2024年07月05日

旧優生保護法は違憲

 旧優生保護法(1948〜96年)の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、旧法を「違憲」と指摘して国側に賠償を命じる判決を言い渡した。原告側勝訴の4件の高裁判決が確定。原告側の請求を棄却した仙台高裁判決は破棄し、審理を同高裁に差し戻した。とメディアが伝えている。

 7月3日の読売によれば、判決は、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」について、「著しく正義・公平の理念に反し、容認することができない場合は適用されない」との初判断を示し、今回の原告には適用しなかった。

 NHK「クローズアップ現代」でも、この問題を取り上げていたのを視聴することができた。
 「7月3日、旧優生保護法のもと、不妊手術を強制された障害者たちが国に賠償を求めた裁判の最高裁判決が言い渡される。子を持つ権利を奪われ苦しんできた原告たちがその行方を見守る。一方「障害者に子育てはできない」という考えは今も社会に根強く、支える仕組みも整っていない。旧優生保護法の違憲訴訟の判決の日。子どもを産み育てる権利をめぐる実情をルポし、「差別のない社会」を実現するために何ができるのか、考えていく。」

 6月30日の読売「広角 多角」で田中誠文化部次長が障がい者との出会いで二つのやめたこととして、「障がい者を特別扱いすること」、障がい者に「頑張っているね」と声をかけることを心掛けているというのだ。
 きっかけはNHKのドラマ「パーセント」を視聴したからだそうな。


 旧優生保護法が違憲だと訴えていることは当然承知していたが、コメントするのは初めてのことである。
 障がい者に子育てができないなんて言うことはないということは、連れ合いの中学校の同級生が聾唖者で、優秀なその女性は公的な仕事に就き、やがて結婚し、子どもにも恵まれた。
 事情は知らないが離婚し、シングルで子育てしたらしい。
 クラスで人気者だったらしい連れ合いの所に、クラス会の問い合わせが来ていたから、連れ合いは彼女に好かれていたのだろう。
 
 さて、れいわ新選組の山本太郎代表は、重度の障がい者を国会に送り、街頭演説では、「人は生きているだけで価値がある」差別をなくし、誰でもが住みやすい社会にしていこうと呼びかけている。
 実に立派な考え方で、敬服する。

 ところが、団塊の世代の一員でである自分は、見たくないものをみてしまったことがあるのだ。
 弟が統合失調症でその方面の病院に入院中の高齢の男性が遺伝で弟と同じ病気の次世代が生まれては困るからと子どもを持たないことにしたのだと耳にした時、同席していた連れ合いが激しく件の男性を詰ったのである。
 自分も男性の考え方を支持する立場だったから、詰った女性のことをみつめてしまった。

 日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)では「心神喪失」の名の下、罪に問われねヤツがいる!帯というか腰巻には「この国の無法ぶりを暴いた衝撃のノンフィクション」と書いてある。
 精神が壊れてしまえば、犯罪をやってもその責任を問えない。ということの問題点を指摘したものだ。

 障がい者と一括りできないほど、障がいはいろいろで、高齢になってくると、耳鳴りがしたり、難聴になる。歯だって、自前でなくなる。
 自分の命より大事だと思っている連れ合いは在職中、人工股関節の手術を受けているから歩けるが、これがなければ歩けない。だから障がい者手帳を持っている。

 優生保護という思想が優秀な人間、カネがある人間は長生きしてもいいが、貧乏人は医療費がかかるから早く死ねといったらしい中折れハットの国会議員が言った言動に通じるから嫌いな言葉だ。

 語り継ぐ戦争では、満州や朝鮮半島でソ連兵などから性的暴行を受け生憎妊娠してしまった女性が博多や佐世保に引き揚げ後、中絶手術を受けさせられた。
 ソ連兵の子どもを産ませるわけにはいかないという理由で。
 ところが、特攻隊の街として知られる知覧では、戦争に敗れ、進駐してきた米兵に旅館の仲居が性的暴行を受け、生まれた子どもの肌の色が黒かったという。
 戦争に勝って進駐してきた米国の兵隊は性暴力で他国の女性に子どもを産ませている。

 優生保護思想は持ち合わせていないが、犯罪被害者支援を訴えてきた立場であるから、心神喪失、心神耗弱だからという理由で、罪を問われないのはおかしいという考え方に賛成である。

 難しい問題ではある。