2024年04月06日

“罪”も“孤独”も洗い流す 若者の更生を支援する“洗い屋”

 『PERFECT DAYS』の平山さんの仕事はトイレ清掃だった。 
 街の中心にある寺の櫻がようやく花冷えの中咲いてくれた土曜の朝。 
 平山さんのように朝のルーティンをこなしている間に、時計代わりに電源が入っているTVのNHKで「若者の更生を支援する“洗い屋”」というタイトルらしきテロップが目に飛び込んできた。
 
 語り継ぐ戦争をメインに犯罪被害者支援も訴えてきたので、究極の支援は罪を償った人の更生だといつも考えてきたから、真剣にニュースソースを頭に入れ、スマホに入力した結果、尼崎で“洗い屋”を営む松本商会の松本和也さんが若者の更生を支援しているその人だということがわかった。
 朝は忙しくて視聴する時間とてなかったが、どうしても書いておきたくなった。

 2024年3月15日のNHKWEBで若者の更生支援として松本さんのことが紹介されている。
 要約してみよう。

 若い頃、自身が逮捕歴があるほどの非行少年だった松本和也さんが立ち直れたのは、伴侶との出会いと子どもの誕生ということで、温かい家庭に恵まれたこと。
 さらに、働く場として選択した“洗い屋”の仕事が少なくて生活に困っているとき、仕事仲間の先輩が生活できるだけの仕事を回してくれたこと。
 更生に必要な職住ということで、賃貸住宅を用意し、安心して働けるような環境をつくった。
 『恩を感じてくれるならそれは俺に返さなくていい。将来、ほかの人が困っているときに助けてあげたらいい』と言ってくれた困ったときに助けてくれた先輩の言葉に触発されたという松本さん。

 罪を犯した若者の更生を支援している日本財団が行う「職親プロジェクト」に参加し、「人は変わることができる」と呼びかける少年院での講演活動も行っている。
「更生」に大切なのは、誰かにしてもらったことを、今度は別の誰かにつないでいくことだと感じたからだ。
 年間30万円の経費を補助する財団が設けた制度も活用して、これまで10人以上の若者を雇ってきた。

 取材した金武孝幸デイレクターは「再犯を防ぐためには、ただ仕事や住まいがあればいいというわけではなく、『この人を裏切ってはいけない』という信頼で結ばれた人間関係が大切だという。


 人間なんて弱い者で、誰しも過ちを犯すし、人にしゃべれないこと、しゃべりたくないことの一つや二つ、三つや四つくらい誰にもあるだろう。
 特に、分別がつきにくい若者ならなおさらのこと。
 だから、やり直しのできる社会にしたい。と自らが立ち直った経験から本気で若者の更生に立ち向かっている松本和也さんにエールをおくりたい。

 例えば、振り込め詐欺の首謀者が募る受け子の闇バイトに応募し、自らのプライバシーを全て握られ、逆らえなくなって犯行に加わり逮捕されてしまう若者。
 今は、振り込め詐欺どころか、強盗殺人まで実行犯を募る闇バイトがあるから、捕まれば、懲役の年数も比較にならないほど長くなってしまう。
 それでも、本気で更生しようと思うなら、松本さんのように自らの経験を踏まえ「頼っていいよ!」と言ってくれる存在は心強い。

 自分のことだけで精いっぱいという人がほとんどの世の中にあって、なんとも頼もしい存在である松本さん。
 嬉しくなって、書いているが、「自分が受けた恩は返さなくていいから、誰か困った人がいたら、助けてやるように」と言った仕事仲間の先輩の存在もまた世の中を住みよくするためには絶対欠かせない。

 ハンセン病での差別のことを書いたばかりであるが、非行から更生しようとする若者を支援する人のことを書くことができて気持ちがいくらかなりとも晴れてきた。