性犯罪などの被害者を保護するため、起訴状を含む刑事手続き書類に記載する被害者名を加害者に秘匿する新制度が15日に始まる。逮捕から判決まで被害者を特定する情報が伝わらなくなり、加害者から改めて狙われる再被害の防止に役立つとみられる。ただ、刑事弁護人らからは被告側の反証が困難になりかねないといった懸念も示されている。と2月8日の読売が伝えていた。
上記に関する被告側の防御権侵害に当たると主張する裁判で、最高裁第三小法廷(渡辺恵理子裁判長)は「秘匿事項以外から事件を特定できる」として、防御権侵害に当たらないとの初判断を示した。と5月1日の読売が伝えている。
憲法34条は容疑者らの防御権を保障するため、「何人も理由を直ちに告げられなければ、拘禁されない」などと規定している。
弁護側はこの規定に基づき、「被害者が誰かということは容疑の根本に関わり、被害者の氏名を秘匿した状態では『理由を告げられた』ことにはならない」と主張したが、最高裁は24日付の決定で「氏名を明かさなくとも事件を特定できる」として退けた。
語り継ぐ戦争をメインに犯罪被害者支援を訴えてきた。
犯罪被害者等基本法ができる前、司法の世界では犯罪における被害者より加害者の人権を守る意識が高かった。
大学で犯罪学(その時は刑事政策という名称だった)を勉強した時、どうして、加害者の人権が守られ、被害者の人権がきちんと守られてこなかったのかということに対し、教授は戦前、戦中という時代は治安維持法などで特高警察が跋扈し、逮捕されると取り調べでの拷問で殺されてしまうほど国家権力が出鱈目をやった時代だったから、戦後、米国から憲法に民主主義と基本的人権が持ち込まれ、加害者の取り調べなどで人権が守られるようになったことなどが理由の一つだと耳にした。
戦後、市瀬朝一さんなど息子を殺害された被害者遺族などが立ち上がり、被害者の人権に目が向くようになり、犯罪被害者等基本法が成立してからは、それまで泣き寝入りしていた被害者並びに遺族の訴えが政治の世界に届き、被害者の人権が社会からも認知されるようになっていく。
性暴力犯罪では、恥じるという日本の風土として、被害者は何も悪くないにも関わらず、加害者側が擁護され、刑法上も抗拒不能などと抵抗しなければ合意があったという滅茶苦茶な理屈がまかり通ってきた。
しかし、時代は変わり、刑法の名称も強姦罪から強制性交罪を経て、不同意性交罪へ変わり、抵抗できなくとも同意がなければ性犯罪として、加害者は処罰されることが可能になったのである。
被害者が恥じて、告発できなかった性暴力も、勇気を持った女性が立ち上がり、告発者がどんどん増えてきた。
それでも、加害者に自分の名前が知られると、再び性暴力を受けると恐れる被害者に寄り添うように刑事裁判では名前を秘匿できるようになった。
加害者が被害者の名前を知る必要など全くないにも関わらず、弁護士が御託を並べているのは、被害者が性暴力を告発しにくくさせようとする魂胆だという見方もできるくらいの人権侵害である。
性暴力の加害者には厳罰など厳しい姿勢で臨むのは当たり前のことである。
これまで、性暴力の刑罰が軽すぎたのだ。
被害者の自由を奪い、尊厳を傷つける犯罪に加害者に同情するような余地は全くない。
性暴力被害者がどんどん声を上げ、加害者を告発できるようにする必要がある。