殺人や不同意性交など性犯罪の被害者や遺族が原則国の負担で弁護士の支援を受けられる制度の創設が、この4月に改正総合法律支援法が成立して決まった。早い段階から同じ弁護士が着き、助言や手続き代行にあたる。今後詳細な制度設計に入るが、真に被害者の助けとなるには、質の高い弁護士の確保や警察との連携などが肝要となると6月27日の読売(小松夏樹編集委員)が解説の紙面で伝えている。
費用は国の負担だが、「生活の維持が困難となる恐れがある」との条件がある。
警察庁のアンケートでは、加害者との交渉や訴訟にあたり弁護士らに頼んだ人は1・3%に過ぎず、訴訟、交渉をしなかった人は88%に及んだ。33%が手続きがわからなかったことを理由にあげた。
国は、全国各地域での「途切れのない犯罪被害者支援」を打ち出している。
新全国犯罪被害者の会(新あすの会)などは、欧州の制度を参考に、支援施策を一元的に担う被害者庁の設立を求めている。
紙面では2020年5月、長野県で自宅に押し入ってきた男に長女(当時22歳)と次男(同16歳)を殺害された男性(59)のことが取り上げられている。
加害者は自殺し、賠償を求める相手はいない。
ローンのある自宅を出て、エアコンのない部屋に移り、体調不良となった連れ合いの介護をし、自らも体調不良で仕事ができず、弁護士に相談できたのは生活に困窮してからだという。
現実には、誰がいつどこで犯罪被害者、あるいはその遺族になってしまうかわからない。
ところが、人というものは、自分はそうなりたくないという願望から、自分だけは大丈夫だと思い込みたくなるものなのだ。
だから、被害者は一般に支援や加害者対応に明るくない。
被害者に対する一貫支援は、早さと質がカギとなる所以である。
現在、被害者支援の経験や理解のある「精通弁護士」が4000人近く、内、性犯罪被害者が希望することの多い女性は1000人弱いるという。
語り継ぐ戦争をメインに犯罪被害者支援を訴えてきたが、殺人、性暴力犯罪などは自由と尊厳を奪われる重大な犯罪であり、被害者、遺族が受けるダメージは想像をはるかに越える。
誰かの助けがなければ、自分だけではどうすることもできない。
そうなると、支援を一元的にしてもらえるワンストップ支援センターが必要であり、究極は犯罪被害者庁みたいな窓口が設けられる時代がやってくるかもしれない。