2024年04月13日

DV・貧困女性向け自立支援施設「かにた婦人の村」

 DV(配偶者や恋人からの暴力)や貧困などで行き場のない女性が暮らす「女性自立支援施設」。以前は「婦人保護施設だったが、4月1日に施行された困難女性支援法で名称が変わった。  
 どのような施設なのか、社会福祉法人が運営し、日本で唯一長期入所できる「かにた婦人の村」を訪ねた。と4月9日の読売(野口季瑛記者)がくらしの紙面で伝えている。

 房総半島南端JR館山駅から車で10分。森林を切り開いた約11万平方bの敷地に入所者が住む棟と高齢者用の棟があり、38歳〜92歳の約40人が,約30人のスタッフのサポート受けながら共同生活を送っている。日中は農作業や陶芸、洗濯、パン工房などの仕事をこなす。
 担当する作業は自分で選ぶ。「誰かの役に立っている」という実感、「わたしにもできることがある」という自己肯定感をもつことが心の傷を癒やすことにつながる」というのは施設長の五十嵐逸美さん。

 売春している女性の保護と厚生を目的とした売春防止法などに基づき、設置されたのが婦人保護施設だ。
 2023年4月時点で39都道府県に47か所ある。
 22年度の入所者は計約800人。多くは新しい住居や仕事を見つけて退所していく。
 4月1日から困難女性支援法で、施設の名称は「女性自立支援施設」婦人相談所は「女性相談支援センター」に。

 かにた婦人の村は1965年牧師の深津文雄さんが設立。自立が難しい女性が長期間暮らせるようにとの願いからだ。
 これまで約200人が入所。敷地の中の教会の地下には引き取り手のない入所者など80人以上の遺骨が眠る

 半世紀にわたって施設の運営に携わってきた天羽道子さん(97)は「この施設は誰もが一人の人間として尊重される場でありたい」と語る。


 読売のくらしの紙面に「関心アリ!」というタイトルで「人としての尊厳 守りたい」という見出しが目に飛び込んできたので、読んでみたら、懐かしや「かにた婦人の村」のことが紹介されているではないか。

 過去、何回となく書いてきたが、人身売買は許されないということに目覚め、売春防止関連で本を読むうちにみつけたのが「かにた村」だった。
 80年代この施設のサポート会員として、会費(5000円だったか)や衣類、使用済み切手などを送っていたことがあるから身近な存在だった。
 創設者の深津文雄牧師はキリスト者として社会的弱者を救済するには、上から引き上げるのではなく、そばに寄り添うことを支援者の価値原理とする「底点志向」を唱え、実践したことで知られるが、いつの頃からか、かにたより貧しいアフリカのウガンダで困っている人々にも救済の手を差し伸べたいということが打ち出され、サポート会員から退いた記憶がある。
 天羽道子さんはその深津牧師と一緒にかにたを設立した人で健在だということを知り嬉しくなってしまった。

 自分の人生で悔いがあるのは、房総半島の鴨川に家族サービスで車で出かけた時、館山の海がすぐそばというホテルに泊まり、かにたを訪ねようとしたことがあったが行かれなかったこと。
 いくらなんでも、家族連れで訪ねることに申し訳なさが先立ち、忸怩たる思いだった。
 訪ねる目的は納骨堂でお参りすることだったが、敷居が高かった。

 かにた村では、当時、果樹を育て、投資してくれた人に実がなったら送るということもやっていた、

 農作業や陶芸、パン工房など自分がイメージするコロニーとしては理想的なものだった。
 だからか、当時送ってもらった会報は全て取ってあるが、そろそろ終活しなければいけないので、処分するようになるかもしれない。
 時の流れで、DV・貧困女性向け自立支援施設になったが、亡き深津文雄牧師。天羽道子さん、施設長の五十嵐逸美さんたちスタッフの献身的な尽力で運営されてきたことを思えば、この人たちにエールをおくらないわけにいかない。
 有り難いことである。