるし、犯人を見逃してしまうことにもなる。
 TVドラマ、『相棒』でも取り上げていたが、検視と遺体解剖が行政の区域で違った扱いがあると指摘していた。

 国は法治国家だというなら、解剖することで、犯罪の有無をチェックする法医学教室にもっと、予算措置すべきである。