自然環境の悪化により、現代は生物の絶滅や減少に歯止めがかからない。その一方、生物は食料や薬の原料などに活用され、人々の暮らしや健康を支えている。
生物多様性(種、生態系、遺伝子)を守る取り組みは、世界の潮流になりつつある。
生物多様性に関する国際的な動きを追う香坂玲東京大学教授は、人間と生物がうまく共生するには、まずは地域で守る取り組みを広げていくことが大切だと説く。
5月5日の読売(渡辺洋介記者)が「あすへの考」で「人間と生物の共生」をテーマに香坂玲さんに聞いている。
「人間は自然を超越した存在ではない。生物の輪のようなつながりに組み込まれたものだと認識することが必要だ。
生物は人間の生活や経済を支えている。生物から多くの恩恵を受けており、生物多様性が失われることは生物からの恩恵を受けられなくなることを意味する。
世界のGDPの半分以上が自然資本に強く依存。保全へ具体的な行動を起こさなければならない。
生物多様性が危機に直面する要因として
@森林伐採などによる過剰な開発行為A中山間地の里山などの手入れ不足B人間がもちこんだ外来種や化学物質C気候変動の4つが挙げられる。
地域の取り組みは重要で、衣食住や観光ならではのものを生みだすことは地域の活性化やビジネスに役立つとともに生物多様性の維持にも役立つ。
土地ならではのものを作るにも生態系や土壌の個性が大事だ。
今後のカギを握る若い世代は国内外を旅して、その土地ならではの生活、食、気候を肌身で感じ体験してほしい。生物多様性が育む景観や衣食住などへ意識を広げることで、新たな価値が生まれる可能性は十二分にあると信じるから。」以上が概要である。
香坂さんはカナダ生まれの日系4世で環境活動家で当時12歳だったセバン・スズキが、1992年に開催された国連の「地球サミット」で「どうやって直すのかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」と伝説的なスピーチをした。「私は怒っていますが、自分を見失ってはいません」と訴えたことを紹介してくれている。
2003年生まれのスゥエーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリーさんがひとりではじめた「気候のためのスクールストライキ」は、瞬く間に世界の若者運動として広がっていった。
地球温暖化を何とか食い止めなければといても立ってもいられなくなった15歳の少女がスゥエーデン議会の前で「気候のためのスクールストライキ」というプラカードを持ってスピーチしたことで知られるようになった。
人生の持ち時間が残り少ない自分と較べ、若い人がこれだけ地球温暖化を止めなければ大変なことになるとの危機感を抱いていることに敬意を表するとともに恥じ入るばかりである。
自分の立ち位置でできることをやってきたつもりではある。
有機無農薬での野菜作り、家庭から出る所謂生ごみは畑に埋め、畑で毟った草などは堆肥化させる循環型農業を実践したりしてきたが、目立つことは嫌いで、こうして毎日発信するくらいで、人前でアピールすることなどとても恐れ多くてというか気が小さくてできなかった。
それでも、ひとり一人が自分のような意識をもって行動すれば、世の中は変えられるとは思っている。
香坂さんが指摘するように今後のカギを握る若い世代はグレタ・トゥンベリーさんたちと共に手を携え生物多様性を育む景観や衣食住などへ意識を広げることが求められている。
と同時に具体的行動に立ち上がることを期待したい。