自動車保険金の不正請求問題、市民の財産である街路樹を悪意を持って枯らしたり、勝手に伐採した悪質かつ腐りきったブラック企業である中古車販売大手・ビッグモーター。下請け業者に店舗周辺の草むしりをさせるなどしていたことも判明。
公正取引委員会は15日、下請法違反(利益提供要請の禁止など)を認定して再発防止を求める勧告や指導を行った。公取委は違反が多岐にわたる上、未判明の違反もあり得るとして、問題解消のため、独立した第三者での対応を求める異例の措置を取った。と3月16日の読売が伝えている。
一方、3月21日の紙面で、読売(坂本幸信、村瀬駿太郎、糸井裕哉記者)がスキャナーというタイトルで、「下請けいじめ慣行にメス」「政府賃上げ後押しへ」「原価低減『御社の気合で』」「違反発覚は『氷山の一角』」「立場向上へ是正が急務」という見出しで、30年前から不当な減額を続けてきた日産自動車などへの下請け法違反の勧告にとどまらず、不正な取引慣行に政府がメスを入れ始めたことを伝えている。
山本周五郎、池波正太郎、藤沢周平そして乙川優三郎と好きな作家の時代小説を読んできた。
誰のどの作品だったか加齢による衰えで失念してしまったが、殿様など権力者が家来の美しい奥方を自分のものにしたくなり、側室(お妾)として差し出させるように命じるのだ。
この時、家来のとる態度として、黙って差し出す場合と、二人で出奔するというようなこともあるやに書かれていた記憶がある。
偶然にしても、日産とビッグモーターという自動車製造メーカーと中古車販売という車関連の企業が槍玉に上がったが、米国発祥の会員制スーパーコストコでも12日、不当な減額や返品で公取委が勧告している。
15日には下請け企業と協議せずに取引価格を据え置いたなどとしてダイハツ工業や京セラなど10社の社名が公表されている。
経営陣が家来に滅茶苦茶な要求を突きつける殿様、権力者と重なる。
何しろ、中小企業に不利な約束手形の運用に至っては60年近く手つかずだった。
逃亡者カルロス・ゴーンが社員の首を切り、下請けいじめをしながら、私腹を肥やしていた日産には、先般、不買運動を提起したばかりである。
語り継ぐ戦争では、いじめが酷ければ、戦場だから部下に反撃され、後ろから撃たれるということだってあったのではないか。
シベリア抑留者が引き揚げ船内で、収容所で仲間を虐めていた男がいなくなったことを証言しているのを耳にしたことがあるが、どうなったか想像してもらいたい。
価格転嫁などで中小を苦しめる大手のやり方は経営陣の人間性によるものがまず一番先に考えられることだ。
元受け、下請けの構図を変革することはできない相談に等しいが、取引上の優位な立場を利用して下請けに不利益を与える恐れのある企業を調査する「優越Gメン」を増員するだけでなく、中小企業を守り、支援する政策も考えていく必要がある。
権力者が部下など弱い立場の相手が抵抗できないことを由として、性的暴行をしたら、改正刑法では不同意性交罪で逮捕できることになった。
被害者の声が刑法改正に反映したのである。
目に余るような下請けいじめは「強要罪」などで刑罰を与えるようなことも考えていく必要があるのではないか。